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第882話:VS.【原初の亜人】レイ=フレイムヘイズ④ / 騎士の時代の終焉


「終わらせようか……カビの生えた騎士の時代を!」

「いいや、まだ終わらせない……俺たちの時代は!」



 ――――背面走行をする大型二輪スレイプニルに立ち、ケンタウロスへと変貌したフレイムヘイズと斬り結ぶ。

 フレイムヘイズの四腕から繰り出される猛攻を、両手に握った聖剣と魔剣で凌いでいく。幾度となく剣戟の音が鳴り響き、その度に閃光と火花が舞い散る。



「フフフッ、ノア=ラストアークという“お荷物”を背負って戦うのはつらそうだな、ラムダ卿? どうだ、余計な荷物など捨ててしまえ」


「彼女は我が“誇り”だ。何があっても護り抜く」


「そうか……ならばせいぜい護ってみせよ! 私は遠慮などしない、ノア=ラストアークも容赦なく屠ってやろう! ハハハッ、ハハハハハハハッ!!」



 俺の背後には大型二輪スレイプニルを運転するノアがいる。迂闊にフレイムヘイズの攻撃を躱そうとすれば彼女が巻き添えを受け、それを分かっているからから攻撃には明らかにノアを巻き込もうとする意志が見える。

 俺には回避なんて真似は許されない。全ての攻撃を受け止め、ノアという自らの“誇り”を護り抜かねばならない。



「ヌゥゥッ!!」

「くっ、オォォ!!」



 フレイムヘイズが挟み込むように振り抜いてきた両腕のつるぎを聖剣と魔剣で受け止める。

 剣同士が激突して火花が散ると同時に、フレイムヘイズは第二の左腕に持った戦斧を大きく振り上げて俺の頭に狙いを定める。



「これは防げるか!?」

「くっ……“視閃光コンタクト・ビーム”!!」



 振り下ろされた灼熱の戦斧に視線を向けて、両眼から光線ビームを繰り出して防御する。光線ビームを受けた戦斧が弾かれて、フレイムヘイズが大きく上体を仰け反らせる。



「うぉ……ッ!? なんだ、その芸当は……!?」

「今だ、e.l.f(エルフ).! 僚機ビットで追撃を!」



 すかさず俺はe.l.f(エルフ).に追撃を指示、命令を受けたe.l.f(エルフ).は僚機ビットの銃口を仰け反ったフレイムヘイズに向ける。



「舐めるなよ……ズアッ!!」

「槍で斬撃を……! e.l.f(エルフ).、僚機ビットを……」

「駄目です、避けきれ……きゃあっ!?」



 だが、僚機ビットから射撃が行われるよりも疾く、フレイムヘイズは第二の右腕に装備していた灼熱の槍による刺突で炎の魔力を帯びた斬撃を飛ばして僚機ビットの一基を破壊してみせた。

 灼熱の斬撃を喰らった僚機ビットが落下して置き去りになり、遥か後方で爆発して役目を終える。



「もう一基残っているぞ、フレイムヘイズ!」

「それがどうし……ぐあッ!? お、おのれ……」



 しかし、残っていたもう一基の僚機ビットによる光線ビームがフレイムヘイズの胸部を貫いた。

 胸元を貫かれたフレイムヘイズが吐血して痛みに悶える。だが、致命傷にはなっていない。傷口からは焔が溢れ、傷は即座に回復し始めていた。



「鬱陶しい蚊蜻蛉カトンボが……墜ちろ!!」



 残された僚機ビットを脅威だと感じたフレイムヘイズは“紅剣ヒノカグツチ”でくうを振り抜いて、前方に皮膚が焼けるような熱波を繰り出してきた。

 思わず腕を盾にして身を庇ったが、その隙を突いてフレイムヘイズは第二の左腕に持っていていた戦斧を投擲、俺の頭上に浮かんでいた僚機ビットを正確に射抜いて破壊して見せていた。



「ああっ、フギンとムニンが壊されて……!」

「フラヴンアースが残してくれた僚機ビットが……」


「ハハハッ、矮小矮小! あの程度の“玩具おもちゃ”でこの“アグニ”を止められると思ったか、ラムダ卿?」


「なら、直接たたっ斬ってやるまでだ……!」

「クククッ、そうこなくてはつまらん……!!」



 僚機ビットを壊したフレイムヘイズが鬼気迫る表情で次の攻撃を仕掛けてくる。

 下半身の前脚で跳ねて上体を浮かせ、全体重を乗せた“紅剣ヒノカグツチ”と光剣で斬り掛かってくる。



「我が王よ、衝撃に備えて……ぐっ、おぉぉ!!」

「――――きゃ!? スレイプニル、耐えなさい!」



 フレイムヘイズの斬撃を聖剣と魔剣で受け止めた瞬間、全身に凄まじい負荷が掛かり、同時に大型二輪スレイプニルの駆体が軋みながら地面に沈みかける。



「そうら……まだ私には“腕”が残っているぞ?」

「くっ……投げた戦斧がもう再生成されて……!」



 初撃には耐えた、だがフレイムヘイズはさらなる追撃を仕掛けようとしていた。

 第二の右腕に持った槍を振りかざし、第二の左腕に投げ捨てた筈の戦斧を再生成して、フレイムヘイズはさらに上から攻撃を加えようとしていた。



(これ以上、上から攻撃を加えられたらスレイプニルの駆体がバランスを崩す。ならば……!!)



