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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1044話:VS.【黒騎士】ゼクス=エンシェント“異聞”⑤ / 幻想を打ち砕いて


「ぐおっ……テ、テメェ……!!」

「これで……どうだ……!!」



 ――――わざと斬られる事で『勝利した』と錯覚させ、その油断を突くという奇策で、俺はゼクス兄さんを手刀で貫いた。

 腹部を魔力で作られた光刃で貫かれ、ゼクス兄さんは苦悶に満ちた声を漏らした。次元鞘を避ける為に急所を狙えず、決定打を与えたとは言えないが大ダメージを負わせた事には間違いない。



「ぐっ……この……俺様を舐めんじゃねぇぞ、ラムダちゃん!! この程度の傷なんてなぁ、日常茶飯時なんだよ……どおってことねぇ!!」


「――――ッ! 怯んでない……!?」


「テメェみてぇなひよっこに負けてちゃよぉ……王立騎士として、兄貴として名折れなんだよォ!! だから……俺様はまだ負けちゃいねぇんだよッ!!」



 しかし、ゼクス=エンシェントという男は刺された程度では怖じ気付かなかった。腹部から血を滲ませながらもゼクス兄さんはこれまで以上の殺気を放ち、俺に喰らいつこうとしていた。



「テメェにゃ負けねぇ……勝つのは俺だァ!!」

「ぐっ……この!」



 両手に握っていた片手剣を両方とも俺の肩に突き刺し、ゼクス兄さんは腰部に展開した魔法陣からさらにつるぎを取り出していく。



「斬られても死なねぇからなんだ! だったら串刺しにして、ありったけの弱体化を射ち込んでやらァ!! オラ、オラ、オラオラオラオラァッ!!」



 次々と剣を取り出しては俺の身体に突き刺してくる。その度に弱体化の術式スキルが射ち込まれていく。

 すでにオーバードライヴ状態でも、通常時の半分ほどしか出力が出せない程に弱体化を射ち込まれている。ここでゼクス兄さんを逃がせば勝機は無いかも知れない。



「ここで俺様がテメェに負ければ、俺は……ゼクス=エンシェントは本当の意味で負け犬になっちまう! そんなの許せねぇ、それを認めれるほど俺のプライドは安くはねぇんだよ!!」


「…………ッ! …………ッ!!」


「たとえ幻想でも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! だからよぉ……せめて俺が勝たなきゃ、こっちで死んだ本当の俺が哀れだろ!!」


「ゼクス……兄さん……」


「俺にだって可能性はあった……()()()()()()()()()()!! そうじゃなきゃ惨めだろ……俺だって“幻想ユメ”ぐれぇ観てぇんだよ!!」



 その猛攻はゼクス=エンシェントという人物の“魂の叫び”だった。兜から覗く瞳は涙ぐんで、ゼクス兄さんはただがむしゃらに刃を突き立てる。

 全ては俺に打ち勝って、本当のゼクス兄さんが果たせなかった勝利を掴もうとしていた。ゼクス=エンシェントという人間にも成功する“未来”は在ったのだと証明する為に。



「俺は……あなたに勝ちを譲る気は無い。我が王をこの宇宙ソラの果て……虚空の果てへと導く為に……もう誰にも負ける訳にはいかない……!」


「ラムダ……テメェ……!!」


「あなたの矜持、あなたの信念、あなたの未来……全て斬り伏せて、何もかも踏み躙ってでも俺は先に進む! だからゼクス兄さん……俺はあなたを超えて征きます!!」



 それでも、一度でも“ノアの騎士”として、その信念に殉じると決めた以上、ゼクス兄さんに同情する事も勝ちを譲る気も俺には無かった。

 弱体化する身体を無理やり動かし、両肩を力強く掴み、俺はゼクス兄さんに喰らいついた。両眼からビームを放ち、ゼクス兄さんの胸を撃ち抜いて抵抗していく。



「テメェはよぉ……本当にしつけぇな、ラムダ!! いい加減、テメェのタフさにはうんざりだわ……そろそろ死ねや!」


(ああ、この光景……前にも見たな……)


「世界を背負うなんざ……テメェにゃ早すぎんだよ。ここでくたばってろ、そんでもう楽になれや……俺様がテメェの重荷を取っ払ってやんよ!!」



 俺の背後で何かがギラリと光った。ゼクス兄さんが操る“駆動斬撃刃セイバービット”だ。その光景を俺は前にも観た。

 かつてゼクス兄さんと戦った際、ゼクス兄さんは慣れないビットで俺を背後から強襲しようとして、俺が躱した事で自分を刺すという自滅の道を辿ってしまった……これはその再現だ。



「死ねや……ラムダ……!!」



 ゼクス兄さんの命令と共に、背後からビットが猛スピードで突っ込んでくる。直撃すれば俺はダメージを負い、躱せばゼクス兄さんは再び自滅する。


 簡単だ、量子化して躱せば良い。


 ゼクス兄さんが躱される事を前提に対策を打っているなら、その対策にカウンターを打てば良い。けど、それでは以前の再演だ。そんな決着では俺は何も変わっていないと認めるようなものだ。



 だから、俺は“選択”せねばならない――――


「あなたは……俺の手で!!」

「――――ッ!? ビットを素手で……!?」


 ――――兄を自らの手で殺す事を。



 背後から飛んできた“駆動斬撃刃セイバービット”を左手で受け止めて、俺はゼクス兄さんの運命を決する事を決めた。

 俺は死なない、ゼクス兄さんを自滅もさせない。ただ“ノアの騎士”として、我が王の為に実の兄すら斬る覚悟を俺は示さねばならない。



「俺はもう……あの時の甘ちゃんじゃないんだ!」

「ラムダ……テメェ、まさか……!!」



 あの時の決闘で俺はノアに『甘さを捨てないで』と懇願されて思い留まった。しかし、今のノアは俺を止めない。ただ黙って俺の“選択”を見届けようとしていた。

 だから俺は迷うことなく、目の前の兄への憐憫れんびんを捨てて、掴んだ刃を振り上げた。ノア=ラストアークを最果てへと連れて征く“ノアの騎士”の矜持を貫く為に。



 そして、刃は振り下ろされて――――


「ゼクス兄さん……これが今の俺です!!」

「ラムダ、それがテメェの……ゔおッ!!?」


 ――――ゼクス兄さんの心臓に突き立てられたのだった。

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