リコレクション14:七つの大罪、七つの贖罪
■ ストーリー概要
【第一幕:“冥底幻界魔境”マルム・カイルム】
「他の“資格者”たちを尽く薙ぎ払い、血濡れの王冠を被って玉座に座るが良いにゃ、ラムダ=エンシェント。さすれば、お前の願望は叶うのだにゃー!」
――――“マザー”(第607話より)
天空大陸ルイナ・テグミーネでの戦いから一週間後、ラストアーク騎士団は魔族たちの故郷である“冥底幻界魔境”マルム・カイルムへと足を踏み込んだ。ラムダが次期魔王を決定する継承戦の“資格者”として、魔界の裁定者である“原初の獣”に呼ばれていたからである。
そして、魔界で唯一の中立地帯である“魔女村”ヴェスペラへと訪れたラムダたちは女神アーカーシャの子ども『四大』の一角、大魔女“地母”こと“地”と接触、ラムダは“マザー”の推薦を受けて『魔王継承戦』の資格者として正式に選ばれるのだった。その反面、かつての『アーティファクト戦争』で敗北を喫したグラトニスは“マザー”によって継承戦への参加を、つまり魔王に返り咲くことを禁止されてしまうのであった。
傷心するグラトニスを宥めるラムダだったが、そんな折に資格者の一人である巨人族の長、“巨戦王”デル=ヴェ=デルガドスが襲来、新たに資格者となったラムダに強襲を仕掛けている。だが、突如の襲撃にも動ずる事なく、ラムダは一撃でデルガドスを返り討ちにして魔王継承戦に名乗りをあげる。そして、ラムダの参戦を皮切りに、それまで停滞していた魔王継承戦は一気に動き出すのだった。
【第二幕:サキュバスの悪夢】
「わたしの名前はリリス=ナイトメア。この街の治安を護る“サキュバス騎士”、女王ゼノビアの懐刀さ。さぁ、次は貴方の名前を聞かせて頂戴……」
――――リリス=ナイトメア(第615話より)
ラストアーク騎士団は分散して魔王継承戦の資格者たちを探ることになり、ラムダは資格者の一人、“サキュバス女王”ゼノビア=アロマヴェーラを求めて魔界東部に位置するサキュバスたちの色街“夢幻遊幽”アマンティスへと足を運ぶ。その街でラムダは女王ゼノビアの護衛を名乗る少女、“サキュバス騎士”リリス=ナイトメアと出会い、一夜の関係を持つことになるが、ハニートラップにまんまと引っ掛かったラムダはあっさりと捕らえられて女王ゼノビアの前に引きずり出されてしまう。
女王ゼノビアはラムダを魅了し、自らの下僕にしようと画策したが、そんな折にゼノビアの隠れ家にグラトニスが乱入、“マザー”の禁を破って魔王継承戦へと参加する事を表明しつつゼノビアへと攻撃を仕掛けてきたのだった。そして、解放されたラムダはゼノビアの護衛であるリリスとの戦闘へともつれ込むのだった。
しかし、一進一退の攻防を続けるラムダとリリスの元にさらなる乱入者が現れる。それはとある聖女の暗殺事件を起こした邪教徒たちを追う機械天使アズラエルだった。ラムダへの殺意に燃えるアズラエルはラムダを見るなり介入を開始、リリスを含めた三つ巴の戦いへと発展してしまう。
だが、そんな折に事件が発生し、グラトニスと戦っていたゼノビアが邪教徒の刺客によって暗殺され、グラトニスを庇ったアケディアスまでもが意識不明の状態にされてしまうのだった。さらに、ゼノビアを殺した相手はかつてラムダが倒した筈の敵『リティア=ヒュプノス』を名乗っている事が発覚。魔王継承戦に不穏な暗雲が立ち込めている予感がラムダに襲いかかるのだった。
【第三幕:叡智の捕食者】
「始めましてだネェ、ラムダ=エンシェント卿。吾輩の名はジェイムズ=レメゲトン。魔王継承戦に参加した資格者にして、魔界一の知恵者、“叡智の捕食者”の二つ名を持つ悪魔だヨ」
――――ジェイムズ=レメゲトン(第627話より)
