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第3話 レイの本当の気持ち

ここから話が大きく動きます。

 昼食後、セーラへの注目は収まってきた。それでも休み時間の度に、何人かはセーラに話をしに来ていた。


 放課後になり、レイが先に生徒会室に行った後、シュウと先ほどの話の続きをしていた。

 

「ユウ、しばらくこの話はレイにしない方がいいよ」

「どうしてだ? 今日の放課後、普通に話そうと思っていたんだけど」

「レイはユウの事になるとすごく心配症だから、変に気を遣わせない方が良いと思う。あと、僕以外にも他の人とセーラの世界の話はしない方が良いと思う」

「そんなものなのか。わかった。シュウが言うのなら、レイにも周りにもこのことは黙っておくよ」 「僕で良ければいつでも相談に乗るから、遠慮なく連絡してね」

「ありがとう。レイに色々突っ込まれそうになっても、白状しないように頑張ります」

「レイも勘がいいところがあるから気を付けてね。じゃあ、僕はこれから部活だから、また明日!」

 

 シュウは部活の友達と共に教室を出た。


 それと同時に、セーラもようやく質問攻めから解放されたみたいで、話しかけてきた。


「久々に多勢の人と話したので疲れたわ。ユウ、あなた何か部活?というものはやってないの?」

「ああ、俺はどの部活にも入ってないね」

「では、この街を少し案内して欲しいのだけれど」

「そうだな、あちらの世界とは違う部分も多いから、少し見て回るか」

 

 先ほどからスマホが光っており、気になって見てみた。


「生徒会室に着いたけど、逃げちゃダメだからね」


「ユウ、先に仕事を始めておくから、早く来るのよ!」


 レイからのメッセージがいくつか来ていた。


「セーラ、この後、少し生徒会室で手伝わないとならないことがあるんだけど、終わるまで待っていてもらって良いかな?」

「構わないわ。図書館で、色々と調べ物をしておくわね」

「じゃあ、終わったら連絡するよ。でも、スマホとか持ってないよね?」

「あなたのスマホ?を見せてくれないかしら。先ほども何人かに同じことを聞かれたわ」


 スマホをセーラに渡した。左手に俺のスマホを持ち、何か呟いている。次の瞬間、セーラの右手が光りだし、その光の中から、俺のスマホと同じものが現われた。


「これがスマホというものね。あなたが手伝いをしている間に、スマホについても勉強しておくわ」

「驚いた! スマホの召喚なんていうものもできるんだ」

「そうね、そもそも私の魂以外はこの世界に来た後で、全て召喚したものよ。ユウのメッセージidを教えてくれないかしら?」


 セーラと連絡を取れるように設定を行い、俺はレイのもとに向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ユウ、おっそい。何やってたの!」


 生徒会室についた時には、約束の時間から20分程過ぎていた。レイは少し怒っているようだ。


「ごめんごめん、ちょっと、セーラと話してて」

「何? あの子ともう仲良くなったの? 本当にユウは、美人には見境が無いんだから。まあ良いわ。手伝って欲しい仕事なんだけど、今度の文化祭のパンフレットづくりなの。今日が締め切りで、他の生徒会の子達は皆用事があるから、今日は私一人でやらなければならないの。だから、どちらにしても手伝いを頼むつもりだったのよ」


 目の前に印刷したてのプリントの山がある。これを全て二つ折りにして、ホチキスで閉じるということだろう。結構時間かかりそうだな。


「レイ、これって何部あるの?」

「そうね、全部で500部はあるわね。今日までに終わらせないといけなかったんだけど、原稿自体が仕上がったのが昨日の夜なの」

「だから、今朝と昼休みは生徒会室にこもりっきりだったのか。それは大変だったな」

「そうなの。でも、これさえ仕上げれば、しばらくは生徒会の出番はないから、やっとゆっくりできるわ」

「オッケー、そういうことなら、さっさと終わらせちゃおうぜ」

「そうね、ありがとう。じゃあ私が閉じていくから、ユウはページ順にプリントを整理していってくれる?」


 レイの指示に従って、プリントを束ねていった。500部もあるから何時間かかるんだろうと思ったけど、レイが俺が来るまでに、効率よく作業できるように準備をしていてくれていたみたいだ。そのおかげで、スムーズに作業が進む。


「このペースで行けば、1時間も有れば終わりそうだな。この配置を考えたのはレイか? 作業が無駄なく進むようになっている。本当に昔から、何やらせてもできるよな。すごいと思う」

「ちょっ……急に褒めないでよ。あっ! ユウが変なこと言うから間違えて2部を1部として閉じちゃったじゃない!」

「ハハハッ。昔から、照れると動揺しやすいよな。そこもちっとも変わんないな」

「何よ、ユウのくせに偉そうに。別に皆の前ではこんなことないんだからね! ユウの前だけなんだから……」


 そういうと、レイはうつむいた。心なしか顔が赤くなっているように見える。


「どうしたんだ、下向いちゃって。そういえば、もう一つの用事ってなんのことだ?」

「別に下なんか向いていないわ! 文化祭の仕事がひと段落するから、ユウに、私の打ち上げに付き合ってもらおうかと思って」

「なるほどな。そういう用事なら、いつでも付き合うぞ。暇だからーーあっ」


 そう言っている途中で、セーラに街を案内する約束をしていたことを思い出した。


「あら、何か用事があるの? どうせアニメの続きが〜とか言うんでしょ? それなら私に付き合ってよ!」

「レイすまない、さっき、レイの仕事の手伝いを済ませたら、セーラに街に案内するって約束をしてしまったんだ。でも、レイの方が先約だから、事情を言って断るよ」


 レイは、手に持っているホチキスを床に落とし、茫然としていた。

 しばらくして、我に返りホチキスを拾った。 

 


