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ギャルと物々交換がはじまった日

 隣の席の金髪巨乳ギャル・(こがらし) 木葉(このは)は涙目になっていた。手も足もガタガタ震わせ――こちらを見た。


 なんで俺の方を見るかな。

 とはいえ、頼れる人もいないだろうな。


 ぼうっと観察していると(こがらし)から“お願い”された。


「あ、あの……微風(そよかぜ)くんだっけ?」


 隣の席同士になってもう三か月(・・・)も経つのに、名前も覚えてくれてないんだな。当然か、俺はなにかと影が薄いし、友達も少ない。仕方ないといえば仕方ない。



「ああ――『微風(そよかぜ) 風吹(ふぶき)』だよ」

「そうそう、風吹くんだ」


 いきなり名前呼びされるとは、さすがコミュ能力の高いギャルなだけある。


「なんの用?」

「あ、あたし……筆記用具を忘れちゃったの。貸してくんない!?」


「なるほど。う~ん、いいけど、タダってわけにはいかないな」

「え、なんで!?」

「諸事情あるんだ。だからそうだな」

「うん」



 俺は思案して良い方法がないか考えた。

 ああ、そうだ。

 ちょうど昨日、ゲームをしていた。


 その時に“物々交換”の取引をしたっけな。


 これだ!



「えっと、物々交換(・・・・)でどうかな

「ぶ、物々交換? 物と物を交換するヤツ?」

「そ。悪い話じゃないだろ。それで君は筆記用具が手に入る。俺は、(こがらし)さんのアイテムが手に入って得をするし」


「そ、そうなの? う~ん、そうね……って、ヤバ。もうテストはじまっちゃう。分かった。分かったわよ。あ、あたしの『パンツ』でいい!?」


「へ……?」


 予想外の返答に、俺は心臓がぶっ壊れるかと思った。


 え、パンツ?


 つまり、ギャルの……(こがらし)のパンツってこと!?



 めっちゃ欲しい。


 めちゃくちゃ欲しい!!



 こんなスタイル抜群の巨乳美人ギャルの(こがらし)のパンツとか、国宝級だぞ。いやいや、世界遺産レベル。


 多少のデメリットはあるが、それでも尚、価値がある。



「ど、どうかな」

「分かったよ、(こがらし)さん。『ペン』と『パンツ』で交換しよう」



 俺は、シャープペンを(こがらし)にあげた。


 これで俺に筆記用具はなくなった(・・・・・)


 そう、俺はたった一本しかなかったシャープペンをパンツと交換したのだ。



 よって!!




 ――『0点』を取ってしまった!!




 だが!!


 後悔はない!!


 ギャルのパンティー入手したから!!!



 * * *



 ――放課後。


 俺は隣の席の(こがらし)に話しかけた。



(こがらし)さん、約束だぞ」


「……はぁ、ここ普通はキモッって誉め言葉を返すところだけど、でも、取引は取引だもんね。それに風吹、あんた……さっきのテストの時、まったく手を動かしてなかったわよね」


「ああ、それが?」


「シャープペン、一本しかなかったんじゃない?」


「まあな。でも、そのおかげで(こがらし)さんは赤点取らずに済んだんだろ。なら、いいじゃないか」


「よくない。風吹くん0点だし……あたしのせいじゃん。パンツなんかと交換しなければ、赤点取らずに済んだよね」



 悲しそうに視線を落とす(こがらし)。まさか、そんな風に罪を感じてくれるとは。だけどなー、俺はそれでもパンツを選んだんだ。


 そう、あれは自らが提案した物々交換。めちゃくちゃ欲しかったし、だから後悔なんてない。



「そんなことより、約束は約束だろ」


「……っ! さ、さいてー…って、言いたいところだけど、おかげで助かったし……うぅ、もぉー! ほんっと、恥ずかしい!! やだやだ!」



 涙目で暴れられてもな。

 いやでも、(こがらし)って恥じらうとこんなに可愛いんだな。あんまり砕けた表情しないし、誰かと話しているところもそれほど見ない。


 いつもクールっぽい雰囲気だった。



「さあ、パンツを出せ。俺はペンをあげただろ」

「はぁ~、うん。脱ぐね」


 ついに観念した(こがらし)は、スカートの中に手を。パンツに手を引っ掛けて降ろしていった。


 わぁ……生々しい。



「……(こがらし)さん、えろいぞ」

「み、見ないでよ……。あぅ、もう死にそうなほど恥ずかしいっ」



 ついにパンツを脱ぐ(こがらし)は、俺の頭にソレを投げてきた。ハラリと落ちてくる黒い物体。体のぬくもりが残っているような。


 ついでに、(こがらし)は顔を真っ赤にして――逃走を図った。あ、逃げた。



 こうして俺は『ペン』と『パンツ』を物々交換したんだ。



 だが、この奇妙な物々交換は次の日も続いていくのだった。

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