女王ゼノビアの暗殺事件の後、ラムダは魔界西南部に位置する絶海の古塔、“禁断古塔”フラウデムへと向かっていた。ラムダへの同盟を申し出た資格者の一人、“叡智の捕食者”ジェイムズ=レメゲトンと接触するためである。
仕掛けられた謎掛けを突破した禁断古塔フラウデムへと侵入、内部で悪魔族の老紳士レメゲトンと対面する。彼が持ちかけた同盟の話は真実、だがレメゲトンはラムダが真に同盟者として相応しいかを見定める為に悪辣なゲームを仕掛けてくるのだった。
それは小さな箱に閉じ込められたノアと、そのノアを精巧に模写して作った鏡像の中から本物のノアを探し当て、偽物である鏡像を殺せという内容だった。もし間違えればノアを自らの手で殺めてしまうかも知れない。そんな緊迫した状況の中でラムダは冷静に答えを導き出し、レメゲトンが仕組んだ悪辣な罠をかいくぐってノアを救出することに成功してレメゲトンに同盟を組ませることに成功するのだった。
【第四幕:死灰霊園の冥王】
「さあ、目覚めなさい、魔界を彩りし偉大なる魔王たちよ! そして、荘厳たる霊廟を荒らす不届き者に相応しき罰を与え、使命を終えた魔王グラトニスに永久の眠りを!!」
――――エルダー=エリューズニール(第640話より)
レメゲトンと同盟を結んだラムダやグラトニスたちは次なる資格者を倒すべく、禁断古塔フラウデムから北に進んだ先に在る魔界で唯一の墓所、“死灰霊園”コエミテリウムへと突入する。だが、足を踏み入れて早々ラムダたちは資格者の一人、“冥王”エルダー=エリューズニールが操る死者の軍勢に襲われてしまう。
際限なく湧き続ける死者の軍勢をなんとか撃破しながらラムダたちはエリューズニールが潜む歴代魔王の墓所へと突入するが、そこでラムダは蘇ったリティア=ヒュプノスと再会することになるのだった。
ラムダに憎悪を抱くリティアが傍観する中、エリューズニールが操る歴代魔王のゾンビたちとラムダたちの死闘が開始するも、そこに資格者の一人である“原初の魔女”ヴィヴィア=ヴァレンタインが乱入して事態はさらなる混迷を極めていく。そして、痺れを切らしたリティアによる強制転移でラムダとグラトニスを連れ去り、二人は魔界南方に位置する棄てられたダンジョン“忘却神殿”デゼルティオへと誘拐されるのであった。
【第五幕:或る魔王の死】
「わたしはお前を忘れた日は無い。お前を殺す為に何度もこの一万の歳月を繰り返してきた。お前が過去を忘れてのうのうと生きることを……わたしは許さない!」
――――メア=アマリリス(第652話)
ラムダとグラトニスが拉致された“忘却神殿”デゼルティオにはある恐ろしい性質があった。それは神殿にいる間、常に記憶が消去されていくというもの。その性質を知ったラムダは全ての記憶を忘却する前に脱出する事を決意するが、リティアによって脱出を阻まれてしまう。
リティアを追って“忘却神殿”へと現れたアズラエルと共闘し、同じく現れたリリスの助けを得ながらラムダは神殿の最深部へとたどり着き、そこでリティア=ヒュプノスと邪教徒を束ねる資格者の男セイラム=テオドールと対峙する。そして、記憶の忘却という時間制限に追われつつもラムダはリティアを追い詰めるが、その瞬間、リティアの深層意識に潜んでいた“巨悪”がその姿を顕す。
その名はアラヤ=ミコト、“原初の魔王”アラヤシキとしてかつて世界に猛威を振るった怪物である。意識を顕現させたアラヤ=ミコトは瞬く間にラムダたちを撃破し、ラムダとグラトニスの待つ“傲慢”“暴食”“色欲”の権能を奪い取った。そして、アラヤ=ミコトはラムダに対し、歴代の魔王は全員がアラヤ=ミコトの分け与えた『七つの大罪』の権能を強化させる為の“駒”だったという事実を告げられる。
魔王としての権能を奪われたグラトニスは倒れ、ラムダもアラヤ=ミコトによってトドメを刺されそうになった。だが、機転を利かしたアズラエルは神殿の床を爆破し、ラムダとグラトニスを神殿の地下に流れていた地下水脈に落として逃がすのだった。そして、遅れてやって来たリリス、改めて“原初の勇者”メア=アマリリスの妨害を受けて、アラヤ=ミコトはラムダたちをまんまと取り逃がしてしまうのだった。
