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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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幕間:トネリコ=アルカンシェル


 ――――思えば、ボクは何故ノア=ラストアークを嫌っているのだろうか。共に試験管で培養された人造人間ホムンクルスだというのに。


 ボクは彼女が嫌いだ。

 けど、その理由を考えた事が無い。


 ノアの方が優秀だから……それは違う。ボクとノアは“役割”が違う、専門分野ではボクにも秀でている部分がある。では何故だろうか。



『またノアの所に行くのかい? 相変わらずだね、君……あんな無愛想な奴のどこが良いのさ? そんな事よりもボクに協力してよ……教え子たちに体育を教えたいのだけど、ボクはそっちは専門外でね』


『悪いけどトネリコ、俺はノアの所に行くよ』


『ああ、そうかい……君も頭が硬い男だね。もういい、勝手にしなよ……体育はボクがプログラミングしたドロイドにやって貰うから。なんだい、その態度は? せっかくの誘いを袖にしたのは君だぞ』



 在りし日、まだ時代が西暦だった時代、ノアの側には一人の男が居た。後に“原初の人間”と呼ばれる次代の“原型アーキタイプ”になった人物、感情の無い人形であるノアに執着する騎士ナイト気取りの愚か者。


 彼は何に於いてもノアを優先していた。

 まだ感情を抱いていないノアをだ。


 それがボクには理解できなかった。なんで愛想も何も無い、ボクたちの同型だったアリアを廃棄処分にした女に懐いて……いや、忠誠を誓っているのか理解できなかった。



「今にして思えば……どうという事じゃないけど」



 今、ノア=ラストアークに忠誠を誓うラムダ=エンシェントを見て確信した。あの時、あの男がノアに忠誠を誓っていた理由を。


 ボクは“順序”を勘違いしていた。


 あの時点で、ノアの元にあの男が顕れた時点で、もう何もかもの運命が決定付けられていたのだろう。ボクはまんまと彼等の掌で踊らされていた訳だ。



『トネリコ……すまない、俺は……』

『なんだい、その憐れんだ眼は……不愉快だよ』



 あの男がボクに向けていた憐れんだ眼はきっと、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ああ……気に食わない。

 最初から彼は全て知っていた。


 ボクが教え子たちを喪うのも、この時代に目覚める事も、アーカーシャに拾われる事も、タウロスと奇妙な関係になる事も、そしてタウロスを失って孤独に戻る事も。



「知っていて黙っていたのか……あの魔王め!」



 あの男が護ったのはたった一人、ノア=ラストアークだけだ。ノアを“方舟アーク”に乗せて何処かに隠してアーカーシャが起こした大洪水から護り、それ以外の全てを滅ぼした。


 あの男は間違いなく魔王に相応しい。

 この世界に顕れた十一番目の“終末”。


 あの男はボクに手を差し伸べなかった。それがボクは許せない。たとえ、今はまだ全ての真実が明らかになっていなくても、ボクはあの男を……そして共犯者であるノアを許さないだろう。



「ユグドラシル・シャフト……防衛システム『セフィロト』起動。内部エレベーターを制限しろ。じきにラムダ=エンシェントが乗り込んでくる」


《了解しました。管理者トネリコ……》


「それから各階層の迎撃システム『クリフォト』を起動させろ。この起動エレベーターで奴等を迎え撃つ。それと……ボク用に調整した“鋼鉄巨兵ギガントマキアー”の起動にもかかれ」



 タウロスが残してくれた飛竜ワイバーンでデア・ウテルス大聖堂から脱出し、起動エレベーター『ユグドラシル・シャフト』に戻ったボクは来たる決戦に向けて準備を進めていく。

 起動エレベーターの最上階に位置する区画、ユグドラシル・シャフトそのものを遠心力で支える巨大宇宙ステーション『ヴァルハラ』に在る制御室が稼働を始めていく。



「ノア=ラストアーク、そしてラムダ=エンシェント……さぁ、いつでもやって来るが良い。決着を付けよう……タウロスの仇はボクが討つ!」



 ボクの為に戦い、ラムダ=エンシェントに敗れて命を落とした我が騎士タウロスⅠⅤ(フォー)の無念を晴らすべくボクは戦う。

 ラストアーク騎士団が宇宙に戦艦ラストアークを打ち上げるには、この起動エレベーターを使わねばならない。必ず彼等はやって来る、だから此処は決戦の場になる。



「見ていて……タウロス。君の意志はボクが継ぐ……ラストアーク騎士団を倒して、君が護ろうとした景色をボクが護るんだ!」



 ボク以外誰も居ない制御室に自分の声だけが響き、部屋を覆う無機質なコンピューターたちが無味乾燥な機械音を鳴らす。

 ボクは孤独だ、かつての教え子たちも、ボクを愛してくれた不器用な騎士ももう居ない。もう、何もかもがどうでも良くなっていた。



「それでも……ボクは……」



 もうこのぬるま湯のような地獄はうんざりだ。もう大切なものを喪うのは嫌だ。だからボクは戦う……たとえ、その先に“希望”なんて無くても。



「ああ、ボクはきっと……ノアの事が……」



 もうすぐボクの命は終わりを迎える。それが短命に設計されたボクたち“人形マキナ”の宿命だ。


 だから……終わりを迎える前に決着を。

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