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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生  作者: 暮伊豆


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87/90

二人きりの大晦日 後編

「え……せんせぇここって……」


「もちろん事務所だが?」


そう。清は事務所に帰ってきただけだ。


「べ、別に問題ないですよね! ここにも色々揃ってますもんね!」


「そうだな。不自由はしないと思うぞ。」


「ベッドはなくてもソファーがありますもんね!」


「そりゃあるけどさ。」


いつものようにドアを開けて中に入る清。慌てて後を追う葉子。


「そっちに座るといい。」


清が指し示したのは事務机。普段は清が使っている机だった。そして自分はその横に立つ。


「へ? まさかのOLプレイですか? 100年ぐらい前には流行ってたって聞いたことがありますけど。」


なお、現在OLなどという言葉はない。葉子が無駄に物知りなだけである。


「いや、だから授業をするだけだが?」


そしてついに、清の手元の紙袋が開けられた。中から何が出てくるか目を皿にして見つめる葉子。鼻息もはぁはぁと荒くなっている。


『入試対策最高水準激難(エクストリームハード)問題集』


「あ、あの、せんせぇ……」


「ん? どうかしたか?」


「これ、何ですか?」


「見ての通りだ。あの本屋にあった中で1番難易度の高いのを選んできた。これで朝までハードに授業をするぞ。」


葉子の視線が清の顔と問題集を何度も往復する。そしてとうとう……


「うわぁーーーん! せんせぇのいけずー! やらずぶったくりー! へたれー! 甲斐性なしー!」


「何を言っているんだ? 最初から授業をすると言ったはずだぞ?」


「それでもぉー! それでもせんせぇならもしかして私の期待に応えてくれるかもって思ったんですもぉーーん! やだやだやだぁーー! こんな聖なる夜に勉強するなんてやだやだやだぁーー!」


別に大晦日は聖なる夜ではない。葉子にとっては清と過ごすなら性なる夜、または精なる夜となるかも知れないが。期待するのは自由である。


「なら帰るか? 今なら送っていくこともできるが?」


「やだやだやだぁー! 絶対帰らないもん! せんせぇと過ごすんだもん! それに帰っても鍵閉めてるから入れてやらないって言われたし……」


あの親にしてこの子あり……なんて言葉が清の頭をよぎった。


「なら大人しく勉強してろ。ご褒美は用意してあるから。」


「ご! ご褒美ですか! それはもしやいい点とったらせんせぇが何でも言うこと聞いてくれる的なアレですか! ソレですよね! ナニですよね! 間違いないですよね! 何でも私の言うがままに望みを叶えてくれるんですよね! 欲望の赴くままに! ありがとうございます! 分かりました私がんばります!」


「あ、あー……」


諦め顔で問題集を開く清だった。


『問1』

現在火星航路に使用されているスペースシャトルには液体四重水素と液体五重酸素を太陽光のエターナルマテリアル化現象により、超反応させることで、旧来のロケットより数十倍もの推進力を得ることが知られている。