【第六幕:氷の女帝】
「私は今度こそ魔王になってみせる! もう誰にも邪魔はさせない! 私こそが魔界の支配者に相応しい! もう誰にも渡さない、もう誰にも奪わせない!」
――――ニーア=ニヴルヘイム(第676話より)
ラムダとグラトニスが“忘却神殿”にて失踪した中、ミリアリアたちは魔界北東に位置する“灼熱大地”ラーヴァ・ヴィルにて“巨戦王”デルガドスの勧誘を試みていた。そして、巨人族の隷属を目論むダークエルフたちが仕掛けた悪辣な罠を突破した事でミリアリアは巨人族の心を掴み、見事デルガドスとの同盟を結ぶことに成功する。
そして、巨人族を引き連れたミリアリアは資格者の一人であるダークエルフの長、“氷の女帝”ニーア=ニヴルヘイムの治める“永久凍土”フリゴールへと進軍。先に潜入していたラストアーク騎士団の仲間の痕跡を辿り、現世と冥界の狭間に位置する境界の都市“冥宮都市”クリスタルムへと突入する。
そして、氷の宮殿の最深部でミリアリアは女帝ニヴルヘイムと対峙し、魔王継承戦の進退を賭けて一対一の決闘へと臨む。黄泉の冷気を操るニヴルヘイムを前にミリアリアは苦戦、左腕を欠損する重傷を負ってしまう。だが、ミリアリアは勇者としての意地を見せてニヴルヘイムへと喰らいつき、死力を振り絞った一撃でニヴルヘイムを下すことに成功するのだった。
【第七幕:廃棄孔の少女】
「君は憶えていないかも知れないけど、俺は君を憶えている。俺にとって君は大切な存在なんだ、ルクスリア」
――――ラムダ=エンシェント(第680話より)
アラヤ=ミコトに敗北したラムダは、魔界の中央に位置する巨大な孔、“廃棄孔”ディスポネーレへと流れ着いていた。各地から捨てたられたゴミが積もり、生存競争に負けて追いやられた弱い魔族たちが腐肉を漁って暮らす『魔界のゴミ捨て場』。そんな場所に落とされたラムダは“忘却神殿”で失った記憶を装備したアーティファクトで補いつつ再起、同じく流れ着いたであろうグラトニスを捜索する。
だが、そんなラムダを待っていたのは、“忘却神殿”の影響で魔王としての記憶を全て失い、元の低級魔族の雑種である少女『ルクスリア』へと戻ってしまったグラトニスだった。そして、ラムダはグラトニスがかつて、“廃棄孔”でゴミを漁って生きていたという事実を知ることになるのだった。
グラトニスの過去に衝撃を受けつつもラムダは“廃棄孔”からの脱出を決意、かつてグラトニスが機械天使ルシファーを目覚めさせたという“廃棄孔”の地下に眠る古代文明の空中戦艦を求めて行動を開始する。そして、地下に沈んでいた護衛艦ツクヨミからまだ使用できる小型飛空艇を回収することにラムダは成功するのだった。
だが、脱出を図ろうとするラムダの前にさらなる脅威が迫りくる。“忘却神殿”から現れた怪物がラムダたちを抹殺する為に繰り出したモンスターが“廃棄孔”へと降り注ぎ、突如として破壊活動を開始したのだった。ラムダは“廃棄孔”に追いやられていた元魔王軍の兵士たちと共闘して怪物を抑えつつグラトニスを救助、魔王軍残党にグラトニスを託されて“廃棄孔”から脱出する。
そして、“廃棄孔”の上空でラムダは怪物を操る資格者の一人、“虚無法皇”セイラム=テオドールと再び対峙、“原初の魔王”アラヤシキの完全復活を目論むテオドールを止めようと挑み掛かる。だが、セイラムの有する“不幸”を操る術式を前に操っていた飛空艇が故障、ラムダとグラトニスは魔界西部に広がるダンジョン“黄昏ノ森”へと墜落していってしまうのだった。
【第八幕:黄昏ノ森の怠惰な魔女】
