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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十七章:神が生まれ落ちる日

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第1019話:ルチアの告白


「さっ、ラムダ卿……着いたわよ」

「ここって……大法廷じゃないか……!?」



 ――――ルチアに案内されて連れてこられた場所はデア・ウテルス大聖堂内に在る大法廷だった。女神アーカーシャが仕掛けた裁判を切り抜けた場所。

  リヒター=ヘキサグラムが命を落とした場所でもある。そんな因縁の場所に俺を連れてきて、ルチアは躊躇うことなく法廷に続く扉を押して開いた。



「さぁラムダ卿……みんなが待ってるわよ」



 大法廷はいまだにラストアーク騎士団とアーカーシャ教団による戦闘の傷跡が残っていた。証言台も何もかもめちゃくちゃで、法廷を見下ろすように建っていたアーカーシャ像も姿が消えている。

 当然、今はアーカーシャ教団の信徒たちも聖堂騎士団の姿も見えない。代わりに大法廷には俺が見知った人たちの姿があった。



「姉さん、レティシア……どうして此処に?」

「ラムダ……実は私たち、ヘキサグラム卿に呼ばれて」


「ルチアが……みんなを……!?」


「王立騎士団に関係あるメンバーばかりじゃのう」

「ヘ、ヘキサグラム卿……せ、説明求むです」



 傍聴席にはツヴァイ姉さん、トリニティ卿、サンクチュアリ卿、セブンスコード卿、メインクーン卿、デスサイズ卿、そしてレティシアの姿があった。

 共通するのは皆、グランティアーゼ王国に関わる者。特に王立ダモクレス騎士団の元団長クラスが中心だった。どうやらルチアに呼ばれて大法廷に来たらしい。



「ようやく来ましたね……待っていましたよ、ルチア=ヘキサグラムさん。さぁ、どうぞ証言台ヘ……いつでも裁判を始められます」


「リブラ……裁判っていったい……!?」


「そのままの意味ですよ、ラム……イレヴンさん。さぁ、あなたは傍聴席ヘどうぞ……今回の主役はルチアさんです」



 裁判長が座る席にはリブラⅠⅩ(ナイン)がおり、俺に傍聴席に座るように促してきた。どうやら彼女もルチアに呼ばれたらしい……そのルチア本人の裁判を執り行なう為に。

 リブラⅠⅩ(ナイン)に促されたルチアは振り向くこともなく証言台に歩いていき、俺は状況もよく読み込めていないままに傍聴席に座ることになってしまった。



「お集まりの皆さん、多忙な中でお集まり頂き感謝します。今日はルチア=ヘキサグラムさんがどうしても皆さんに打ち明けたい懺悔が……裁いて欲しい“罪”があるからと告白されて、この場を設けさせて頂きました」


「ルチアが……自分から望んで……!?」


「ルチアさんの“罪”はこの私、リーズリットが“神”に代わり……いいえ、“天秤”の担い手リブラⅠⅩ(ナイン)として裁かせて頂きます。公正かつ厳粛な審判を下すことをお約束します。ではルチアさん、罪の告白を……」



 どうやら、ルチアは王立騎士団の仲間たちを前に、どうしても打ち明けて、そして裁いて欲しい“罪”があるらしい。

 リブラⅠⅩ(ナイン)はこの裁判を取り仕切る判事のようだ。仮面を外した“天秤”の担い手は俺たちに公正な裁判を約束し、ルチアに告白するように促した。



「あたしは……許されない“罪”を犯し、それを今日までずっと秘密にしていました。今日、ここで真実を語るのは……自分のしたことに()()()を着ける為。ちゃんと過去に向き合って、明日に向かって歩けるようにする為に……」


「ルチア……」


「あたしは四年前、殺人を犯しました。王立騎士としてでもなく、冒険者としてでもない……私怨での殺人です。あたしは四年前、グランティアーゼ王国の元老議員だったライル=マリーチア子爵、そして彼が雇っていた使用人たちを殺害しました。今ここに……罪を告白します」



 そして、リブラⅠⅩ(ナイン)に促されたルチアはおのれが抱えていた“罪”を告白した。それは四年前、彼女がグランティアーゼ王国で犯した殺人についてだ。

 ルチアが殺した相手の名をくちにした瞬間、傍聴席にいたトリニティ卿以外の全員が同様した、もちろん俺もだ。何故なら、ルチアが語ったのは有名な未解決事件だったからだ。



「ライル=マリーチア子爵の殺人……まさか、あの未解決事件の犯人はヘキサグラム卿だったのか!? 現役元老議員の暗殺……当時、大騒ぎになった事件だ」


「俺も知ってる……会ったことある人だ!」



 その事件は王立騎士団では有名だった。元老議員ライル=マリーチア子爵暗殺事件、当時元老議員だったマリーチア子爵が自身の屋敷にて惨殺、屋敷にいた使用人も全員が殺された事件だ。

 俺も王立騎士団に属してから捜査資料を読んだ。寝室で寝ていたマリーチア子爵を鋭利な刃物で何度も刺して殺害した事から、犯人はマリーチア子爵に縁のある人物だと思われていた。



「マリーチア子爵……彼は【死の商人】から奴隷としてあたしを買った人でした。そして、来る日も来る日も寝室に監禁されて暴行を受けていたあたしは……マリーチア子爵を刃物で刺して殺しました」


「奴隷として……」


「そして、あたしは奴隷だった事、マリーチア子爵に凌辱された事実を闇に葬る為に……あたしが奴隷だって知っている使用人も殺しました。それが真実です……本当は知ってたでしょ、トリニティ卿?」


「本当ですか……トリニティ卿?」


「…………はい、レティシア女王陛下。ヘキサグラム卿の証言は事実です。【死の商人】メメントがラムダ卿に討ち取られた後、彼女のオフィスから押収した奴隷の売買記録から……マリーチア子爵がヘキサグラム卿を買った事実を発見しました」


「トリニティ卿……なぜ黙っておった?」


「も、申し訳ございません……サンクチュアリ卿。この事実を公表すれば……ヘキサグラム卿の立場に関わると思って。それに、事実を知ってすぐに『アーティファクト戦争』が始まったので……」



 どうやらマリーチア子爵こそがルチアを奴隷として買った人物だったらしい。トリニティ卿が【死の商人】から押収した販売記録にもその事実は記載されていたらしい。

 トリニティ卿だけはその事実を掴んでいたらしいが、ルチアの立場を守ろうとして事実を隠蔽したらしい。トリニティ卿は事実を隠していたことを認め、申し訳なさそうに頭を下げて謝っていた。



「トリニティ卿は悪くない……悪いのは事実の露見を恐れて“罪”を重ねたあたしだけ。トリニティ卿……今まで黙ってくれていてありがとう。でも……もう大丈夫、あたしは“罪”に向き合う覚悟、したから……」


「ヘキサグラム卿……」


「リブラ……お願い、あたしを裁いて。あたしはちゃんと償いたい……もうこれ以上、パパやママに……ラムダ卿に隠し事はしたくないの……」



 そんなトリニティ卿を庇って、ルチアは悪いのは全て自分だけだと言い切った。きっと彼女は両親の真実を知って、自分自身の『闇』と決着を着ける覚悟を決めたのだろう。

 そして、ルチアの告白を静かに聞き届け、リブラⅠⅩ(ナイン)はルチアに視線を向けたのだった。これから彼女に相応しい“罰”を与える為に。

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