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第1話 勇者ユウ

本編始まります。

 眠い。非常に眠い。

 朝ごはんのパンと目玉焼き、そして、コーヒーを口に掻き込んだ。


「ふあ~あ。まだ眠い」

「ユウ、今夜は帰りが遅くなるから外で適当に済ませてきてくれない?」


 父親は、俺が幼いころに亡くなった。それ以来俺と母親の二人暮らしだ。俺を育てるために母親はかなり多忙な毎日を送っている。といっても、その道では有名な歴史小説の作家だから、自分のやりたいことをやっている。仕事が苦しいといった様子はない。取材で夜遅く帰ってくることも少なくない。確か、父親も同業だったらしい。


「りょーかい。母さん、最近働きすぎだから身体気を付けなよ」

「あら、うれしいこと言ってくれるわね。心配しなくても、まだまだ若いから全然平気よ!ユウこそ、寝ぼけて、電信柱にぶつからないように気を付けるのよ」

「そこまで寝ぼけてないよ。じゃあ、行ってきます」

「そう、さっきからあくびばかりしてるじゃない。いってらっしゃ……。あ、夕飯代持ってる?」

「大丈夫大丈夫!じゃ、また夜ね!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 大丈夫とは言ったものの、財布の中身を一応確認しておくか。

 うん、バイト代が入ったばかりだから、高級ディナーでも食べない限りは問題ないだろう。

 ……ん。何か見覚えのある金貨みたいなものが財布に。つい、最近見かけた気がすーーパァン!!!


「いってぇ」


 突然、背中を強く平手打ちされた。こんなことをするのは幼馴染のレイしかいない。

 レイは、幼稚園、小学校、中学校、高校、全て同じの腐れ縁。

 髪は肩にかかるくらいの長さで、きれいな黒髪ストレート。女子にしては高身長で、俗にいうモデル体型だ。小顔で、その瞳は見ていると吸い込まれそうになるくらい、澄んでいる。ものすごく美人というわけではないが、誰にでも愛想よく、多くの男子の憧れの存在である。

 今年の秋の生徒会選挙で、周りから推薦をされ、生徒会長になった。成績も常に校内トップテンに入り、万人が認める完璧な優等生。


「ユウ、おっはよー! なんか下向いて落ち込んでそうだから、私の元気を吹き込んであげたわ」


 レイは満面の笑みでそう言い放った。

 くそぅ、こいつ、笑うと意外と可愛い。いい笑顔だ。レイじゃなければときめいてしまう。

 そう、俺以外に対しては、本当に才色兼備なのだ。しかし、俺には小さいころから遠慮がないというか、わがままを言ってくるし、乱暴だ。幼馴染だから遠慮がないのだろうか。


「それは、どうもありがとうございました。落ち込んでるわけじゃなくて、財布の中身を確認してただけだよ」


 俺は、叩かれた背中をさすりながら、レイを見た。

 レイは悪びれる様子もなく、にやにやしながらこっちを見ている。こいつわざとやっているのか?


「ユウ、おはよう!レイ、さすがに今のは痛そうだったよ。風船が破裂したみたいな音がしてたし」


 このさわやかイケメンは、シュウ。レイと同様、幼稚園からの腐れ縁。

 長身、中性的な顔立ち、スポーツ万能。何をとっても非の打ちどころのないイケメン。

 しかも、小学校から空手の全国大会で何度も優勝している。成績は中の上で悪くない。

 性格も良く、誰にでも優しく、責任感も強い。もちろん、女子にもモテまくる。

 普通なら男子から敬遠されそうだが、根っからのお人よしで、本当に良いやつなのだ。その証拠に今でも、こんな俺と親友として仲良くしてくれている。

 

「シュウ、おはよう~ってか、助けてくれ~。レイがまた俺に暴力を~」

「まあまあ、ケンカするほど仲がいいって言うからね。レイはユウのことを気にしている証拠だよ。本人も、落ち込んでたから心配してたってーー」

「シュウ!変なこと言わないでよ。ユウの事なんか気にかけてないわ。ユウがボーっと突っ立ってるから」


 レイは少し慌てた様子でシュウの言葉をかき消しているように思えた。

 なんでこんなに慌てているんだ、普段は取り乱して喋るようなことはないのに。


「おいおい、生徒会長、俺はひどい扱いだな。まあ、昔からそうだから慣れてるけど」

「もともとはユウがよそ見して歩いていたせいよ! だから弁明の余地なし!」

「ハハハ、ユウもレイも仲直りね。そういえば、今日転校生が来るって来たけど」

「あら、私は初耳ね。ユウは知ってた?」


 おいおい、さっきの謝罪は一切なしかよ。まだ背中が疼く。


「俺も初耳だな。かわいい女の子だと良いなぁーーいててて」


 突然足に激痛が走る。レイが踏んでいる。いや、むしろ踏みにじっている。


「ユウのバカ! 私、生徒会室に用があるから先に行くからね。また教室で!」


 そう言い放ち、レイは走り去っていった。


「なんなんだ、レイのやつ。えらく情緒不安定だな。幼馴染じゃないと傷害罪で訴えてるところだ」

「まあまあ、ユウにも少しは責任があるから。ユウは鈍感だからなあ」

「俺って、そんなに鈍感なのか? そんなにレイを怒らす言葉を使ったかな」

「言葉というより、内容だよ。文脈?みたいなやつかな」

「状況的判断を間違えたみたいなやつかあ。じゃあ、後で一応レイに謝っておくか」

「なんて謝るの?」

「今日の夕飯代があるかどうかを、財布の中を見て確認してたんだ。言葉足らずでごめんって」

「うん。もうこの話は、レイにしない方がいいね」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 教室に着き、席に着いた。

