リコレクション01:【ゴミ漁り】の少年
今回から始まるのは本作のこれまでのストーリー(第1章〜第15章まで)を1章ずつ振り返る“リコレクションシリーズ”になります。
主人公ラムダたちが辿った冒険、物語を彩る登場人物、張り巡らされた伏線、隠されたテーマやメッセージなどを解説していきますのでよろしくお願いします。
物語を読み進めてくださっている読者の皆様はもちろん、「今から物語を追うのはちょっと大変……」と思っているご新規様でも『忘れじのデウス・エクス・マキナ』の世界を楽しめるようにしていますので、どうか気軽にお読みください。
なお、構成の関係で各章のネタバレを多分に含みますので、あらかじめご了承ください。
■ストーリー概要
【第一幕:ゴミ拾いの少年とアーティファクト】
「【ゴミ漁り】のお前は、我が息子ではない。さっさと消え失せろ――――このゴミめ!」
――――アハト=エンシェント(第2話より)
15歳の成人を迎えた者が女神アーカーシャから固有の“術式”と適正な“職業”を『神授の儀』という儀式によって授けられる世界にて。
グランティアーゼ王国、エンシェント領に生まれた、騎士を志す少年ラムダ=エンシェントは『神授の儀』によって女神アーカーシャから『ゴミ漁り』と『ゴミ拾い』という屈辱的な術式と職業を与えられ、それを理由に代々国王に忠誠を誓う王立騎士を輩出し続けた名門エンシェント家の現当主である父親から勘当され、エンシェント領からの追放を命じられてしまった。
故郷を追い出され、騎士になる道すら閉ざされ、失意の暮れるラムダを待ち受けていたのはさらなる過酷な試練だった。隣町へと向かう道中の森の中でラムダを待ち受けていたのは、その場所では考えられない程に強力なモンスターだった。
必死の抵抗も虚しくラムダはモンスターとの戦闘で右眼と左腕を欠損し絶体絶命の窮地に追い込まれる。そんな絶望的な状況の中でラムダが拾ったのは古代文明の遺物『アーティファクト』。女神から与えられたハズレスキル『ゴミ拾い』でアーティファクトを扱う術を見出したラムダはモンスターを撃破。同時に、辿り着いた古代文明の方舟の中でラムダは出逢うのだった。自らの運命を切り開く古代文明の生き残り、“アーティファクトの少女”ノアと――――。
【第二幕:騎士の誓い】
「俺は君の“騎士”になる。たとえ誰も彼もが認めてくれなくても、女神までもが俺を見放したとしても、ノアが認めてくれるなら――――俺は“騎士”として君と共に」
――――ラムダ=エンシェント(第18話より)
ノアによる治療で右眼に代わる義眼、左腕に代わる義手、心臓の働きを補助する動力炉を移植されたラムダはノアを引き連れて隣町オトゥールへと到着。周囲からの『ゴミ漁り』への嘲笑に耐えながら冒険者ギルドに登録された冒険者となり、町外れに陣地を構えていたゴブリンたちの退治や、自身を見下す兄ゼクス=エンシェントを喧嘩で叩きのめすなどの目覚ましい功績を挙げて華々しいデビューを飾るのだった。
その夜、古代文明を滅ぼした人工知能の神アーカーシャにその真意を問い質したいとノアはラムダに伝え、ラムダは救われた恩からそんな彼女の“騎士”になる事を誓う。そうして、ラムダとノアは何処にいるのか分からない女神の元へと辿り着くべく、広大な世界を旅する事を決心するのだった。
【第三幕:再会と邂逅】
『勇者現れし時、彼岸より厄災は来る』
――――勇者にまつわる古い伝承
ラムダが冒険者となった翌日、彼を追って現れたエンシェント家のメイドである狐系亜人種の少女コレット=エピファネイアと合流したラムダたちは、エンシェント領にある小さな農村ラジアータで異変が起きている事を察知する。
ラジアータ村は壊滅し、生き残っていたのは数名の子どもたちや修道女と、ラムダの元婚約者であるアーカーシャ教団の神官オリビア=パルフェグラッセだけだった。ラジアータ村を滅ぼしたのは人間と敵対する魔王軍から、ラジアータ村に現れた“勇者”を暗殺する為に差し向けられた軍勢だったとオリビアは証言した。
ラムダは気が付いた。森の中で自分を襲ったモンスターや、陣地を構えていたゴブリンたちが魔王軍によって差し向けられた刺客であった事を。そして、今度は隣町オトゥールに魔王軍の最高幹部が向かっている事を知ったラムダはたった一人オトゥールへと向かうのだった。
【第四幕:魔王軍最高幹部リリエット=ルージュ】
「ラムダ、ラムダ、ラムダ……覚えたわ、あなたの名前……! 次に会う時を楽しみに待っていてね」
――――リリエット=ルージュ(第28話より)
オトゥールへと到着したラムダを待っていたのは、人々を守って重傷を負った兄ゼクスと、彼を倒した魔王軍最高幹部の“吸血淫魔”リリエット=ルージュ。