「アタシが誇れるのは三千年前のベストセラーしか無いの。いつまでも“過去の栄光”に縋って、過去に向いて生きてる。それが今のアタシよ……」
――――ヴィヴィア=ヴァレンタイン(第693話より)
“黄昏ノ森”へと落下したラムダとグラトニスは資格者の一人であるヴァレンタインによって救助されるが、ここでラムダたちはテオドール配下のリティアに敗北した事で資格者としての権利を失っていた事実を知る。そして、ヴァレンタインはラムダに自身を魔王にする事を提案し、テオドールが魔王に成ることを危惧したラムダは彼女の提案を受け入れる事にしたのだった。
そんな折、ヴァレンタインの隠れ家に傷ついたリリスが避難してくる。“忘却神殿”でアラヤ=ミコトから受けた傷を癒やす為にラムダはリリスを介抱するも、そこに“原初の勇者”アマリリスを追うレスターが襲撃。ラムダは自身を守ってくれたリリスを庇うためにレスターと対峙する。
レスターを取り押さえたラムダだったが、今度は資格者の一人でありながらアラヤ=ミコトと結託したエリューズニールが襲撃を仕掛ける。記憶を失っ戦えなくなったグラトニスを庇うべくラムダたちは戦闘を開始、重傷を負っていたラムダはヴァレンタインから貰った魔導具にて魔法少女へと変身して怪我を誤魔化し、見事エリューズニールを撃破する事に成功するのだった。
そして、魔王になるべく魔王城の在る“暗黒都市”ペッカートゥムへと向かったテオドールを追って、ラムダたちは“黄昏ノ森”から出発するのだったが、森を抜けた先の荒野にてラムダは“マザー”に行く手を阻まれてしまうのだった。
【第九幕:原初の獣】
「ならば……“私”が全力を以って貴方を倒しましょう。ラムダ=エンシェント……母様の世界を脅かす『厄災』よ……!」
――――“マザー”(第713話より)
魔王継承戦に敗北し、資格者ではなくなったラムダを“マザー”は『女神アーカーシャに仇なす反逆者』として排除しようと試みていた。それに対してラムダは猛反発し、リリスたちを先に行かせつつ二人は荒野で決闘へと臨むことになる。何も無かった筈の荒野が渓谷に変わるほどの激しい戦闘が続き、ラムダは“マザー”の圧倒的な膂力や破壊力を前に苦戦を強いられる。
だが、ノアたちや傷ついたグラトニスを想うラムダは全力を以って“マザー”を圧倒し返して撃破する事に成功するのだった。そして、“マザー”に魔王継承戦の決着を見届けることを約束させたラムダは、再び“暗黒都市”ペッカートゥムに向かい始めるのだった。
【第十幕:悲観の魔王】
「我が名はセイラム=テオドール。女神アーカーシャの創りし世界を否定する者。“原初の魔王”より因子を与えられし……“悲観の魔王”である!!」
――――セイラム=テオドール(第724話より)
“暗黒都市”ペッカートゥムの最奥に建つ“魔王城”エクスピアチオの最上階にてラストアーク騎士団とリリスは残された資格者であるテオドールと対峙する。アラヤ=ミコトから『悲観』の権能を与えられたテオドールは“悲観の魔王”へと覚醒、ラムダすら退けた“不幸”を操る術式でラストアーク騎士団を追い詰めていく。
だが、テオドールが与える“不幸”を、リリスは所有するアーティファクト『時の歯車“現”』による“死に戻り”を用いて突破する事に成功。リリスの持つ聖剣による一撃でテオドールは完全に撃破されるのだった。
一方その頃、“暗黒都市”ペッカートゥムではラムダとリティア=ヒュプノスによる因縁の戦いが勃発していた。ラムダへの復讐を誓うリティアはかつての“強欲の魔王”アワリティアの術式を用いてラムダを追い詰め、さらには“永久凍土”フルゴールで捕らえたアンジュたちを盾にしてラムダに降伏を要求してきた。
しかし、ラムダによる奇策と乱入してきたアズラエルによる共闘とリティアは再びラムダの前に敗北する事になってしまうのだった。だが、リティアを倒した時、ラムダはすでにリティアの体内にはアラヤ=ミコトが居ないことを知るのだった。
