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リコレクション09:グランティアーゼの落涙

■ ストーリー概要

【第一幕:アーティファクトの英雄】


「ラムダ様の悪癖がわたしの重荷になるのなら、背負い切ってみせましょう! 愛する人の『欠点』を愛して補ってあげる……それが真の愛ではないでしょうか?」


 ――――オリビア=パルフェグラッセ(第267話より)



 グランティアーゼ王国と魔王グラトニス率いる魔王軍との大規模軍事衝突『アーティファクト戦争』は終結し、多大なる戦績を残したラムダは“アーティファクトの英雄”と呼ばれるようになった。しかしその代償は大きく、勝利の為に自身の魂を燃料にしたラムダの余命は残り数年にまで減っていた。


 それでもラムダは継母ツェーン=エンシェントとの和解を通じて、ようやく一時ひとときの心の平穏を手に入れようとしていた。


 だが、そんなラムダの前に新たな困難は立ちはだかる。王都シェルス・ポエナに現れたのはアーカーシャ教団の教皇ヴェーダ=シャーンティと審問官リヒター=ヘキサグラム。二人は王城に囚われたアケディアス、研究所に保管されたグラトニスたち“魔王”の粛清に現れたのだと言う。


 そして、教皇ヴェーダの出現の間もなくラムダは国王ヴィンセントから次の任務を言い渡される。それは亡きグラトニスに代わり魔族を管理する領主になり、人体には猛毒な瘴気の溢れる魔界マルム・カイルムへと向かえという内容だった。




【第二幕:粛清の“アグニ”】


「あ~……そういう“見苦しい主張”は後で牢獄でお聴きしますね? では……ラムダ=エンシェント、貴方を『テトラ=エトセトラ暗殺』及び『魔王軍の王都侵入幇助(ほうじょ)』の容疑で拘束致します! この拘束は女神アーカーシャの名の下に行われる神聖なる裁定、異論は一切認められませんので悪しからず……!!」


 ――――リヒター=ヘキサグラム(第281話より)



 ラムダの魔界マカイ派遣に第十一師団が騒然とする中、王都の一画で二つの事件が発生する。それは魔王グラトニスの亡骸を奪還しようとする魔王軍残党の侵入、そして王立ダモクレス騎士団第四師団長テトラ=エトセトラの暗殺である。


 エトセトラの殺害現場でグラトニスの側近であるベルゼビュート姉妹と遭遇したラムダは交戦状態に陥るが、ベルゼビュート姉妹の救援に駆け付けた狼王フェンリルの前にラムダは返り討ちにされて魔王軍残党を取り逃がしてしまう。


 そして、同士を失って傷心するラムダをさらなる悲劇が襲い掛かる。それはテトラ=エトセトラの殺害容疑がラムダに掛けられたということ。現れた審問官ヘキサグラムによってラムダは逆賊の汚名を掛けられて捕縛、王城地下の牢獄へと繋がれることになってしまうのだった。




【第三幕:粛清の処刑台】


「今まで貴方が走っていたのは『エンシェント』と言う“血筋”が敷いていた幻想まやかしの“人生レール”です……! どうですか、この機に転職などお考えになられては? 本当にやりたい事を見つければ、貴方もきっと自由になれますよぉ?」


 ――――リヒター=ヘキサグラム(第283話より)



 反逆者として拘束されたラムダに伝えられたのは、自身が“傲慢の魔王”として教皇ヴェーダに粛清されるという処刑宣言だった。それまで信じていた国王ヴィンセントにも王立ダモクレス騎士団にも見捨てられ、ラムダは今まで自分が夢見た王立騎士が儚い幻想だったことを思い知らされる。


 そして運命の日、処刑台へと連行されたラムダは“怠惰の魔王”アケディアス、“憤怒の魔王”コレットと共に処刑されることになってしまう。オリビアはラムダの助命を嘆願するが教皇ヴェーダはこれを却下、オリビア自身も“魔王の花嫁”として処刑されそうになってしまう。だがしかし、あわや処刑というタイミングで乱入者が現れる。


 “黙示録の竜(アルテリオン)”と呼ばれる赫き竜は処刑を敢行しようとする教皇ヴェーダを妨害し始める。さらにその瞬間、火刑に処されようとしていたグラトニスが復活を果たす。ラムダに自身の魂を共有させて死を偽装したグラトニスは反撃の機会を窺っていたのだ。


 グラトニスの復活に呼応するよう第二王女レティシアは父ヴィンセントの欺瞞を糾弾、第十一師団やツヴァイ、ルチアたちラムダ派の王立騎士たちが反乱を開始し始めるのだった。そして、処刑台から解放されたラムダの逃走を阻むべく、最強の王立騎士アインス=エンシェントが立ち塞がるのだった。




