凶骨牛ラーメンへの道
「あの、せんせぇ……休憩できる所ってどこなんですか?」
車を走らせる清。今日は自動運転の方に乗って来た。そのため、座席を倒して目を閉じている始末だ。
「ああ、ラーメン屋だ。さっきラーメンが食べたいって言ったろ?」
「え、ええ言いましたけどぉ。龍骨鬼ラーメンはやってないんでしょお? だから休憩できるところに行くんですよね? フリータイムですか?」
「言ってなかったが月本兄弟は三人いてな。龍骨鬼ラーメンを出しているのが三男の風魔さんだ。今から行くのは次男さんの店だ。」
フリータイム発言については安定のスルーである。
「へぇー! 何ラーメンなんですか!? 龍骨鬼ラーメンはすごく美味しかったですけど!」
「凶骨牛ラーメンだ。龍骨鬼ラーメンにくらべるとあっさりしてるが悪くないな。」
「へぇー牛さんなんですかぁ。豚骨はよく聞きますけど牛の骨って意外ですぅ。あ、じゃあその後で休憩できる所に行くんですね!?」
「ああ、休憩できるはどうかは分からんが、とりあえず食べてから考えるさ。あそこには面白い場所があるからな。」
「面白い場所ですか!? 回転するベッドとか紫に光る照明とかあるんですか!?」
「何百年前の話をしてるんだよ……着くまで寝かせてくれ……」
「もぉーせんせぇったら。私の添い寝が必要なんですよね? 分かってますって。ほら、私の胸で眠ってくれていいんですよ?」
「どこにあるんだよ……」
清の好みは巨乳美人。清楚か派手かはともかく、巨乳でなおかつ美人でなければならない。つまり、まだ中学三年生でしかない葉子ではとても太刀打ちできない現実があった。
「もぉーー! せんせぇのバカぁ! 私だっていつかはきっと大きくなるんですから!」
「あー、じゃあその時に頼む……」
そう言って意識を手放した清。当然だ。限界まで霊力を振り絞り、邪魔口の地を大陸の魔の手から守り抜いたのだから。
「もぉー! でもいいもん! ここは密室なんだから! せんせぇの寝顔をじぃーーっと見つめてやるんだから! そんで思わず顔を近付けすぎちゃってせんせぇの匂いなんか嗅いだりしちゃったりして! そしたらそしたら! 思いがけずせんせぇの顔がこっち向いちゃって! 事故! そう! 事故がおこって私とせんせぇは熱いベーゼを……!」
葉子の思惑とは裏腹に、清は一度も左を向くことはなかった。チャンスを今か今かと待つ葉子には不憫なことだが、車は目的地に到着した。
「うんっ、ん……ふぅ……着いたか……」
「ぐーぐー、すやすや、ずーずー……げへへぇ……」
清は目覚めたが、葉子は熟睡していた。これ幸いと清も再び座席に横になった。できることなら自宅に帰りたい清ではあったが、葉子がいるためそれも敵わない。仕方なく葉子をラーメン屋に連れてはきたが、この後どうするべきか清は途方に暮れていた。まさか母親から帰ってくるなと言われていたとは……
最悪の場合は事務所に泊まらせて、自分は自宅に帰ればいい。
そのようなことを考えながらも……清は再び意識を手放した……