リティアの身体を捨てていたアラヤ=ミコトは敗北したはずのテオドールの身体へと憑依して顕現。その場にいたコレットから“憤怒”の権能を奪い取って真の力を解放、瞬く間にリリスたちは薙ぎ倒していくのだった。そして、アラヤ=ミコトは遅れて駆け付けたラムダとの最後の一騎打ちへと臨むのであった。
【第十一幕:原初の魔王アラヤ=ミコト】
「グラトニス様の覇道に……栄光あれ!!」
――――ルシファー(第753話より)
“魔王城”エクスピアチオの玉座の間にてラムダとアラヤ=ミコトは対峙、七人の魔王が育てた権能を振るうアラヤ=ミコトと“第十三使徒”の因子とアーティファクトのバックアップを受けたラムダは一進一退の攻防を続けていた。
だがアラヤ=ミコトは非戦闘員になっていたグラトニスを狙うという卑劣な手段を用いてラムダの動揺を誘い始める。そして、アラヤ=ミコトはグラトニスに向けて致死級の攻撃を放ち、ラムダを攻撃に盾にさせて始末しようと画策するのだった。
その思惑通りラムダはグラトニスの盾になろうとした。だがその時、グラトニスの護衛を務めていたルシファーがラムダを押しのけて盾の役目を肩代わりするのだった。そして、グラトニスの行く末をラムダに託し、愛する魔王を守り抜いたルシファーは完全消滅してしまうのだった。
だが、ルシファーは最期にグラトニスに向けて自身が観測し続けた『魔王グラトニス』の“記録”を遺し、その記録を垣間見たグラトニスは忘却していた“記憶”の欠損を補って魔王グラトニスとして復活を果たすのだった。そして、自らの意志で奪われたはずの“暴食”と“色欲”の権能を際限してグラトニスはアラヤ=ミコトを追い詰め、そしてラムダによる決死の一撃でアラヤ=ミコトはテオドールの身体すら失って敗北するのだった。
【第十二幕:魔王装甲アポカリプス】
「我が名はアラヤシキ……世界に破滅を齎す“原初の魔王”。この世界に飛来した十四番目の『終末装置』」
――――原初の魔王アラヤシキ(第756話より)
リティア=ヒュプノス、セイラム=テオドールの身体を失った事で肉体を持たないアラヤ=ミコトは敗北したかに思われた。だが、精神体になったアラヤ=ミコトは油断したラムダを背後から襲撃し、ラムダが身に纏っていたアーティファクト『魔王装甲アポカリプス』を強奪する事で再度顕現、さらなる力を持つ“原初の魔王”アラヤシキとして立ちはだかるのであった。
アラヤシキの攻撃で魔王城から“暗黒都市”ペッカートゥムへと吹き飛ばされたラムダ、グラトニス、アズラエル、リリスは追いかけてきたアラヤシキとの決戦に挑む。しかし、四人がかりでも第十四番目の『終末装置』であるアラヤシキには遠く及ばず、ラムダたちは次第に追い込まれていく。
だが、そんな最中、巨大人型戦闘兵器『“天空神機”ウラヌス』を操るノア、そして“マザー”が応援として加勢、総力戦でアラヤシキを追い詰めていく。そして、リリスから聖剣を託されたラムダは最後の攻防に打って出て、魔王装甲アポカリプスごとアラヤシキの魂を砕いて決着を付けるのだった。
しかし、それでも精神体になったアラヤ=ミコトは死なず、彼は最後の抵抗として自爆を図ろうとしていた。だがその時、アラヤ=ミコトの前に“真の黒幕”であるジェイムズ=レメゲトンが出現、“原初の魔王”の権能を奪おうと画策していたレメゲトンによってアラヤ=ミコトは捕食され、呆気なくも惨めな最期を遂げてしまうのであった。
そして、“原初の魔王”の権能を手に入れたレメゲトンはラムダの活躍を高く称賛し、ラストアーク騎士団が目指す『女神アーカーシャの居なくなった世界』に期待をしながらラムダの前から姿を暗ましていくのだった。
【第十三幕:アロガンティア帝国襲来】
