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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1040話:VS.【■■■】■■■=■■■■■■“異聞”① / 〜The Avenging KnightⅡ〜


《第三十階層に到着しました。お降りの際は足下にお気を付け下さい。繰り返します、第三十階層に到着しました》



 ――――“無限螺旋迷宮”ユグドラシル・シャフト第三十階層。勇者クラヴィスを倒した俺たちはエレベーターで次のガーディアンが待つ上層階に辿り着いた。

 エレベーターのドアが開き、俺たちは迷うことなく逆光の射す戦場へと歩いていく。そして、此処でもまた見覚えのある風景が俺たちを出迎えた。



「此処は……“快楽園メル・モル”に在った……!」

「死神メメントの闘技場ですね……」



 再現された其処はグランティアーゼ王国の一都市“享楽の都”アモーレムに隠された【死の商人】メメントの隠れ家、鏡面世界“快楽園”メル・モルの一画に築かれた闘技場だった。



「俺は此処で……」



 その場所は俺と“彼”と戦った場所だ。【死の商人】を追う“彼”は王立ダモクレス騎士団と結託、自分自身は【死の商人】の配下になる事で討ち取る隙を窺っていた。

 しかし、第二王女レティシアの捕縛、そして【死の商人】が追い求める“アーティファクトの少女”ノアが現れた事で“彼”の計画に狂いが生じた。



「…………」



 “彼”は第二王女レティシアを救出する為に一計を案じ、登場ノアと行動を共にして偶然“快楽園”メル・モルに潜入した俺と戦うことになった。

 “彼”は【死の商人】との取り引きで得た【死の商人】を討つ為の術式スキルを俺に託し、そして戦いの果てに命を落とし英雄になった。



「…………」



 今でも心残りがある出来事だ。再現された闘技場を見て俺は当時の事を思い出していた。

 そんな中、闘技場のあちこちに黒い蝶が飛んでいるのが見えた。無数の黒い蝶は俺やノアの周囲を飛びながら闘技場の中央に集まっていく。



《あ〜……相変わらずシケた表情つらしてんなぁ、ラムダちゃんよぉ? 戦場のド真ん中で感傷に浸ってんじゃねぇぞ……死にてぇのか、馬鹿が!》



 黒い蝶たちが一箇所に群がり、黒い靄の集合体になった瞬間、聞き覚えのある男の声が、“彼”の事が闘技場に響き渡った。

 同時に、身を刻むような鋭い殺気が闘技場に走り、蛇に睨まれたような悪寒が俺を襲った。間違いなく、目の前の黒い靄から殺気は放たれている。



 そして、俺が魔剣を構えようとした瞬間だった――――


「ああ、うざってぇ……なら今すぐ死ねや!!」

「――――ッ!? いつの間に……くそッ!」


 ――――黒い靄から飛び出した黒騎士が斬り掛かってきていた。



 全身を騎士甲冑で覆い、頭部もヘルメットで隠した“黒騎士”は何の躊躇も容赦もなく俺の目の前にワープして、手にした黒い剣を振り下ろしていた。

 咄嗟に黒い剣による強襲を魔剣で防いだ。斬撃には本気の殺意が込められている。もし防御が遅れていれば俺は斬られていただろう。



「相変わらずですね……このォォ!!」

「ひゃっは……いいねぇ、やる気かオラァ!!」



 斬撃を防いだ俺はそのまま魔剣を思いっきり振り抜いて“黒騎士”が振り下ろした黒い剣を弾いた。そのまま俺は身体を時計回りに捻りながら左脚を振り上げて“黒騎士”の脇腹目掛けて回し蹴りを放つ。

 だが、“黒騎士”は俺の攻撃が分かっていたのか、右手を柄から離して自由に動かせるようにし、迫りくる俺の左脚を上から押さえつけて蹴りを防いでみせた。



「母親譲りの癖の悪い体術……変わんねぇな!」



 押さえつけられた左脚は地面を擦った。“黒騎士”には届いていない。回し蹴りを防がれた拍子に俺は体勢を崩してしまっていた。

 “黒騎士”はその隙を見逃さずに黒い剣を手放し、同時に空中に展開した魔法陣から新しい剣を抜刀して再度斬り掛かってきていた。



「――――ッ! くっ……衝撃開放っ!!」

「おおっと……チィ! やるじゃねぇか……!」



 俺は反射的に全身から魔力を放出し、その衝撃波で“黒騎士”を吹き飛ばした。“黒騎士”は衝撃波を防御しつつ後方に跳躍して着地した。

 俺も後方に飛び退きながら体勢を立て直して“黒騎士”の追撃に備える。いきなりの急襲で事態を察したのか、ノアは自身にバリアを張って壁強まで避難し、そこから様子を窺っていた。



