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第943話:VS.【天雷の雄牛】タウロスⅣ② / 神の怒りを超えて


「さぁ、我が雷霆らいていの前に平伏せ!!」

「落雷を操って……ぐっ、おぉぉ……ッ!!」



 ――――タウロスⅠⅤ(フォー)が咆哮した瞬間、上空の雷雲で発生したいかずちが俺を目掛けて真っ直ぐに降り注いできた。そして、戦場が一瞬だけ閃光に染め上げられた瞬間には、俺は巨大ないかずちに飲み込まれていた。

 全身に激痛が走り、細胞代わりになっているナノマシンが電撃によって灼かれていく。落雷と共に大地は砕け、デア・ウテルス大聖堂に大地すら震わせる雷鳴が轟く。



「――――ぐあっ!?」



 いかずちに撃ち抜かれた俺はそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。身体から黒煙をあげながら何度も地面をバウンドし、聖都のメインストリート上に転がるように倒れてしまった。



(くっ……まだ生きてるか? 今の稲妻は自然現象で発生した稲妻よりも威力を増幅されている……ただ落雷を発生させただけじゃない。タウロスの言った通り、あのアーティファクト……天候を完全に制御下に置いているのか……?)



 灼き焦げた身体を蘇生させながら、俺はタウロスⅠⅤ(フォー)と頭上の雷雲を睨みつけて思考を回転させる。

 今しがた俺が食らったのは自然的に発生するかみなりとは比べ物にならない威力をしている。タウロスⅠⅤ(フォー)が装備したアーティファクトのちからによって電圧を何倍、何十倍にも跳ね上げているのだろう。



(それに加えて突破困難な電磁障壁タルタロスまで完備とは……トネリコめ、とんでもないアーティファクトを用意してきたな。どうする……相討ち覚悟でタウロスⅠⅤ(フォー)を叩くしかないか?)



 長引けば不利になるのは明白、狙うなら短期決戦でタウロスⅠⅤ(フォー)を倒すしかない。しかし、そのタウロスⅠⅤ(フォー)自身は電磁障壁タルタロスで守られている。突破にはかなりの火力が必要だ。



「どうだ、ラムダ=エンシェント……トネリコが造り上げたアーティファクトの威力は? これはお前を倒す為だけに造ったんだよ」


「なるほど……そりゃ光栄なこって……」


「もっともっといかずちをお見舞いしてやろう……お前の身体が黒焦げになるまでね! 天よ、雲よ、いかずちよ……我が敵を撃て! 天より降り注ぎし“神”の怒りを以って……悪しき魔王を討ち滅ぼせ!!」


「これは……また落雷を……!!」


「さぁ、耐えれるものなら耐えてみろ! 降り注げ、いかずちの雨よ――――“雨ノ雷(ママラガン)”!! ハハハッ、ハハハハハハハハハッ!!」



 タウロスⅠⅤ(フォー)は俺に考える暇すら与えてはくれないらしい。白き“牡牛”が大地を強く踏み締めて咆哮した瞬間、先ほど俺を貫いたいかずちが今度は連続で発生して降り注ぎ始めた。

 何度も空が稲光で明滅し、無数のいかずちが雷鳴を鳴り響かせながら大聖堂と聖都一帯へと降り注ぎ始める。



「冗談じゃない、あんなの何発も喰らえるか!」



 咄嗟に俺は翼から魔力エナジーを放出してその場から跳躍した。その直後、数発のいかずちが落下して、さっきまで俺が居た場所は消し飛んだ。

 そのまま落雷を躱しながら俺は聖都の頭上を飛び回る。落雷の規模を計る為だ。いかずちはある程度は標的である俺を狙って降り注いでいる。しかし、いくつかは聖都や大聖堂へと落下していた。



「きゃあ!? かみなりが……!?」


「マズイ……ツヴァイ、飛竜ワイバーンを地上に降ろせ、落雷の巻き添えを食らうぞ! こう言う時は避雷針で落雷を集める! 頼むぞルクスリア――――“血ノ刺撃(ブラッド・ニードル)・避雷針バージョン”!!」


「何をするのじゃ……って落雷が、のぎゃああああ!?」


「ぎゃーーっ!? グラトニス様ーーッ!?」

「すまんルクスリア……死んでもおれを恨むなよ」


「ちょっとディアスにぃ! グラトニス様を避雷針にする馬鹿がどこにいんのよ!? 落雷に直撃したグラトニス様が一瞬、骨スケスケになってたじゃない! ご、ご無事ですかグラトニス様!?」



 大聖堂へと侵入しようとしているラストアーク騎士団の仲間たちに落雷の危機が迫っていた。

 俺の目の前で(角にアケディアスの避雷針を増設されてしまった)グラトニスが落雷の直撃を受けて凄まじい悲鳴をあげて倒れてしまった。



「な……何をするんじゃアケディアスゥゥ! 儂を避雷針にするななのじゃ! 見ろ、儂のサラサラヘヤーがチリチリのアフロになってしもうたではないか、このたわけぇぇ!!」


