第1037話:VS.【古の勇者】クラヴィス=ユーステフィア“遺物”② / −Shadow of Calibur−
「さぁ、我が聖剣の影……捌き切ってみせよ!」
――――勇者クラヴィスの周囲に“破邪撃滅の聖剣”シャルルマーニュ、その“影”が浮遊する。いずれの影も本物の聖剣と同等の威圧感を放っている。
クラヴィス=ユーステフィアの固有術式【聖剣投影】――――手にした剣の“影”を投影・実体化させて操る術式。投影された“影”は投影元の剣とまったく同じ性能を再現できる。つまり、元になる剣が高性能であればある程に、彼女の術式はその効果を強める。
「聖剣の“影”よ……舞え!」
「来い……“可変銃”!!」
勇者クラヴィスが手にした聖剣の切っ先を俺に向けた瞬間、聖剣の“影”が一斉に俺に向かって翔んできた。数は六本、それぞれが独立した不規則な軌道を描いて迫りくる。
俺は魔剣を左手で片手持ちし、右手に“可変銃”を装備して、高速で迫りくる聖剣の“影”を迎え撃つ準備をする。
「では……圧倒していくぞ!」
「やれるものなら……やってみな!」
聖剣の“影”は俺を取り囲んでぐるぐると回転している。迂闊に動けば即座に刺しに来る、逃げる隙間は無い。
加えて、数メートル離れた位置では勇者クラヴィスが待機している。俺は聖剣の“影”を捌きつつ、勇者クラヴィスからの攻撃にも対処しなければならない。
「まずは小手調べ……正面から一撃!」
「――――ッ!! ――――ッ!?」
勇者クラヴィスが手にした聖剣を僅かに傾けた瞬間、俺を取り囲んでいた聖剣の“影”の一本が俺の胸元目掛けて一直線に翔んできた。
その聖剣の“影”による攻撃を俺はとっさに右手の可変銃を振って銃身で弾いて防いだ。弾かれた聖剣の“影”は何事も無かったかのように、他の五本に混じって再び俺を包囲する。
「次は二本……行け!!」
次は左右から挟み込むように、二本の聖剣の“影”が攻撃を仕掛けてきた。次は大きく刀身を薙いでの斬撃攻撃、片方は俺の胸元を、もう片方は俺の下腹部を狙っている。
「――――ハッ!!」
俺は身体を回転させながらその場で小さく飛び跳ねて身体を地面に対して水平になるように倒し、聖剣の“影”の隙間を縫うようにすり抜けて回避した。
「そのまま……ショット!!」
回避して地面に脚を着くと同時に、俺は右手に握った可変銃の引き金を引いて銃弾を放ち、攻撃を仕掛けてきた聖剣の“影”を一つ破壊した。
投影された聖剣の“影”はオリジナルと同等の性能を持つが、唯一の弱点として耐久性が劣ってしまう。最初から使い捨ての運用が基本になっているのだろう。
「やるね……ではこれでどうだ!」
勇者クラヴィスが合図すると同時に、聖剣の“影”が一斉に俺に向かって攻撃を仕掛け始めた。刺そうと飛んでくるもの、切り刻もうと空を切り裂くもの、刀身から黒い影のようなビームを撃ってくるもの、攻撃方法は様々だ。
「――――ウォォッ!!」
俺はまずその場で回転しつつ飛び跳ね、手にした魔剣を振り回して俺を斬ろうとした聖剣の“影”を一気に弾き飛ばした。
そして、そのまま銃撃を行なって光線を放つ聖剣の“影”を撃ち抜いて迎撃した。一斉攻撃を捌かれた事に感心したのか、勇者クラヴィスは笑みを浮かべている。
「見事、流石だ……しかし、油断は禁物!!」
「これは……くっ!? 目眩ましか……!」
勇者クラヴィスは聖剣を構えた。次の瞬間、彼女の背後に術式による光球が現れ、目も眩むような強烈な光を発して俺の視界を塗り潰してきた。
とっさに右腕でガードしたが、閃光弾を喰らったように視界が麻痺してしまっていた。そして、今の閃光で勇者クラヴィスは次の攻撃をすでに仕込んでいた。