「俺様の急襲を凌ぐたぁ、ちっとはやるじゃねぇか」



 “黒騎士”は剣で肩をトントンと叩いて余裕そうな態度を取りながら俺を挑発している。この程度は『軽い挨拶』のつもりなのだろう。

 俺は戦闘態勢を維持しつつ、“黒騎士”との対話に臨むことにした。彼は俺のよく知る人物、我が父アハト=エンシェントの血を分けた兄弟だからだ。



「久し振りですね……ゼクス兄さん」


「ハッ……俺様はこのクッソ面倒くせえダンジョンが作った“異聞イフ”だ。()()()()()()()()()()()()()()()()!」


「…………」


「だからよぉ……その憐れんだ眼ぇ向けんじゃねぇよ。ぶっ殺しちまうぞ……ラムダちゃんよぉ! 俺様はテメェ如きに遅れを取ったダセェ俺様じゃねぇってこった!」


「態度の方が相変わらずか……」



 彼の名はゼクス=エンシェント、エンシェント家の次男にして俺の実の兄。【死の商人】を巡る戦いで戦死した英雄だ。

 ゼクス兄さんは自身が“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”が作った幻影である事を、そして本来の世界では俺に敗北して戦死した事を理解しているらしい。心底ウザそうな声をしているからだ。



「この階層のガーディアンは俺様だ。なら分かんよなぁ、ラムダちゃん? 上に行きたきゃ、俺様を()()()()()()()()()()()()! もう一回、兄弟を殺せるなんてお得だなぁ……ひゃっははははッ!!」


「…………」


「まぁ……殺す機会に恵まれたのは俺様も同じだ。ラムダちゃんよぉ……テメェはいっぺん殺してやろうと思ってたんだ! 此処で死んで逝けや!!」



 ゼクス兄さんは殺意を隠そうともせず、実の弟に向かって殺気を剥き出しにしている。本来の世界、生前のゼクス兄さんと何ら変わらない。

 話し合いも無駄だろう。そんなものが通用しているなら、今でも本来のゼクス兄さんは生きていた筈だ。



「ゼクスさん……貴方はどんな条件の“異聞イフ”ですか? 少なくとも貴方は我が騎士……ラムダさんの事を認識できているようですが?」


「我が王……」


「チッ……いちいち俺様たちの決闘にくちを挟んでんじゃねぇぞ、人形ォ! 邪魔すんならテメェから先に解体しちまうぞオラァ!!」


「我が王に手は出すな、兄さん!」


「あ? 我が王……? ハッ、ハハハッ……ヒャーッハッハッハ!! こいつは傑作だぜ、その薄気味悪い人形が“王”だと? 冗談上手くなったなぁ、ラムダちゃんよぉ!」


「…………」


「俺らエンシェントの騎士が忠誠を誓うのはグランティアーゼ王国! グランティアーゼ王室にだろうが!! そんな価値も無ぇ人形に忠誠を誓うたぁどう言う了見だ……ラムダちゃんよォォ!!」



 そして、俺がノアに忠誠を誓っている事がゼクス兄さんは気の入らないらしい。ゼクス兄さんは荒々しくも鋭い殺気を放って俺を威圧してきていた。

 ゼクス=エンシェントは態度こそ悪いが、それでもエンシェントの騎士の騎士である。俺が一族が本来忠誠を誓う筈のグランティアーゼ王国ではなく、ノアという一個人に仕えているのが許せないのだろう。



「俺はもうエンシェントの騎士じゃない……ノア=ラストアーク様に忠誠を誓う“ノアの騎士”だ! 我が王を侮辱すると言うのなら……あなたを斬ります、ゼクス=エンシェント!」


「我が騎士……」


「ハッ……おもしれぇ! なら証明してみせな……グランティアーゼ王国よりも、その人形の方が価値があるってなァ!! 仕えるあるじの価値を示すのが“騎士”ってもんだろうよ! オラ、来いよ……ラ〜ムゥ〜ダちゃ〜〜ん!!」



 ゼクス兄さんが剣を構える。今度は『軽い挨拶』ではすまない。“ノアの騎士”としての矜持を賭けた本気の殺し合いになるだろう。

 結局、俺たちは殺し合う運命なのかと思いながら、俺は魔剣を構える。もう一度、我が兄を殺すという“罪”を犯す事を覚悟しながら。



 そして、俺とたちは同時に斬り掛かり――――


「来いよ、遊んでやんよ……子犬ちゃん!!」

「我が道を阻むなら容赦しないぞ……兄さん!」


 ――――宿命の兄弟対決は再び始まったのだった。

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