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第942話:VS.【天雷の牡牛】タウロスⅣ① / 〜Lightning Taurus〜


「アーティファクト『ゼウス』……我が“魂”を喰らえ。いかずちよ、我が敵を討て! 稲妻よ、我がつるぎとなれ! 神雷じんらいよ、我がしゅの為に轟け!!」



 ――――牡牛型アーティファクト『ゼウス』を纏ったタウロスⅠⅤ(フォー)いななきと共に放電を開始した。大気を震わせ、大地を砕くほどの稲妻がタウロスⅠⅤ(フォー)を守るように展開している。



「魔剣ラグナロク……神のいかずちを斬り裂け!!」



 常人が触れれば数秒と保たずに消し炭になるレベルの電撃だ。だが、“機神装甲レーカ・カーシャ”を纏い、肉体をナノマシンに換装した今の俺なら耐えられる。

 目の前に広がる放電に怯むことなく、俺は魔剣を振りかぶり、背部に展開した白き翼から光を放出しながらタウロスⅠⅤ(フォー)に向かって真っ直ぐ突進していく。



「馬鹿め……細胞ごと灼かれろ!!」

「ぐっ……舐めるなよォォ!!」



 タウロスⅠⅤ(フォー)が放つ放電に触れた瞬間、全身に燃えるような激痛が走った。装甲アーマーの下で皮膚が、筋肉が、骨が、臓器が、電撃によって灼かれて破壊されていく。

 そして、破壊されていく度に、破壊と同等の速度で自己修復を繰り返して傷を癒していく。肉体は損なわれない、残るのは激痛の“記憶”だけ。その痛みが俺の意識を鮮明にしていく。



「コイツ……再生しながら……!!」

「タウロス……覚悟ォォ!!」



 そして、電撃に怯むことなく突進した俺はタウロスⅠⅤ(フォー)を剣の間合いに捉えた。白い“牡牛”と化したタウロスⅠⅤ(フォー)の頭部目掛けて、俺は振り上げた魔剣を一気に振り下ろす。



 だが、魔剣が直撃しようとした刹那――――


「電磁障壁『タルタロス』――――起動!!」

「――――っ!? これは……!?」


 ――――一際強力な電撃がタウロスⅠⅤ(フォー)を守った。



 電磁障壁『タルタロス』――――戦艦ラストアークにも搭載している、攻撃などの異物が範囲内に入った瞬間、超高圧の電撃が発生して対象を瞬きの間に灼き払う防御機構だ。

 そんな代物をタウロスⅠⅤ(フォー)は生身で使用してきた。放電こそ耐えられたが、電磁障壁タルタロスが発生させた電撃を喰らって俺は空中に大きく吹き飛ばされてしまった。



「くそ……厄介な物を搭載してやがるな……!!」


「ハハハ、どうだラムダ=エンシェント! これがトネリコが開発したアーティファクトだ!! いいか、よく聞け……トネリコは天才だ。お前のあるじにも引けを取らない程にな……!!」


「それがどうした?」


「僕が証明してやろう……ノア=ラストアークよりもトネリコの方が優れていると! お前を倒して……トネリコの方が素晴らしいのだと、あのノア=ラストアークに教えてやる!!」


「それは無理だな……俺の方が強いからな!!」



 タウロスⅠⅤ(フォー)は俺への、ノアへの敵意を剥き出しにしながら吠えた。そして、白き“牡牛”が嘶いた瞬間、頭部に生えた一対の“角”に電撃が集束し始めだしたのが見えた。

 真っ白に発光する稲妻は“角”に帯電させているだけで周囲の地面を破壊して砕いている。砕かれた地面がタウロスⅠⅤ(フォー)の周囲に浮遊して、放電によって粒子になって消滅していく。



「受けろ、神の怒りを――――“天雷ノ矢(インドラ)”!!」



 そして、帯電が完了した刹那、白き“牡牛”の“角”から稲妻による砲撃が発射された。撃ち出す瞬間、周囲の建物が放電によって一瞬で破壊された。

 天から降り注ぐかみなりをそのまま撃ち出したようなもの。デア・ウテルス大聖堂には耳をつんざくような雷鳴が轟き、雷雲で暗くなっていた聖都周辺は白き光で染め上げられた。



「疾……ぐっ、おぉぉ……!!」



 いかずちの矢は撃ち出された次の瞬間には十数メートル以上は離れていた俺に着弾していた。光速に達する雷光の一撃、まさしく“神の怒り”に相応しいだろう。



(かろうじて魔剣で直撃は防いだが……余波だけで身体がボロボロだ。“機神”と融合してなかったらマズかったかも……いや、今でも十分にマズイか……)



 いかずちの矢の直撃はかろうじて免れた。攻撃を察して振り抜いた魔剣がいかずちの矢を斬り払ったからだ。

 しかし、俺の全身はボロボロにされていた。矢を弾いた瞬間、拡散した小さな放電が何度も装甲アーマーを貫いて、俺の身体は内側からダメージを負っていた。



(ただ身体の組織を灼いただけじゃない……タウロスの魔力で形勢された電撃が俺の身体に帯電して、絶えず俺の身体にダメージを与えている……)



 それだけではない、タウロスⅠⅤ(フォー)の電撃は体内に残留し、体組織を破壊してダメージを与え続けている。常に体内を火で炙られ、針で刺されているような感覚だ。

 今はまだ俺の再生能力の方が勝っているが、電撃を多く帯電すれば再生と破壊のバランスが逆転してしまうだろう。それほどまでにタウロスⅠⅤ(フォー)のアーティファクトが操るいかずちは強力だった。



「知っているかい、ラムダ=エンシェント? 古代文明の、さらに古代の時代では……いかずちは“神”の怒りだと形容されていたことを」


「それがどうした……“神”にでもなったつもりか?」


「いいや、まさか……恐れ多いよ。ただね……今の僕はもはや『光導十二聖座アカシック・ナイツ』の枠には収まらない存在になったって言いたいのさ!!」


「これは……空の様子が……!」


「我がアーティファクトの名は『ゼウス』! 古代文明の“神”の名を冠せし兵器! この空はすでに僕の制御下にある! 見せてあげるよ……“神”の怒りを!!」



 ただ装甲アーマーから雷撃を発するだけではない、どうやらタウロスⅠⅤ(フォー)の纏うアーティファクトは天候すらも支配するらしい。デア・ウテルス大聖堂の上空では、いかずちが雷鳴と閃光を発しながら一点に集束し始めていた。



 そして、デア・ウテルス大聖堂を一際大きな雷鳴と稲光が包んだ瞬間――――


「さぁ、威光に平伏せ――――“建御雷神(タケミカヅチ)”!!」

「――――っ!!」


 ――――雷雲より生じたいかずちが激しい閃光と雷轟を響かせて、俺を目掛けて一直線に落下してきたのだった。

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