「そ…そうなのね。確かに、この街に来たばかりだからわからないわよね。ましてや、イギリスから来たばかりだからしょうがないわね……」


 その顔は今にも何かが爆発しそうなのを、押さえているようであった。瞳が潤んでいるのが見て取れた。


「ユウは、セーラさんを案内してあげたら? わ…私は一人で駅前のカフェでも行くから」

「そう言うわけには。流石にレイに申し訳ないし。なんか、楽しみにしていたみたいだし」

「私のことは良いのよ。ユウだって、あんな美人に誘われたら着いていくのは当たり前なんだから。せっかくの良いチャンスだから、私に構わず案内してあげなさいよ。」

「いや、美人だからとか関係ないだろ。どうしちゃったんだ? 朝からレイらしくないぞ。何かあったなら話ーー」


 そこまで言いかけた時、レイは珍しく大声で叫んだ。


「もう良いから! 早くあの転校生のも所に行きなさいよ! パンフレット作りもあと少しだから、残りは自分でやるわ! とにかくこの部屋から出て行って!」


 そう言いながら、レイは俺を生徒会室から無理矢理追い出し、ドアを閉めた。


「おい、レイ! 開けろよ!」


 俺はドアを叩き、何度か呼びかけたが、返事はない。

 鍵はかかっているわけではないが、中に入って良いものかわからず、途方に暮れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何よバカ……。 人の気も知らないで。」


 レイは、そう言いながら残りのパンフレット作りを進めた。その頬には二つの細い光の筋が見えていた。


「セーラ、絶対に許さない。あいつは、我々の敵だ」


 レイは、どこかでそのような声がするのが聞こえた。


「何? この声? 誰かいるの?」


 レイはあたりを見回す。しかし、部屋の中にはレイ以外誰もいない。


「お前があの女を消してしまえばいいんだ。そうしないと、お前の大好きな男がとられれしまうぞ」


 誰もいないはずなのに、誰かがレイにそう語りかける。


「いや、そんなこと考えるわけないじゃない! 何を言っているのか分からないわ」


 レイは怖くなり、そう叫んだ。


「甘い奴だ。欲しいものは、どんなことをしてでも手を入れるべきだ。さもなくば、誰かにとられてしまうぞ」

「何を言っているの! 私はそんなことを望んでいるわけじゃない!」

「では、レイよ。なぜ泣いているのだ? セーラに、好きな男が取られそうだから、怖いんじゃないのか? 幼い頃から一緒だった、これからも一緒にいるはずだった。その男を、急に現れた女に取られそうで怯えているのではないか?」

「そんなことはないわ! ユウはそんなことはしない!」

「お前の気持ちはよくわかった。使えそうな奴だから、私の下僕(モノ)にしてやろう」

「あなた、何を言っているの? 誰があなたの下僕(モノ)なんて……イヤアアアアアアアアア」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 レイの叫び声が生徒会室の中からした。

 俺が部屋のドアを開けるとそこには、真っ黒な光に包まれたレイの姿があった。

 そして光が強くなり、レイの身体が浮いた。

 何とかして助けようと思い、レイに近づき、身体を手を掴もうとした。


「おい、レイ! 大丈夫か? 俺の手をつかむんだ!」


 レイの目はうつろで、身体が小刻みに震えている。


「ユウ……なの? 怖いよ……苦しいよ……」

「そうだ! どうしたんだ、何かあったのか? 大丈夫か? さあ、俺の手を……」

 レイがこちらに手を伸ばし、何とか手を取ることができた。


 「ユウ、温かい……私ずっとこんな風に、あなたと手を繋ぎたかった……。あなたと一緒に生きていきたかった」


 目はこちらを向いてはいないが、いつもの笑顔を見せてくれた。


 「レイ、何を言ってるんだ。今までも、これからもずっと……」

 「でも、もうダメみたい。ユウのことが……もっと一緒に……かった。小さい頃から、あ……こと……きだっ…た。」


 次の瞬間、黒い光がより強い光を発し、思わず眩しくて目をつぶってしまった。

 俺が握っていたレイの手の感覚がなくなっており、目を開けるとレイの姿はなかった。


 「おい、レイ!レイ!レェェェェェイ!」

 

 どういうことだ? レイが突然消えた? 黒い光?

 ダメだ、頭が全く回らない。そうだ、とにかくシュウに話をしなければ。


 シュウの部室まで走った。あいつなら、何か良い知恵をくれるはずだ。


 「ハァ……ハァ……。 失礼します。シュウを、主将を呼んでくれませんか? 友人のユウが来たと言ってくれれば分かるはずです。」


 道場の入り口の近くにいた、空手部の後輩らしき男子に話かけた。

 すると、その男の子がすぐにシュウを呼んでくれた。


 「やあ、ユウ。どうしたんだそんなに慌てて。部室に来るなんて珍しいね」


 シュウは、突然の部室への来訪にも冷静に答えてくれた。


 「シュウ、驚かないで聞いてくれ。レイが、突然消えたんだ!」


 シュウは不思議そうな顔をした。


 「レイって、誰のこと?」


第3話 ー完ー

 

 

 

 

 

 



 



 











今後は、なるべく毎日一話投稿していきます。

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