「我が主君、第十一代皇帝スペルビア様からの命令で殺しに来ました……ラストアーク騎士団よ」
――――エージェント・ピース(第770話より)
“原初の魔王”アラヤシキを倒したのも束の間、“暗黒都市”ペッカートゥムを突如としてアロガンティア帝国の空中戦艦の艦隊が襲撃し始める。そして、ラムダたちの前に現れた帝国軍将校エージェント・ピースはラストアーク騎士団壊滅を宣言し、ラムダたちと交戦状態に陥るのだった。
ラムダは魔王継承戦でボロボロになった身体を引きずりながらエージェント・ピースと対峙、何故か“嫉妬の魔王”インヴィディアの権能である嫉妬の焔を操るエージェント・ピースに苦戦しつつもラムダは彼女を返り討ちにして撃破する事に成功するのだった。
しかし、ラムダがエージェント・ピースを相手取っている間に、もう一人の帝国軍将校エージェント・ブレイヴが“マザー”を暗殺して女神アーカーシャの権能を奪取、ラストアーク騎士団はアロガンティア帝国軍にまんまと出し抜かれてしまうのだった。そして、目的である女神アーカーシャの権能を手に入れたアロガンティア帝国軍は撤退し、こうして波乱に満ちた魔王継承戦は終了するのであった。
【第十四幕:魔王】
「やっと……やっと見つけた。私を愛してくれる……我が愛した人。好きなの……好きなの……愛しているの、貴方を。ラムダ=エンシェント……私はずっと貴方を待っていた」
――――ルクスリア=グラトニス(第780話より)
魔王継承戦の最後の資格者となったヴァレンタインは新たな魔王として就任するも即座に魔王の座を放棄、今回の魔王継承戦で魔王としての矜持を見せたグラトニスへと王冠を譲り、かくしてグラトニスは再び“暴食の魔王”へと返り咲いたのだった。
そして、“原初の魔王”アラヤシキを討伐した事で使命を終えたリリスは死神レスターの進言を受けて死ぬことを了承。ラムダに“原初の魔王”の権能を奪ったレメゲトンとの決着を託し、餞別としてアーティファクト『時の歯車“現”』を手渡して冥界へと去っていったのだった。
こうして、魔界での戦いを終えたラストアーク騎士団は、奪われた“マザー”の権能を奪い返すべくアロガンティア帝国とことを構えることを決意するのだった。だが、意気込むラムダはノアからある恐ろしい事実を伝えられるのだった。それはエージェント・ピースの正体が、並行世界から境界を越えて現れた『オリビア=パルフェグラッセ』だと言う衝撃の事実だった――――。
■ 登場人物紹介
デル=ヴェ=デルガドス
┗魔王継承戦の資格者の一人で、巨人族を統べる“巨戦王”の異名を持つ。
ゼノビア=アロマヴェーラ
┗魔王継承戦の資格者の一人で、サキュバス族の頂点に立つ“サキュバス女王”の異名を持つ。
ジェイムズ=レメゲトン
┗魔王継承戦の資格者の一人で、世界中から集めたあらゆる書物を収めた禁断古塔フラウデムを管理する悪魔族の老紳士。“叡智の捕食者”の異名を持ち、自らの野望を達成する為にラムダ、アラヤ=ミコトに手を貸す。
エルダー=エリューズニール
┗魔王継承戦の資格者の一人で、魔界唯一の墓所を管理する墓守り。不死の種族であり、“冥王”の異名を持つ。肉体を持っておらず、他者の亡骸に憑依して活動している。
ニーア=ニヴルヘイム
┗魔王継承戦の資格者の一人で、ダークエルフ種を統べる“氷の女帝”の異名を持つ。
ヴィヴィア=ヴァレンタイン
┗魔王継承戦の資格者の一人で、“原初の魔女”の異名を持つ少女。かつては魔法少女ビビッド☆ヴィヴィアンの通り名でヒーローとして活躍していた。
セイラム=テオドール
┗魔王継承戦の資格者の一人で、“原初の魔王”を崇拝するクレーシュ団の教祖を務める“虚無法皇”の異名を持つ男性。元々はアーカーシャ教団に属する志し高い聖人だったが、アラヤ=ミコトに唆されて邪教徒へと失墜してしまった。
リティア=ヒュプノス