「それで済むお前はすごいぞ、ルクスリア」


「ラムダァァ! お主もお主じゃ! その程度の落雷、喰らいきってみせい! 人類はかみなりなぞとうに克服しておる! “神”の怒りなんて戯言を真に受けるでないわ!」


「人類はかみなりを克服している……!」


「分かったらさっさと牛野郎を仕留めるのじゃ! あっ、また避雷針に落雷が落ちるのじゃ……ちょ、のじゃぁぁあああああああッ!!? アケディアス、避雷針をはよう外せ〜〜ッ!!」



 幸い、グラトニスはダメージを負っただけでピンピンしていた。そして、彼女は重大なヒントを俺に伝えていた。人類はすでにいかずちを克服しているのだと。



「キャレット、避雷針でみんなを守ってくれ!」

「オッケー! あーしに任せてよ隊長ちゃん!」


「魔剣ラグナロク……帯電開始! おい、タウロス! これは俺とお前の決闘だ、狙うなら俺だけを狙え!! それとも何か……まだそのアーティファクトを使いこなせてねぇだけか?」


「減らずぐち……威勢だけは一人前だね」


「さぁ、お前の敵は……トネリコの敵は此処だぞ! よぉく狙え、そして覚悟しろ……俺を仕留め損なった瞬間、仕留められるのはテメェだとな!!」



 グラトニスの助言を聞いて、俺はタウロスⅠⅤ(フォー)へと攻撃を届かせる策を思いついた。まずは雷属性の魔法を得手とするキャレットに仲間を守る避雷針を設置させ、同時に魔剣ラグナロクに雷属性の魔力をわざと帯電させる。

 キャレットが頭上に投げた槍が空中で静止して避雷針代わりになる。これで仲間への落雷は逸れるだろう。あとはタウロスⅠⅤ(フォー)を挑発して、意識を俺へと集中させるだけだ。



「お望み通り……真っ黒コゲにしてやろう! 標的捕捉、出力増大! 死ね、ラムダ=エンシェント――――“雨ノ雷(ママラガン)”!!」


「行くぞ、出力全開……突撃ッ!!」



 そして、挑発に乗ったタウロスⅠⅤ(フォー)は複数の落雷を発生させ、俺目掛けて落下させた。同時に、俺は魔剣を天高く掲げながらタウロスⅠⅤ(フォー)目掛けて突撃を開始し始めた。



「魔剣ラグナロク……“神”の怒りを喰らえ!!」

「――――なっ!? 落雷を魔剣で……!?」



 降り注いだいかずちを全て避雷針代わりにした魔剣で受け止めて。落雷を受けた瞬間、凄まじい電撃を受けた魔剣が竜の咆哮をあげる。

 いかずちを蓄えた刀身は真っ白に輝き、雷雲で暗くなっていた戦場を明るく照らし出す。



「まさか……僕のいかずちを利用して……!?」


「そうさ……人類はいかずちを克服した! テメェが操るのは“神”の怒りでもなんでもねぇ、ただの“自然現象”だ!! そして、テメェを倒すのは……テメェ自身が発生させたいかずちちからだ!!」


「自分の魔剣を避雷針にしてわざと……!!」



 そう、俺はタウロスⅠⅤ(フォー)の操るいかずち()()()()()()事を思い付いた。魔剣にわざといかずちを落とさせて、魔剣に稲妻の分の威力を上乗せしたのだ。



「くっ……僕を舐めるな! “天雷ノ矢(インドラ)”!!」

「たたっ斬れ、ラグナロク!! ハァァ!!」



 自分の起こしたいかずちが利用された事に気が付いたタウロスⅠⅤ(フォー)は“角”に帯電させた稲妻を俺目掛けて発射した。

 その稲妻を俺は電撃を帯びた魔剣で斬り払いつつ、さらに加速してタウロスⅠⅤ(フォー)ふところへと一気に距離を詰める。そして、電磁障壁タルタロスを展開したタウロスⅠⅤ(フォー)に向けて、俺は魔剣を勢いよく振り下ろた。



「こ、この……僕が負けるかぁぁ!!」

「ぐぎぎ……うぉぉおおおおお!!」



 電磁障壁タルタロスから発せられる電撃が俺の全身を灼いていく。だが、吹き飛ばされまいと翼から魔力エナジーを噴射して、俺はタウロスⅠⅤ(フォー)へと喰らいつく。



「なっ……電磁障壁タルタロスが……破られる!? 僕の落雷を喰らった分、出力が上がって……」


いかずちを自分のちからと過信したツケだ!!」



 電磁障壁タルタロスの発生させる電撃を魔剣が斬り裂いていく。刀身に帯びさせたいかずち電磁障壁タルタロスの電撃に干渉しているのだ。

 そのまま魔剣の刀身は少しずつ障壁を斬り裂いて、白き“牡牛”の頭部目掛けて振り下ろされていく。



 そして、俺が渾身のちからを込めた瞬間――――


「“神”を喰らい尽くせ――――“神討ノ巨人(ティフォン)”!!」

「ぐっ……おぉぉぉッ!!?」


 ――――障壁は破られ、魔剣の刃が牡牛の頭部を両断したのだった。

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