【第四幕:エンシェントの騎士】


「それが……君の征く“茨の道”だ……! 今日……流れた血の全てが……君の背負う“業”だと……心得なさい…………」


 ――――アインス=エンシェント(第299話より)



 復活したグラトニスは王立ダモクレス騎士団の総長レイ=フレイムヘイズと対峙するが、女神アーカーシャの権能を分け与えられた存在であるフレイムヘイズこと“アグニ”の前に敗北してしまう。


 その一方でラムダは兄アインスと対峙、ノアたちが王都から脱出させる為の時間稼ぎに徹し始めた。グラトニスたちの戦い余波で王城が崩壊炎上していく中でラムダは必死に戦い、アインスへと肉迫していく。そして、アインスの持ち“救国の聖剣”ジャンヌ・ダルクの必殺技を打ち破り、ラムダはアインスを下すことに成功するのだった。


 しかし勝利も束の間、次にラムダの前に立ち塞がったのは第八師団の空位に収まった父アハト=エンシェントだった。王国を裏切ったラムダを失敗作の“ゴミ”だと罵るアハトを前にラムダは激昂、自らの価値を証明するべくラムダは戦い抜く。


 適性の無いアーティファクトを無理やり用いて戦うアハトを打ち破り、ラムダは見事勝利を収めることに成功した。だが、そんなラムダを待っていたのは、ラムダの実力を認め、亡き母シータの面影を息子に見たアハトの涙ながらの懺悔であった。そして、ラムダの救いの手を跳ね除けてアハトは纏っていたアーティファクトの装甲の爆発に巻き込まれて死亡するのだった。




【第五幕:グランティアーゼの落涙】


「ラムダ、これだけは覚えておきなさい。辛くて泣いてもいい、悲しくてつまづいてもいい。けど、最後には必ず立ち上がりなさい……! どんなに傷付いても、どんなに打ちのめされても、立ち上がり続ける限り、人は成長していける……!」


 ――――アインス=エンシェント(第315話より)



 父アハトを殺めてしまった後悔に暮れるラムダだったが、状況はさらに悪化していく。王都の空を赤く染めて出現したのは二つの月の片方に擬態していた衛星軌道兵器型アーティファクト『月の瞳』と無数の機械天使ティタノマキナの軍勢、そして教皇ヴェーダの意識を乗っ取って現れた創造主、女神アーカーシャだった。


 遂に女神アーカーシャと対峙したラムダはなぜ自分が騎士ではなく『ゴミ漁り』なのかと問う。それに対して女神アーカーシャが『貴方には騎士の適性は無い』と誠心誠意答えた事で、ラムダは遂に決定的な挫折を味わって膝を屈してしまうのだった。


 しかし、それでも粛清は終わらず、アーティファクトの蒐集を図った国王ヴィンセントを粛清の名目で抹殺した女神アーカーシャはアーティファクト『月の瞳』による大規模破壊で王都抹消を宣言するのだった。


 茫然自失となってラムダは粛清による死を受け入れようとしたが、オリビアに頬を叩かれた事で僅かな自我にしがみつき始める。そして、遠距離から女神アーカーシャを狙撃した何者かによって魔王軍残党が王都に忍び込んだ際に使用した『転位陣ポータル』の存在を知ったラムダは脱出を決定する。


 妨害に現れたミカエル、ラファエル、ウリエルたちアーカーシャ教団側の機械天使ティタノマキナ、ラムダへの復讐の為に復活したアズラエルの妨害を退けながらもラムダはノアたちや王都の住民たちを逃がしていく。だが、アーティファクト『月の瞳』の砲撃、超圧縮されたエネルギーが“落涙”となって王都へと発射されるのだった。


 もはや一刻の猶予も無い、そんな折ラムダの前に現れたのは傷付きながらも立ち上がったアインスだった。アインスはグランティアーゼ王国の未来へとラムダへと託すると迫りくる“落涙”に向かって飛翔、自分の命と引き換えに聖剣を“落涙”に突き立てて圧縮されたエネルギーを上空に逃し、最悪の事態だけは回避するのだった。


 アインスが時間を稼いでいる間にラムダは“黙示録の竜(アルテリオン)”に連れられて、ノアたちも“アグニ”の追撃を振り切って教会に設置された転位陣ポータルでの脱出に成功するのだった。


 こうして国王ヴィンセントの死を以ってグランティアーゼ王国は崩壊。ラムダ=エンシェントが両親に誓った王立騎士になるという“理想”は、王立ダモクレス騎士団の分裂・瓦解という最悪の形で儚く散っていったのだった――――。