 初撃の時点で大型二輪スレイプニルの駆体は大きく沈んでいた。追撃をまともに受け止めれば駆体はさらに負荷が掛かってバランスを崩してしまうだろう。

 そのことを悟った俺はフレイムヘイズの意表を突く技を使うことに決めた。身体を構築するナノマシンを動員して、両肩に意識を集中していく。



「このまま押し潰して……」


「ふん、第二の腕が自分だけの専売特許だと思うなよ! “機神装甲”レーカ・カーシャ、隠し腕展開ッ!!」


「……ッ!? な、なんだと!?」



 纏った“機神装甲”レーカ・カーシャを構成する流体ナノマシンが変化して、両肩から第二の両腕を形成していく。

 槍と戦斧を振り下ろしたフレイムヘイズも突然、俺から第二の腕が出現した事に驚いたのか仰天した表情をしている。



固有ユニークスキル【煌めきの魂剣フルジェント・ヴィータ】――――発動!!」

「それはシータ=カミング卿の術式……チィ!!」



 そして、生成した第二の腕に自身の“魂”を燃料にした蒼い魔力剣を生成して、フレイムヘイズが放った槍と戦斧を蒼い魂剣こっけんを振り抜いて弾き飛ばしたのだった。

 弾かれた槍と戦斧はフレイムヘイズの手からこぼれ落ちて、地面に接触した瞬間に一瞬激しく炎上して消え去った。



「そうか……親子だったな、貴様とカミング卿は……」

「だったらなんだ?」


「あの小娘は中々に見所があった。いずれは最優の王立騎士にもなれた逸材だったが……残念な結果に終わったな」


「我が母の意志は……今も俺の心に生きている」

「ならば……貴様の“死”と共に継承された意志は死ぬ」



 いつしか俺たちは渓谷を抜いた。登った朝日が俺たちを照らし、遥か後方には“享楽の都”アモーレムがうっすらと見え始めていた。



「“享楽の都(アモーレム)”が見えてきた……!」

「我が王よ、そのまま街に向けて走ってください」



 大型二輪スレイプニルの速度ならあと数分も走れば“享楽の都”アモーレムへと到達する。

 それまでに決着を着けたいが、フレイムヘイズもそう簡単には首を取らせてはくれないだろう。



「ここまで我が猛攻を凌いだ事は褒めてやろう、ラムダ=エンシェント卿。だがな、私はグランティアーゼ王国で最強の騎士……貴様如きには遅れは取らん」


「新しい武器が……今度は弓か!」


「ラムダ=エンシェント卿……貴様の“死”を以って、騎士の時代の終焉を告げてやろう! くだらぬ忠誠に殉じて死ね! そして、古き良き騎士の王国に相応しい末路をくれてやる!!」



 大型二輪スレイプニルから少しだけ距離を取ったフレイムヘイズは、空いていた第二の腕に焔の魔力で形成した強弓ごうきゅうを装備する。

 そして、同じく焔の魔力で形どった矢をつがえ、大型二輪スレイプニルへと照準を定める。



「さぁ、これが終焉だ! “焔蛇天弓ミシュコアトル”!!」


「我が王よ、回避行動を!!」

「分かっています! この程度……!」


「当たれば溶け死ぬぞ! 死ぬ気で躱せみせよ!!」



 そして、フレイムヘイズは灼熱の矢を放ってきた。放たれた矢は空中で七つに分裂し、フレイムヘイズは矢継ぎ早に次の矢を発射していく。

 矢が着弾した箇所からは真っ白な焔の火柱が立ち上り、周囲の草花を焼き払っていく。すでに大型二輪スレイプニルの前方には大量の火柱が立ち昇っていた。



「私だってシミュレーターで大型二輪の運転は習得しています! この程度、躱してみせますとも! 我が騎士よ、貴方はフレイムヘイズに意識を集中するのです!」


「イエス、ユア・マジェスティ……!!」


「フフフッ……泣ける主従関係だな、ラムダ卿? ならばもっと矢をくれてやろう! さぁ、人生最後のあるじ、その安っぽい命と引き換えに護ってみせよ!! ハハハッ、ハハハハハハハハッ!!」



 ノアの華麗なハンドル捌きで大型二輪スレイプニルは立ち昇る火柱を回避していく。だが、その様子を見たフレイムヘイズは嬉々としてさらに灼熱の矢を放ってきていた。

 そして、あともう少しで“享楽の都”アモーレムに到達するという所で、俺たち目掛けて無数の燃え盛る矢の“雨”が降り注いでくるのだった。

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