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第100話:それを人は『愛』と言う


「ぐっ……左腕アインシュタイナーの怪力でも押せない……!? ジブリ……ガブリエル……なんて手強いんだ……!?」

「こ……こんのぉ〜〜〜〜ッ!! 機械天使ティタノマキナである弊機わたしが……負けるかぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!」

「向こうの方が必死だった!?」

「お願い〜〜ちょっと手加減して〜〜♡ 弊機わたしが“趣味”で撮り溜めたノア様の恥ずかしい盗撮動画あげるから〜〜」

「要らん……いや、要る!! でも、真面目に戦え〜〜〜〜ッ!!」

「ノリ良いのね、あなた……」



 俺が振った流星剣メテオザンバーを“祈りの杖(アヴェ・マリア)”で受け止めるジブリールこと【ガブリエル】――――お互いに持てる出力の全てを出した決死の攻防。


 打ち負けた方がそのまま敗北する一騎討ち。


 俺もガブリエルも必死の形相ぎょうそうで腕に力を込め続ける。



「この……お前を倒さなきゃノアが死ぬんだ! 諦めろ〜〜〜〜ッ!!」

「安心して……あなたを倒した後にノア様は弊機わたしが丁重に保護してあげるから〜〜〜〜ッ!!」

「嫌だ〜〜ッ!! ノアは俺の女だ〜〜〜〜ッ!!」

「独占欲強すぎ〜〜ッ!! ちょっとは自重しなさい〜〜〜〜ッ!!」



 力と力のぶつかり合いは拮抗し、口と口との舌戦ぜっせんはさらに激しさを増していく。


 今までの【機械天使ティタノマキナ】とは違いペラペラと言葉を紡ぐガブリエル。参ったな……こいつめちゃめちゃ喋るじゃないか。



「この……この……このぉおお!! 弊機わたしはノア様のお気に入り……『盗撮してたから罰として改造します』と特別に『近接形態ガブリエル』と『砲撃形態ジブリール』の2形態を造ってもらった特別機なのにぃ〜〜〜〜ッ!!」

「盗撮バレてんじゃねぇか!?」

「そんな弊機わたしが負けるかぁ……【オーバードライヴ】!!」

「あっ……!! まずい……ええいままよ――――【オーバードライヴ】!!」



 そして戦いは全力全開の領域へ――――お互いに発動させるは【オーバードライヴ】、動力炉ドライヴを限界を超えて稼働させる禁断の戦闘技法。


 俺の身体から溢れる光量子フォトンの光、ガブリエルの身体から溢れるピンク色の光――――お互いの本気、譲れない信念の激突、ノアの巡る決闘。


 それが今、最高潮に達する。



「――――ガフッ! 道を開けろ……ガブリエル!!」

「なぜ……血反吐を吐いてまで、自らの命を削ってまでノア様を……!?」

「俺は……ノアが……好きだからだ!! そうこれは――――愛だッ!!」

「なっ……あ、愛?? り、理解不能……【機械天使ティタノマキナ】である弊機わたしに――――人間の『愛』は理解できない……!」

「好きだからこそ……死なせたくない……退け、ガブリエルッ!!」

「あぁ……あぁああ………対象の出力……さらに急上昇!? うそ、うそ、嘘だ嘘だ嘘だ……この弊機わたしが……【大天使アークエンジェル】である弊機わたしが押し切られる……!?」



 そう、俺はノアが『好き』だ。


 もちろん、オリビアも好きだけど……でも、初めて会った、棺の中で穏やかに眠る銀髪の少女に俺は一目で心を奪われた。


 運命を感じる程に。


 だから、誰にも渡さない、誰にも触らせない、誰にも侵させない――――俺の愛した少女は、絶対に死なせない。



「うぉおおおおおおお!!」

「あっ……き、きゃぁあああああああ!?」



 俺の気迫の気圧されて体勢が揺らいだガブリエル――――この機を逃せば、俺は【オーバードライヴ】で自滅する。


 意を決し、腕が壊れる程の覚悟で剣を押し込んで、ガブリエルを打ち飛ばす――――それが、死闘の決着。


 そして、情けない悲鳴をあげながら吹き飛んだガブリエルは【天ノ岩戸(トワイライト・ケージ)】にぶつかりそのまま門を大きく破壊しながらその先にある旗艦『アマテラス』の側まで飛ばされていった。


