幸せを見る魔理沙
キャラ名を使っているだけで、ほぼ本人達とは関係ありません。
「魔理沙魔理沙、次何処いこっか?」
そう言いながら目の前の少女は私の手を引っ張る。
私の名前は霧雨魔理沙。何の変哲もない高校生である。
そして目の前で私の手を引っ張っているのがフラン。
私の幼馴染で、小さい頃から仲の良い子だ。
とても元気がよく、外で遊びまわるのが好きな子で、私も今の様によく連れ出されている。
だが、それを不快に感じたことはなく、フランと遊ぶのは正直楽しい。
なのでこうやってフランに付き合っているのだ。
「あ、ねぇ魔理沙、次ゲームセンター行こうよ。最近行ってなかったし」
「ん、ゲームセンターか…確かに行ってないな」
「でしょでしょ、じゃあ行こう~!」
そう言ってフランは私の手を引っ張って、ゲームセンターの方へ走って行く。
「おいおい、そんなに急がなくてもゲームセンターは逃げないぜ?」
「ゲームセンターは逃げなくても時間はどんどん進んじゃう。歩いている時間があるなら私は早く魔理沙と遊びたいよ!だからほら、早く行こうよ」
「はぁ、分かった分かった」
(私は話しながらのんびり行くのも好きなんだがなぁ…)
そんな事を思いながらフランに引っ張られ、ゲームセンターへ向かうのだった。
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「あー、楽しかった!」
ゲームセンターを出ると、空は夕暮れでオレンジ色に染まっていた。
「ゲームセンターで遊びすぎちゃったね。もう夕方だよ」
フランはそう、何処か寂しそうな顔で言った。
「そうだな。まぁでも、また明日遊びに来ればいいだろ?」
「いいの?」
フランは目を輝かせてそう尋ねてくる。
「あぁ、もちろん」
「わーい!ありがとう魔理沙」
「ほら、だから今日はもう帰ろうぜ?」
「うん!ねぇねぇ魔理沙、明日は何しよっか?」
「うーん、そうだな、家でゲームでもするか?」
「うんうん!するする!したい!」
私達は、そんな会話をしながら帰路に着いた。
あぁ、こんな幸せで、楽しい時間がずっと続けばいいと、そう思いながら…。
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「今日の夕日は綺麗ね。貴方もそう思わない?魔理沙」
私は病院のベッドで眠り続ける魔理沙に語り掛ける。
当然、返事は返ってこない。
前までは毎日のように聞いていた。
鬱陶しいと思ったこともあった声。
それを私は、もう一週間も聞いていない。
寂しい…。
魔理沙がこの状態になってから気が付いた。
魔理沙は、私の大切な人だったということを。
「今更気が付いて、何になるのかしらね」
私はそんな事を呟く。
魔理沙がこの状態になった原因は、彼女の幼馴染、フランの死。
フランと魔理沙が遊びに行ったその日の帰り途中、魔理沙とフランは事故にあった。
魔理沙はなんとか軽傷で済んだが、フランの方は大怪我をし、病院に運ばれた頃にはもう、息を引き取っていた。
軽傷だった魔理沙はすぐに目を覚ましたが、フランが死んだことを知り、気を失ってしまった。
それから、一週間たった今でも、魔理沙は目を覚まさない。
それだけ、魔理沙にとって彼女の存在は大きかったのだろう。
「今日は、やけに楽しそうな顔をしてるわね。幸せな夢でも見てるのかしら?きっと、アンタは夢の中でフランと遊んでるのよね。アンタはあの子と遊ぶとき、いつもそうだったもの」
「そこに、私はいるのかしら?ねぇ、魔理沙…」
私は、そう言ってから立ち上がる。
「また来るわ…。今度来た時には、目が覚めていてくれると、助かるんだけどね」
そう言って私は、静かに病室を出て行った。
『次来た時には、魔理沙が目を覚ましていてくれますように』と、そう願いながら…。