「空を切り裂く音……新たに投影した“影”!」
勇者クラヴィスは今の閃光と同時に新しい聖剣の“影”を投影していた。そう、彼女の固有術式【聖剣投影】は何度でも剣の“影”を投影できる。
ある制約は使役する術者の力量で最大使役数が変わる程度のもの。勇者クラヴィスは閃光で目眩ましをすると同時に俺の背後に聖剣の“影”を新たに投影していた。
「この程度……視えずとも対処できる!!」
視覚を封じられても、聴覚や魔力感知で聖剣の“影”は認識できる。俺は慌てることなく回し蹴りを繰り出して奇襲を仕掛けてきた聖剣の“影”を蹴り飛ばした。
「眼が慣れてきた……なっ!?」
「では……一気に攻めようか!!」
攻撃を防ぎ、視界も明瞭になってきたが、そんな俺を待ち構えていたのは複数の聖剣の“影”、そして勇者クラヴィスの突撃による一斉攻撃だった。
すでに勇者クラヴィスは俺のすぐ近くまで迫っており、彼女が使役する聖剣の“影”も一斉に突撃を開始していた。
「はぁぁっ!!」
「くっ……おぉっ!!」
勇者クラヴィスが振り下ろした聖剣を魔剣で受け止めてガードする。同時に素早く銃撃を二発放ち、右側から迫りくる聖剣の“影”を撃ち壊した。
「ではこれならァ!!」
「――――ハァ!!」
斬撃を防がれた勇者クラヴィスは即座に一歩退きながら身体を回転させ、聖剣を水平に振り抜いて斬撃を放ってきた。
その横薙ぎを俺は可変銃の銃身で防ぎつつ、今度は魔剣を振って衝撃波を飛ばして左側の“影”を斬り払った。
「そのまま……貰ったァ!」
「くっ……可変銃が……!」
しかし、勇者クラヴィスは俺が魔剣に意識を集中した一瞬の隙を突いて、聖剣を力強く押し込んで俺の右手から可変銃を弾き飛ばした。
弾かれた可変銃は大きく弧を描いて跳んでいき、決闘を遠くで観測していたノアの側に転がっていた。すぐには拾いに行けない位置だ。
「これで手数は減ったね! さぁ、覚悟!!」
武器を失った事を視認した勇者クラヴィスは俺が次のアーティファクトを取り出す前に攻撃を仕掛けてきた。
一つだけ残していた聖剣の“影”を突撃させると同時に、勇者クラヴィス自身も斬り掛かってきていた。聖剣の“影”は俺の腹部を狙って、勇者クラヴィス自身は俺の胸元を狙っている。
「この……ハァ!!」
俺は魔剣を振って、先に跳んできていた聖剣の“影”を弾いた。防がれた聖剣の“影”が勢いを失って俺の目の前でくるくると回転して跳ねる。
同時に勇者クラヴィスが聖剣を振り抜いてきていた。魔剣を防御に用いた今、彼女の振る聖剣を防ぐ手段は無い……そう勇者クラヴィスは考えているだろう。
「借りるぞ……あなたの聖剣……その影を!!」
「なっ……私の投影した影を掴んで奪った!?」
俺はとっさに弾かれて宙を舞っていた聖剣の“影”の柄を掴み取った。そう、別に聖剣の“影”は彼女だけの専売特許じゃない、力量さえあれば奪い取る事も可能だ。
これは勇者クラヴィス自身も知らない、彼女から【聖剣投影】を継承した俺が独自に研究して割り出した弱点だ。
「――――ふんッ!!」
「ぐっ……防がれた!?」
掴み取った聖剣の“影”を振り下ろし、俺は勇者クラヴィスが振ってきた聖剣を防いだ。彼女は自身の術式が利用される事は想定していなかったのか、驚愕の表情をしていた。
そして、彼女が晒した一瞬の隙を見逃さず、俺は魔剣を斬り上げて攻撃を繰り出した。斬撃に気が付いた勇者クラヴィスは即座に後方に距離をとろうとしたが間に合わないだろう。
そして、魔剣で甲冑を切り裂いて――――
「これで……どうだァァ!!」
「ぐっ……がはッ!? しまっ……!?」
――――勇者クラヴィスに一太刀喰らわせたのだった。