ラジアータ村での大虐殺を引き起こしたリリエットとラムダは激突、アーティファクトによる圧倒的な戦闘能力を獲得していたラムダはリリエットを見事討伐する事に成功。自慢の角と翼を片方ずつ斬り落とされたリリエットは不穏な再会を仄めかしつつも、ラムダによって制裁を加えられて行方不明になるのだった。
【第五幕:冒険の開幕、長い旅の始まり】
「俺は、父さんの為の騎士にはならない! 俺は――――ノアの騎士になるって決めたんだ! だから、俺は彼女の旅に付いて行く!!」
――――ラムダ=エンシェント(第29話より)
悪名高き魔王軍最高幹部リリエットを倒した事でオトゥールの人々はラムダを賞賛した。そして、騒ぎを聞きつけて現れたラムダの父アハト=エンシェントは手のひらを返してラムダを自慢の息子だと言い「戻ってこい」と伝えるのだった。
しかし、すでに“ノアの騎士”である事を決意したラムダは父の勧誘をはねつけ、冒険者としてノアに同行する事を宣言。詫びる父に背を向けてエンシェント領を後にするのだった。
こうして、ラムダはノアと共に長い旅へと歩き出し、同行してきたコレット、オリビアと共に次の目的地である“迷宮都市”エルロルに向けて出発するのだった。
行方不明になっているラジアータ村の“勇者”ミリアリア=リリーレッドを探すために。そして、世界の何処かにいる女神アーカーシャの元へと、ノアと共に辿り着くために――――。
■ 登場人物紹介
ラムダ=エンシェント
┗本作の主人公。代々王立騎士を輩出する名門貴族、エンシェント辺境伯家の第四子として生を受けた少年。幼い頃から騎士に憧れていたが、女神アーカーシャから『ゴミ拾い』という屈辱的な術式、『ゴミ漁り』という理想とはかけ離れた職業を与えられた上、当主である父親に勘当と追放を言い渡されてしまった。古代文明の超兵器『アーティファクト』を扱える唯一無二の存在。
ノア
┗遺跡の奥深くに隠されていた方舟の中でコールドスリープに就いていた少女で、人工知能の神アーカーシャによって滅ぼされた古代文明の生き残り。ラムダにアーティファクトを与え、膨大な知識でラムダを導く神秘的な少女。
コレット=エピファネイア
┗エンシェント家に仕えるメイドの一人で、狐系亜人種の少女。弟の身を案じたを案じたツヴァイ=エンシェントの計らいでラムダに同行する事になる。エンシェント家のメイドになる以前の記憶を失っている。
オリビア=パルフェグラッセ
┗アーカーシャ教団に属する神官の少女で、ラムダの元婚約者。元はエンシェント領で商いを営む商家の娘として、ラムダと婚姻関係を結んでいたが『神授の儀』で神官に命じられた事で婚約は破棄されてしまった。
リリエット=ルージュ
┗勇者暗殺の為に派遣された魔王軍の最高幹部で、淫魔と吸血鬼の混血である“吸血淫魔”の二つ名を持つ。ラムダと死闘を繰り広げるも右の翼と角を斬り落とされて敗北、ラムダに制裁を加えられて消息不明となった。
■ 章のテーマ・問い
【与えられた運命を君は受け入れるのか?】
┗騎士になる事を望んだラムダは、女神アーカーシャからゴミ漁りの烙印を押されてしまう。しかし、与えられた運命に納得できないラムダはノアに仕える“騎士”としての道を見出す。
それはラムダの精一杯の抗いなのか、それともただの現実逃避なのか。そして、ラムダの選択に答えを提示するのは果たして誰なのか。それはまだ分からない……。
■ 伏線と仕掛け
【伏線1:ラムダを迎える方舟の謎】
┗ノアの眠る方舟にラムダが近付いた瞬間、方舟はラムダを迎え入れるように自ら扉を開いていった。そして、父親によって『エンシェント』として名乗る事を禁じられた筈のラムダを、アーティファクトは『ラムダ=エンシェント』だとハッキリ認識していた。これが意味する事とは……?
【伏線2:彼岸より来たる厄災】
┗ラジアータ村で語られた勇者の伝承に伝えられし“彼岸より来たる厄災”。ラムダたちはそれを“魔王”だと考えた。果たしてその認識は合っているのか、それとも……?
【伏線3:ノアの秘密】
┗天真爛漫に振る舞う少女ノア。しかし、彼女は時折、知に富んだ言動し、まるで見守るような視線をラムダに向ける。出会ったばかりなのにラムダに妙に好意を示す彼女がその“仮面”に隠した真実とは一体……?
■ キャッチコピー
【絶望と再起から始まる物語】
┗ラムダは女神より残酷な運命を与えられ、騎士になれないという絶望の淵に立たされる。しかし、アーティファクトを拾い、ノアと出会った彼は自らの運命を切り開く為に立ち上がる。それは過酷な運命に屈さず、最後まで抗い続ける少年の物語の開幕の合図だった。
「与えられた運命を、君は受け入れますか?」
リコレクション第1章をお読みいただきありがとうございます。
次回はリコレクション第2弾【勇者事変】をお送りしますので引き続きよろしくお願い致しますm(_ _)m




