序章 夢で出会った美少女セーラ
初投稿です!
「最近こういうアニメ多いな」
ベッドの上で寝転がりながらスマホを持ち上げて言った。
~~『なんのとりえもなかった俺が、異世界転生してチート能力で英雄になった件について』~~
真っ暗な部屋の中で、オープニングが流れ、アニメのタイトルの文字が浮かんでいる。
「まあ確かに、これ系のアニメはいいストレス解消になるもんな。って、もう気づいたら二時じゃん。寝ないと明日も学校だった。この話の続きをみたいけど寝るか」
そんなことを呟いていると、自然と眠りに落ちていた。
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「眩しっ!」
目を開けると、そこは見慣れない街であった。
多くの人々が行き交っている。人?いや、なんだあれは?
大きな荷車を引いてやってくる動物がいる。オオトカゲか?恐竜か?
しかも道路も石畳だし、みんなの服装、街並みもおかしい。
「一体ここはどこなんだ?」
少しこの街を散策してみることにした。
なるほど、だんだんわかってきた。ここは夢の世界だな。
寝る前に異世界転生ものなんて見てたから、夢に出てきてしまったんだ。
俺も気づけば騎士みたいな恰好をしている。意外と様になっているな。
「うーん、これからどうしたものか。よくわからないこの世界を見て周るか」
運よく金貨らしきものを持っているから、食べ物屋でも入ってみよう。
人気の店なのか、店内は人で混み合い、人々は思い思いにそれぞれのテーブルで騒いでいた。
「いらっしゃい、勇者さん」
ははあ、俺はこの世界では勇者という設定か。本当に夢とは便利だな。
「こんにちは、マスター。おすすめ何?」
なんと。言葉は通じるみたいだ! どこまでご都合主義なんだこの夢は。
「今朝産みたてのコカトリスの卵とエルフ農場のミルクで作ったミルクセーキだね! 最近は、例の件でなかなかミルクが手に入らなくてね。コカトリスはうちの嫁が飼育してるんだ。どうだい?」
コカトリスにエルフ……。いかにも、異世界という感じだ。
「じゃあ、マスター。それを頼むよ! お代はこれで足りるかい?」
そう言ってポケットにあった金貨を差し出す。
「勇者さん、冗談はいけないよ。これは王家に伝わる伝説の金貨じゃないかい? こんな大事なものとミルクセーキを交換なんざ、悪い冗談はよしてくれ。そうだ! 何か武勇伝の一つでも語ってくれるのなら、お代はいらないよ。俺だけじゃなく、子供たちも呼んでくるから少……」
おいおい、この金貨使えないのかよ。てかマスター、俺の武勇伝を聞きたいとか言い出しちゃってるし、どうしよう。この世界の事全然わからないし、武勇伝のでっちあげようもないな。
そう考えあぐねていると、突然横から細い腕が伸び、銅貨を差し出した。
「マスター、勇者様をここに呼び出したのは私なの。あちらの人気のないテーブルを使わせてもらうわね。あと私にも同じものを1つ、これがお代よ。足りるかしら?」
驚いて隣を見てみると、フードを被り目以外をほとんど隠した青い瞳の少女が立っていた。
「あ、あなたは……。セ、セーラさま!! どうしてこんなと……」
「私がここに来たことは、秘密にしておいていただけないかしら?」
どうしたんだろう、マスターがひどく慌てている。とりあえず助かった。礼を言わないとな。
「どうもありがとう。実は……」
「あなた、別の世界から来た人間ですね? あちらの席で少し話をしましょう。」
そう言って、周りから少し離れた、人気のないテーブルに連れて行かれた。
どうして俺がこの世界の住人じゃないと分かったんだ? 服装も、言葉もこの世界になじんでいるはずだし。外見もさして変わりはない。むしろこの世界の方が、多種多様な生き物が共存している気もする。
まあ、深く考えてもしょうがない。夢だからそんなものなのか。
「私の名前はセーラ。あなたをこの世界に召喚した人間よ」
そういいながら、少女はフードを取った。
その瞬間、長い髪が肩のあたりまで落ちた。白というか銀色というか、とてもきれいな髪だ。さらに深く透き通るような青色の眼。雪のように白く透き通った肌に美しい顔立ち。今まで見たことのない程の美しさだ。
「その金貨を媒介にして、私があなたを召喚したの。見覚えはないかしら? あなたの持ち物のはずよ」
俺は、子供の頃に亡くなった父さんから、金貨を貰ったということを思い出した。
「ともかく、あなたは勇者としてこの世界を救ってほしいの。そのためには……って、私の話を聞いているの?」
セーラという少女の話の突然さに、しばらく頭が追い付いていかなかった。
「ごめん、あまりに現実離れした話だから、頭がついていかなかったんだ。いやいや、これはそもそも俺の夢でしょ? 召喚なんてアニメでもあるまいし」
「アニメとは何の事かしら? そちらの世界の本かなにか? これがあなたの夢の世界である事は間違いないわね」
「確かにこの設定だと、テレビやスマホなんてなさそうだな。セーラさん…だったっけ? あなたは魔法とか使えたりするの?」
「セーラでいいわ。私は召喚術師だから、魔法は使えないわね。あなたも勇者だから魔法は使えない。そのうち、魔法を使える仲間も作らなければならないのだけれど」
「魔法は使えないのか。残念だな。じゃあ、俺は何ができるの?」
「その話は、また今度させて貰うわ。ところで、腕についているログを見てもらえる?」
「ログって……。この砂時計の事?もうすぐ、砂が落ち切りそうだけど」
「わかったわ。私の予想通り、そろそろ終わりの時間ね。初めての夢想転生だから時間的にはこんなものかしら。続きはそちらの世界で話すわね」
「え、どういう事?このログの砂時計が落ち切るとどうなる……」
そう言っているうちに意識が遠のいていった。
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~~♪
スマホからアラームに設定している音楽が流れている。やっぱり夢だったみたいだ。
七時か。
さあ学校に行かなければ。
しかし、俺はその日の学校で衝撃を受けることになる。
序章 ー完ー
序章は短めですが、本編(第1章以降)は、もう少し長いです。