表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十七章:神が生まれ落ちる日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1076/1177

ヘキサグラムの記憶⑰:命の価値、人生の値段


「クフフッ、ようこそ“快楽園メル・モル”へ、マリーチア子爵殿」

「おお、これはこれは【死の商人】殿……!」



 ――――ママが死んでから一週間後、あたしは“享楽の都”アモーレムの一画に在る闇市場ブラック・マーケットで『商品』として売りに出された。

 動物が入れられるような檻に入れられて、あたしは訪れた顧客たちの見世物にされていた。衣服の着用は許されていない、肌に着ける事を許されたのは鎖に繋がった首輪のみだった。



「…………」



 闇市場ブラック・マーケットに非合法な商品を買いに来たであろう恰幅かっぷくの良い貴族達が“檻”に入れられたあたしを値踏みするように見ている。髪の質、肌のはり、顔の造形、容姿の美しさ、乳房の大きさ、性器の形、全てが査定の対象だった。

 私欲に塗れた大人達の醜悪な視線があたしを陵辱レイプするように突き刺さり、それがあまりにも不快であたしは“檻”の隅っこで膝を抱えてうずくまっていた。



「これは……ほほう、珍しい……エルフの出品か!」


「ええ、その通り……流石はマリーチア子爵、お目が高い! この娘は人間との混血ハーフではありますが、珍しいエルフ種の奴隷でして……ちょいと()()()()()拾いましてねぇ……」


「エルフ種の大半は森に籠もってますからなぁ!」



 あたしを捕らえた【死の商人】が顧客の一人であるブクブクに太った中年貴族と談笑している。どうやら男はあたしに関心を示しているらしい。

 【死の商人】はあたしを『そこら辺』で拾ったと言った。あたしが過ごした教会を『そこら辺』と言った、あたしの大事な居場所は彼女にとっては無価値な場所だった。



「【死の商人】殿、この奴隷の用途は?」


「ええ、せっかくのエルフの女、容姿も端麗ですし、まだ年齢も若いときた……ので、こちら“愛玩”用に出品しております。あっ、念の為にお伝えしますが……まだ生娘です」


「ほう……まだ手付かずの“新品”か……」


「ええ、その通り……胸と腹部に“隷属の印”を刻んでいますので、“飼い主”には従順ですよぉ。クフフッ……どうですか、子爵殿のお眼鏡に叶うかと」


「ふぅむ……それはなんともそそる話だ……」



 男が舌なめずりをしながらあたしを凝視している。完全に獲物に狙いを定めた“捕食者”の目だった。あたしはその目があまりにも怖くて震えてしまった。

 あたしは“愛玩”の為の『商品』、早い話が性奴隷だった。だから、誰かに買われれば()()()()()()辿()()()()容易に想像できた。あたしの“女”が好きでもない誰かにかねで買われてしまうのが恐ろしかった。



「檻の隅っこで蹲っていてはよく観察ができんな……【死の商人】殿、商品をよく見たい。アレを檻の前まで越させて貰えますかな?」


「ええ、もちろんですとも……さぁ、来なさい」

「――――ッ!? うっ、痛い……やめて……」


「お客様がお前をよく見たいとおっしゃっています。檻の前に来てお客様に顔と身体を見せなさい。お前の価値をお客様に示しなさい」



 怖くて蹲ろうとした瞬間、【死の商人】が指を鳴らした。同時に、あたしを捕らえた首輪に施された仕掛けが作動して首に激痛が走った。息が出来なくなるような、首を絞められるような苦痛だ。



「ひぅ……うぅ、うぅぅ……」


(誰が泣いて良いと言いましたか? あなたは“愛玩人形”ですよ……さぁ、お客様に媚びた笑顔を見せなさい。媚びた姿勢でお客様にアピールなさい。さもないと首輪をもっと痛くしますよ?)


「ひっ……嫌、それは嫌……」



 脳内に【死の商人】の声が響く。顧客に媚びた仕草をしなければ首輪をさらに絞めると。言うことを聞かなければ、また苦痛を味わう。



「うぅ……え、えへへ……あたしを買って下さい……」



 言われるがまま、あたしは媚びた仕草をして男に愛想を振りまいた。両手を後頭部に回して、大きく股を開いて中腰になって、自分の全てを男に曝した。

 媚びるように蕩けさせた笑顔を、丸出しになった乳房や性器を男がジロジロと見ている。羞恥で今すぐに死にたくなった……けれど、あたしにはもう『死ぬ自由』すら許されてはいない。



「クフフッ……如何ですか、この『商品』は? エルフ種は長寿かつ若い容姿が長い……混血ハーフと言えどその性質は変わらない。資産価値もバッチリですよ……」


「ふむ、それもそうだな……で、幾らだ?」


「すでに別のお客様からは200万ティアをご提示頂いています。クフフッ……この『商品』は相応しい“飼い主”を求めていますので、競りではなく直接商談を設けていますので悪しからず……」


「直に触って確かめたいのだが……」


「おおっと、お手付きはご勘弁を……妙な手垢が付いてしまうと()()()()()()()()()()()()。お楽しみはご購入の後で……買っていただければ処女でもなんでもどうぞ頂いて下さいな」



 徹頭徹尾、あたしは『商品』として扱われている。誰もあたしを可哀想だと思っていない、欲望の捌け口だと思っている。あたしは初めて出会った“家族”以外の人間が心の底から怖くなった。


 この『世界は醜い』、欲望に塗れている。

 あたしは彼等に喰われるデザートだった。


 今すぐに逃げ出したい、今すぐに教会に帰りたい。でも、あたしには逃亡は許されないし、教会に戻っても誰も居ない。この場所にあたしを助けてくれる人は居ない。



「ふむ……この機会を失えば、次にエルフ種の奴隷といつ巡り会えるか分からんな。よし、私も男だ……500万ティア出そう。どうだ、これなら落札できそうか?」


「…………」


「おお、これはこれは……マリーチア子爵殿は見た目も気概も随分と太っ腹でいらっしゃる。相場の倍以上の値段を提示されてしまってはわたくしも融通してしまいそうですねぇ……クフフッ」


「どうかね?」


「良いでしょう……マリーチア子爵殿、500万ティアで交渉成立です。この奴隷はあなたのものです……先方にはわたくしからお伝えしましょう。ささっ、向こうで契約書を交わしましょうか……」



 そして、【死の商人】と男の間で商談は成立した。500万ティア、それが『ルチア=ヘキサグラム』という女の命の価値、人生の値段だった。

 ママがお腹を痛めて産んで、ママが愛情を込めて育ててくれたあたしの価値はあっさりと決まってしまった。あたしの存在価値は()()()()()()()()()()()()()()()()()。その事実を目の前で突き付けられて、あたしは悔しくて涙を流した。



「良かったですねぇ、ルチアちゃん……あなたを可愛がってくれる素敵な“ご主人様”が現れましたよぉ。さぁ、これから此方の素敵な素敵な紳士様に可愛がって貰いなさい……永遠に。クフフッ、クフフフフフッ!!」


「ママ……パパ……誰か、誰か……助けて…………」


「ふひひ……今日からお前は私の『所有物』だ。た~っぷりと可愛がってやるから、しっかりと奉仕するんだぞ。なぁに、お前を捨てた両親の事など……すぐに忘れさせてやろう」



 こうして、あたしは貴族の男に買われた。あの日、自ら命を断てなかったばかりに、あたしは“愛玩人形”として地獄へと落ちていった。


 ――――そして、その日の内に、あたしは男によって処女を散らされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