 ――――第三部『方舟大戦編』へと続く。



■ 登場人物紹介

ヴェーダ=シャーンティ

┗アーカーシャ教団をまとめ上げる教皇の女性で、“大聖女”の称号を持つ唯一の人物。普段は素顔を仮面で覆い隠しており、女神アーカーシャの意識を肉体に降ろす時のみ素顔を開帳する。女神アーカーシャに自我の全てを明け渡した“器”。


リヒター=ヘキサグラム

┗アーカーシャ教団の暗部に属する審問官インクイジターの男で、ルチア=ヘキサグラムの実の父親。飄々とした性格をし、かなりの皮肉屋。ルチアのことは認知していない。


アハト=エンシェント

┗エンシェント辺境伯家の現当主で、ラムダの実の父親。エンシェント家から王立騎士を輩出することを至上の命題としており、故に『ゴミ漁り』とされたラムダを追放した。かつての部下であるシータに特別な感情を抱いており、奴隷として売られていたシータを憐れみから買い取ってラムダを身籠らせた。


ツェーン=エンシェント

┗アハト=エンシェントの妻で、アインスたちの母親。ラムダにとっては継母ままははであり、メイドのシータ=カミングの子であるラムダを我慢しつつも育て上げた。ラムダが自身のことをいまだに慕っていることをオリビアから知らされて、ラムダに向けていた憎悪を氷解させた。


テトラ=エトセトラ

┗王立ダモクレス騎士団第四師団を率いるドワーフ族の女性で、国王ヴィンセントと共にアーティファクトの蒐集を目論んでいる。ノアのことも狙い娘であるネオン=エトセトラをノアの助手として第十一師団へと送り込んだが、アーカーシャ教団によって粛清されて死亡した。独特の商人訛り(関西弁)が特徴。


レイ=フレイムヘイズ/“アグニ

┗王立ダモクレス騎士団の総長を務めるエルフ族の女性で、その正体は女神アーカーシャによって造られた“原初の亜人”。当時、一介の領主に過ぎなかったグランティアーゼ一族を担ぎ上げて騎士国家を築かせたのは彼女の仕業である。


女神アーカーシャ

┗正式名称『虚数情報記憶帯干渉同期システム:アーカーシャ』。ノア=ラストアークによって造られた超高性能演算装置であり、現文明に於いては女神を名乗る存在。世界の様々な情報を内包する“虚数情報記憶帯アカシック・レコード”から未来の情報を読み取り現実に干渉する機能で世界を改変する装置であるが、現在はその権能を自身が設計した子どもたちに渡している。




■ 章のテーマ・問い

【理想の終演】

┗この第九章でラムダは自身が思い描いた『王立騎士になる』という“夢”を完全に砕かれて挫折する。与えられた『ゴミ漁り』の職業クラスは女神アーカーシャによって正統であると宣言され、自身の存在が引き金となって王立ダモクレス騎士団はおろかグランティアーゼ王国までもが消滅の道を辿ったのだから。


 父アハトを殺め、兄アインスを失い、大勢の王都の住民を見殺しにしながら敗走したラムダは失意の涙を流す。この先、ラムダが再起することは叶うのだろうか……?




■ 伏線と仕掛け

【伏線1:動き出すラストアーク騎士団】

┗王都消滅を見届け、それまで日陰で暗躍を続けていた少女ホープ=エンゲージは遂に動き出す決心をする。それまで密かに勧誘を続けていた王立ダモクレス騎士団、魔王軍の戦士たちを束ねたホープは『ラストアーク騎士団』を立ち上げて、王都から逃れたラムダたちの元へと出撃を開始するのだった。


【伏線2:四大しだい

┗王立ダモクレス騎士団総長を務めていたレイ=フレイムヘイズ。彼女は女神アーカーシャの権能を分け与えられた四人の子どもたち『四大』の一角“アグニ”であった。母アーカーシャからグランティアーゼ王国の抹消を命じられたフレイムヘイズは国王ヴィンセントを排除、その正体をラムダたちに明かすのだった。


【伏線3:アーカーシャ教団の内通者】

┗王都の教会にアーティファクトの転位陣ポータルを設置し、魔王軍残党を王都へと忍び込ませたのはホープ=エンゲージの支持を受けたラストアーク騎士団の密偵である。その人物は現在、アーカーシャ教団の構成員として暗躍しているが、その人物の正体とは……?



■ キャッチコピー

【泣いても挫けても、最後には必ず立ち上がれ】

┗本作、『忘れじのデウス・エクス・マキナ』を総括するメインテーマ。多くの困難に打ちのめされたラムダは涙を流し挫折してしまう。それでも立ち上がらねば何もかもを失ってしまう。


 失ったものを、奪われたものを、届かなったものを取り戻したいのなら、もう一度だけ立ち上がって。立ち上がり続ける限り、あなたはまだ負けていないのだから。

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