このことについて以下の問いに答えよ。


(1)問題文にある「超反応」を「エクストリーム」「ヘブンフラッシュ」の語を用いて具体的に説明せよ。


(2)「エターナルマテリアル化現象」を発見したのは日本航空宇宙局、通称HASAであるが、そのきっかけとなった現象を答えよ。


(3)液体四重水素と液体五重酸素は太陽光のエターナルマテリアル化現象によりそれぞれどのような変化を起こすか。化学反応式を書け。




清は目眩がしていた。数学ならば自信があったのだが開いたページは理科。それも清が学んだ10年前とは全く別物になっていたのだから。


「せんせぇー、これで合ってますかぁー?」


さらさらと回答を書き込んだ葉子。慌てて解答ページをめくる清。


「ああ、正解だ。じゃ、次行こうか。」




こうして清にはさっぱり分からない問題集を進めること二時間。事務所の入り口が開いた。誰か来たらしい。


「よし、休憩しようか。ご褒美が届いたぞ。」


「ご褒美が? 届いた? えっ? でもせんせぇはここにいるのに……休憩は二時間ですか?」


「別にご褒美も休憩もなしでいいんだが?」


「ああっ! 嘘です嘘です冗談ですぅ! 休憩したいっ! ご褒美欲しいですぅ!」


「毎度ぉー。富士吉(ふじよし)でーす!」


「待ってたよ。そこのテーブルに並べてくれるかな。」


「へいっ!」


黒いベストに蝶ネクタイをしめた配達員は手際よく料理を並べていった。


「せ、せんせぇこれ!」


「ああ。普段から勉強に修行に励んでいるご褒美だ。好きなだけ食べるといい。」


それは刺身の舟盛りだった。それだけではない。フグ刺しに唐揚げ、白子蒸し。おまけにヒレ酒とフグ尽くしもある。


「蕎麦はこっちに置いときやすんで!」


「ああ。いつもありがとう。これ、少し早いけどお年玉。みんなで分けてくれるかな。」


「へい先生! 毎度ありがとうございやす!」


こうして檜のテーブルは料理で埋め尽くされた。


「せんせぇそれ、何ですかぁ?」


「これ? フグのヒレ酒だよ。大好きでね。」


「へぇー、私も飲んでみたいですぅー!」


「もちろんだめ。これにしときな。ブツランス産のワインだから。」


「ワイン!? い、いいんですか!? はっ! 分かりました! 私を酔わせてあんなことこんなことする気ですね! もちろんオッケーですとも! むしろもうすでにせんせぇに酔ってますからいつでもウェルカムです!」


「飲まないのか?」


「飲みます飲みますって! あれ……? せんせぇこれ……アルコール度数0.01%って書いてありますけど……」


清が舌打ちをしたのは気のせいだろうか。ブツランス語しか書いてないラベルを葉子が読むとは。


「あっちの子供がお祝いに飲むものだからな。それともフェンタグレープにしとくか?」


「こ、子供……で、でもせんせぇがせっかく用意してくれたんですから! それに今夜は性夜ですし!」


コルクを抜き、シャンパングラスに葡萄ジュースを注ぐ清。これはワイン用の葡萄をジュースにしたものだったりする。少しだけ大人扱いをしてやろうかと考えた結果だったりする。


「せんせぇには私が注ぎます! ささ、もう一杯!」


清はお猪口。(おぎ)焼きの逸品だ。


「これが一杯目だけどな。」


「さすがせんせぇ! これは一本とられちゃいましたね!」


「まだ飲んでないのに酔ってるの?」


「当たり前じゃないですか! せんせぇに酔ってますって! はい! 今夜にかんぱーい!」


「乾杯。」


こうして二人は大晦日が終わるまで酒に料理に舌鼓を打つことになる。清に酒が入ったせいで勉強の監督をするのが面倒になったからだ。

模範解答


問1


超反応とは、マテリアル同士のパッションをそれぞれエクストリームさせる事により、そのポテンシャルをCLIMAXにまでアップさせヘブンフラッシュイズムなEXPLOSIONを意図的に発生させるものである。


問2


21世紀初頭のタイラーグループの支援学校に通っていたエクストリーム次元物理学者であるマーサ・ヘブンフラッシュ・サーキがかねてより、後世において発見される事を予言していた物質同士の結び付き……つまり愛の現象、通称『エクフラージュ現象』。HASAの中にマーサ教授の信奉者が居たためにこの現象を隅々まで研究され、その末に奇跡的に『エターナルマテリアル化現象』は発見されました。


問3


HeaVeN2H2+fLO2aCh=E2xTHrE2OmE


解答作成サカキショーゴ氏

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― 新着の感想 ―
[一言] エクフラキターーー!!!!(大歓喜) 使っていただいてありがとうございます!!w
[一言] ま、葉子ちゃんなら勉強大丈夫っしょ( ´∀` ) 問1 超反応とは、マテリアル同士のパッションをそれぞれエクストリームさせる事により、そのポテンシャルをCLIMAXにまでアップさせヘブン…
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