 ――――俺の勝ちだ。



「き、機能……維持……困難…………! お……のれ……ラムダ……エンシェント……!!」

「はぁ……はぁ……はぁ……!! まだ動けるのか……まったく、頑丈な……天使様だ……!!」



 旗艦が眠る暗い空間で仰向けに倒れる機械天使ティタノマキナ――――いつしか髪が水色主体に戻っており、どうやら元の【ジブリール】になっているようだ。


 壊れたらバイザーの隙間から見えるあおい瞳で俺を睨み付けるジブリール……だが、ところどころが損傷しているのか、彼女が再び立ち上がる気配は微塵にも無かった。


 それでも尚、ジブリールは俺へと牙を向ける。



「ノア様は……お前たちのような『人間』に使い潰される『道具』じゃ……無い! もっと崇高すうこうな……【機械から生まれた神デウス・エクス・マキナ】だ……!!」

「デウス・エクス・マキナ……」

「ノア様を傷付けるな……犯すな……壊すな……!! 誰よりも孤独な人形マキナを……これ以上、穢すな……!!」

「安心しろ……俺は、ノアを『人間』にする……!」

「えっ……?」

「幸せにする、笑顔にする、楽しませる――――だから、俺を認めて欲しい……ジブリール……!」

「あなたは……最初っから……ノア様を……!」



 ノアを傷付けるな――――それだけが、ジブリールの望み。俺と同じ、ただ彼女の事を案じるだけの……美しい精神こころのあり方。


 だから、俺は言った……ノアを幸せにすると。


 臆面おくめもなく、躊躇ためらいもなく、見栄もはらず…………堂々と、ノアへの『愛』を誓ってみせる。



「そう……そうなのね……あぁ、ノア様……! 遂に……“つがい”を見つけられたのですね……!」

「ジブリール……」

「ふふふっ……良いでしょう……旗艦『アマテラス』におもむきなさい……! 其処そこに、ノア様の造られた研究所があります……!」

「本当か、ジブリール!?」

「そして……世界を滅ぼす“終末アル・フィーネ”――――【光の化身】も……!」

「光の……化身……?」

「行って……その眼に刻みなさい――――あなたが愛した女の真実を……!!」



 俺のその言葉に喜びの涙を流し、そして旗艦『アマテラス』への道を開けるジブリール――――その笑顔はどこか嬉しそうで、寂しいそうで。



「お、お願い……弊機わたしを…………外に……連れて行って…………うぁ……機能……停……止…………」

「ジブリール……おやすみ……」



 そして最後に、外に連れて行って欲しいと残して――――ジブリールは機能を停止して動かなくなった。



「ラムダ! 無事だった、ラムダ!?」

「姉さん……大丈夫、ちょっと疲れただけだよ……」



 姉さんやオリビアたちが合流したのはそのすぐあとだった。


 姉さん、オリビア、コレット、ミリアリア、リリィ、レティシア……そして、アウラから借りた台車付きの棺に入れられたノア。



「いや……棺って酷くないですか? 私、まだ死んでませんけど?」

「いや……ここまでの距離、いくら軽いノアさんでも背負って運ぶの億劫おっくうですので……」

「オリビアさん、酷いよぉ……(泣)」

「まだ大丈夫みたいだな……みんな、『アマテラス』に急ごう!!」

《ゲートオープン、ゲートオープン――――地球連邦軍旗艦『アマテラス』への乗船を許可します》



 ともあれ、ようやく旗艦『アマテラス』への道は開けた――――後は中に入ってノアたちのゾンビ化の治療薬ワクチンを作るだけだ。


 墜落した巨大空中戦艦、自動音声システム・ボイスと共に開かれて行く搭乗口――――古代文明の有した旗艦への乗船。


 それは、ノアの出生を識る場所。



「ジブリール……私の指示を守って、ずっと此処アマテラスを守護していたのね……」

「ノア……あいつ、ずっとノアの事を心配していたよ……」

「そっか……あなたは、アーカーシャの支配を受けなかったのね……」



 旗艦へと乗り込む直前、どうしてもジブリールの顔が見たいとねだったノアを背負って、俺は動かなくなった機械天使ティタノマキナの前へと立つ。


 女神システムアーカーシャの反乱時に多くの【機械天使ティタノマキナ】たちは人間を裏切り、人類滅亡の片棒を担いだらしい。


 ジブリールはそんなアーカーシャの支配から辛くも逃れた一機だった。



「ジブリール……私ね、『騎士』に会えたの……私を命懸けで護ってくれる素敵な騎士様……。だからね……私は大丈夫……ありがとう、私のジブリール……」

「ノア……」

「あと、盗撮データは消しておくね♡ あんなのラムダさんに見られたら恥ずかしくて発狂するから……!」

「あぁ、消された……後で貰おうと思ってたのに……(小声)」

「――――――――チッ!」



 一瞬、何かが不満げな舌打ちが聴こえたような気がしたが……気のせいだろう。


 ジブリールの回収は後にして、俺とノアは再び旗艦を目指す。


 その先に眠るは古代文明の残した『罪』――――そこにあるのは人間たちの際限なき“欲望”の結果。



「――――自動修復オート・リペア、実行。全ユニットの完全回復まで……残り40時間」

なんやかんやで100話まで描けましたー!(幕間やら回想やら入れてるのでとっくに100部分は越えていますが……)


これも応援してくださっている皆さまのおかげです!

本当にありがとうございますm(__)m


これからもどんどん物語を描いていきますのでよろしくお願い致します。


良かった点や気になる点、改善点や誤字脱字、感想もお待ちしていますのでよろしくお願いします♪

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