┗かつてラムダによって倒され、アラヤ=ミコトの“器”として復活を果たした少年。自分から何もかもを奪ったラムダへの強い復讐に燃えている。
リリス=ナイトメア/メア=アマリリス
┗ゼノビア=アロマヴェーラの護衛を務める少女で“サキュバス騎士”の異名を持つ。その正体はかつて“原初の魔王”アラヤシキと戦った“原初の勇者”メア=アマリリスであり、魔族の返り血を浴びすぎた影響で半サキュバス化してしまっている。
アラヤ=ミコト/アラヤシキ
┗テオドールの下、リティア=ヒュプノスの身体を用いて暗躍する謎の人物。その正体はかつてアマリリスや女神アーカーシャと対峙した“原初の魔王”アラヤシキであり、自身の完全なる復活と覚醒を目論んでいる。
“マザー”/“地”
┗魔界の秩序を維持する裁定者の役割を担う大魔女で、女神アーカーシャの権能を分け与えられた『四大』の一角である“原初の獣”。今回の魔王継承戦を企画し、グラトニスの後任である新魔王を選定しようとしている。
エージェント・ピース
┗アロガンティア帝国軍の第三大隊を指揮する仮面の女将校で、その正体は並行世界からやって来た『オリビア=パルフェグラッセ』。肉体的にはすでに死んでおり、ゾンビ化して活動している。
■ 章のテーマ・問い
【七つの大罪】
┗これまで対峙してきた魔王たちとの因縁、そのテーマとなっていた『七つの大罪』がこの章では語られる。傲慢、色欲、強奪、怠惰、暴食、嫉妬、憤怒、そして人々から忘れ去られた悲観。それぞれが人間を悪へと誘う悪感情として定義されている。
だが、七つの大罪と呼ばれる感情は人間が『人間』であるために欠かせない感情でもあり、それらの感情を全て廃した者はもはや人間とは言えない存在へとなってしまう。七つの大罪と言われる感情を持つことに自体は“悪”ではなく、それらの感情に飲み込まれてしまうことこそが“悪”なのだ。
■ 伏線と仕掛け
【伏線1:レメゲトンの行方】
┗“原初の魔王”アラヤシキの権能を強奪したレメゲトンは満足して去っていった。ラムダたちには手を出さなかったのである。何故ならレメゲトンはラムダたちが目指す『女神アーカーシャの打倒』を楽しみにしているからである。
レメゲトンはラムダたちの旅を静かに傍観する。そして、もしラムダたちが女神アーカーシャを打倒したなら、来たる『新世界』にて彼はその悪意を発露させるであろう……。
【伏線2:並行世界から来た悪意】
┗エージェント・ピースは並行世界からやって来た『オリビア=パルフェグラッセ』だった。では、誰かエージェント・ピースをこの世界の引き込んだのであろうか。その答えにノアは心当たりがあった。
それは並行世界を超える技術を搭載した禁忌のアーティファクト『λドライヴ』……つまりラムダの心臓に埋め込まれたアーティファクトを用いる事だった。そして、エージェント・ピースを差し向けたのはアロガンティア帝国を支配する新皇帝スペルビアである……つまり?
■ キャッチコピー
【七つの大罪を乗り越えて】
┗ラムダたちが対峙する資格者たちはそれぞれが七つの大罪に由来する悪感情に飲み込まれている。デルガドスは憤怒、ゼノビアは色欲、レメゲトンは強欲、エリューズニールは暴食、ニヴルヘイムは嫉妬、ヴァレンタインは怠惰、テオドールは悲観、そしてラムダは傲慢。
それぞれの感情に呑まれたものたちはいずれも破滅を辿るか、手段を問わぬ“悪”へと邁進していく。その末路を目の当たりにして、ラムダは改めて人間の持つ『欲望』を直視し、されど『欲望』を捨て去らずに己の力として戒めつつも昇華していく。何故なら、彼が望む『大切な人を護りたい』と願う感情もまた『七の大罪』へと連なる悪感情を発露させる可能性があるのだから。
次回で総集編である『リコレクション』も最後になります。ぜひ最後までお楽しみください。