 しばらく、レイに昨夜の夢の話をした。


「ハハハ、それはアニメの見過ぎだね。見過ぎというか、アニメの主人公になりたいという願望が、そのまま夢になっちゃった感じか。いやいや、僕も小学生までは勇者とかになりきっていたから、気持ちはわからなくもないよ。勇者は男子の憧れだもんね」

「そうだよな。って、俺は小学生レベルとでも言いたいのか! 確かに、寝る直前まで今はやりの異世界転生アニメ見てたからかもな。でも、妙にリアリティがあったから、夢なのにはっきり覚えているんだよね。その出会った女の子がセーラって言って、超絶美少女だったんだよ。銀髪で青い目でさ、海外ドラマに出てきそうな美人だった」


 ドンッ!!

 レイが自分の鞄を座っている俺の肩にわざとぶつけて来た。


「美人がどうしたって、ユウ!」


 そう言いながら、レイは俺の右隣の席に座った。シュウが俺の前の席で、レイが俺の右隣の席。先週の席替えでこの配置になった。どこまで腐れ縁なんだよ、全く。

 

「あ、レイ、生徒会の用事時間かかったね。ユウがさっきのこと謝りたいって」


 え、俺そんなこと一言も言ってないけど。

 シュウの眼が俺に謝れと訴えている。


「レイ、さっきはゴメン。言い過ぎた」


 よくわからんが謝っておこう。それが無難そうだ。


「ユウが、そんなに私への許しを請うなら許してあげるわ。でも、そうね、許してあげる代わりに放課後、生徒会の仕事手伝って」

「え、早く帰ってアニメの続きを見ようと……」


 せっかくの帰宅部の特権を奪われてしまう。これは、帰宅部の部活動の妨害ではないのか? 生徒会会長としてよろしくない振舞だ。

 そんな心の中をを見透かしているかのように、レイが睨む。


「はい。喜んでお手伝いさせていただきます」


 今日は厄日だ。


「それでよろしい。あと仕事終わりに、もう一件の用事を付き合ってもらうからね。あと、夜中までアニメの見過ぎはだめよ! 目にクマができているわよ。」


 さっきの話聞いてたのか。でも、不思議と今度はなぜか上機嫌な様子である。


「こいつ、本当に何考えているかわからないな」

「何か言ったかしら?」

「いえ、何でもないです」


 そんなやり取りをしていたら、先生が教壇に現われ、ホームルームが始まった。


「みなさん席について下さい。ホームルームを始める前に転校生を紹介します。では、入ってきてください。」


 そうか、さっき転校生がやってくるとシュウが言っていたな……


 すると、教室のドアを開け、美しい銀髪をなびかせながら、颯爽と女の子が入ってきた。


 セーラに似ている。


 教室の一番後ろの席だから、ハッキリとはわからないけれども、昨日の夢に出てきた彼女にとてもよく似ている。

 周りの生徒達も、あまりの美しさに息を飲んでいる。


「では、自己紹介をお願いします」

「はい。先生ありがとうございます」


 そういうと先生は教壇から降り、彼女が教壇の中央にやってきた。


「みなさん初めまして。私は姫野セーラと申します。最近まで父親の仕事の関係で、イギリスのハイスクールに通っていました。日本の文化は知識としては知っていますが、実際に暮らすのは初めてです。色々と至らない点があるかもしれませんが、早く日本の生活に馴染みたいと思っていますので、仲良くしていただければありがたいです。よろしくお願います。」

 

 完璧な挨拶だ。むしろ、高校生レベルを超えている。社会人のおっさんかよ。と突っ込みを入れたくなるレベルだ。自然と拍手が起こった。

 拍手が鳴りやむと、先生が教壇に上がり、セーラの隣に立った。


「とても素晴らしい自己紹介でしたね。では、セーラさん。早速あなたの席なのですが、あいにく、教室の一番後ろの窓際の席しか余っていないのですが、そこでも良いですか?」

「はい、問題ありません」

「では、そちらに移動してください」


 おいおい、その席って俺の左隣の席じゃないか。

 そうかまだ夢の続きということか。それならば、早く起きないとーー


 そんなことを思っているうちに、転校生はこちらに近づいてきた。

 そして周りの生徒に軽く会釈をしながら、席に着いた。

 この少女は、昨日の夢に出てきた少女だ。俺は確信した。


「では、今日の連絡事項はーー」


 セーラが席に着いたのを確認し、先生はホームルームを続けた。


 皆の注意が先生に向けられ始めたのを確認した後、セーラが俺の方に顔を向け、じっと見つめてきた。そして、他の人に気づかれないように、そっとささやいた。


「これからもよろしくね。勇者様」



第1話 ー完ー















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