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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生  作者: 暮伊豆


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80/90

大陸からの刺客

『テストで90点を取った子供に「100点じゃなきゃダメ!もっと上を目指さなきゃダメ!」と叱りつけるような風潮を感じる、今日この頃』を書かれております『仙道アリマサ』さんより16件目のレビューをいただきました!

ありがとうございます!

邪魔口大神宮の宮司が開催の祝詞を唱える。


『掛けまくも(かしこ)

伊邪那岐(いざなぎ)大神(おおかみ)

西狂(さいきょう)長門は邪魔口の

渡海の高天原(たかまがはら)

(みそ)(はら)給ひ(たまい)し時に

()()せる

祓戸(はらえど)大神等(おおかみたち)

諸々(もろもろ)禍事(まがごと)(けがれ)

()らむをば

祓い給ひ 清め給へと(まを)す事を

聞こし()せと

(かしこ)(かしこ)(まを)す…………』




「せんせぇ……あれ何て言ったんですか?」


葉子が小声で訊ねている。


「ああ、神様に今年の悪い事を取り除いてくれるようお願いしたんだよ。祓い屋になりたかったらあんなのをすらすら言えるようにならないとな。」


「が、がんばります……」


二人が話している間にも儀式は進む。




そして儀式は、清が祝詞をあげるはずだった場面までやってきた。壇上に立ったのは……見知らぬ若い男だった。男らしさで比べるなら清に軍配が上がるだろう。だが、その男は怪しいまでの艶を放っていた。男女問わず惑わせてしまうような官能的な艶を。


高天原(たかまのはら)神留(かむづま)()す 

(すめらが)(むつ)(かむ)()() (かむ)()()(みこと)()ちて 

八百万神等(やほよろづのかみたち)神集(かむつど)へに(つど)(たま)ひ 

神議(かむはら)りに(はか)(たま)ひて……………………』


やや高い声。その声には、いくら隠そうとしても隠しきれないほどの色気が乗っている。だが、そもそもその男は隠そうなどと少しも思ってないらしい。淀みなく祝詞は続く。


『……………………(はら)へ給ひ清め給ふ事を 

(あま)つ神 (くに)つ神

八百万(やほよろづ)神等共(かみたちとも)

聞こし()せと(まを)す…………』


場内を甘い空気が支配する。

参加者のほとんどが夢うつつ。


「せんせぇ……なんだかいい気分になってきました……寝ていいですかぁ? 私の寝込みを襲ってもいいですから……」


「ふーん、そういうことか。俺の目の前で……えらく舐めた真似してくれんじゃん……」


「せんせぇ……舐めてくれるんですかぁ? 嬉しいですぅ……」


「いいから寝とけ。おやすみ。」


「あぁん、せんせぇ……もっと耳元で囁いてくださ……」


倒れ込む葉子を優しく地面に横たえた清。




妖艶な男の祝詞が続く。しかし、その頃にはもう会場で目を覚ましているのは清一人だけとなっていた。


(かしこ)み畏み(まを)すぅ……」


祝詞をあげ終えて、一息つくこともなく男はふわりと清の前に舞い降りた。


「ようこそ。天才霊能者唐沢和宏の弟子よ。きっと来てくれると信じていたよ。」


邪魔口(やまぐち)で……俺の目の前でえらく舐めた真似をしてくれたな……喧嘩売ってるんだよな?」


清にしては好戦的な態度のようだが……


「ふふっ……下賤な田舎巫覡(ふげき)が……師ほどの才能もなく、ただコネクションだけで生き残ってきた分際で大きな口を。私に勝てるかな?」


「才能があっても弱い奴よりましさ。大陸を追われた落ちこぼれ道士(タオシー)よりなぁ?」


(シャ)ァァ!」


突如懐から細い針を投げられ、清は一瞬狼狽するも素早く黒棒で叩き落とした。


「いやー悪い悪い。本当のこと言っちまって悪かったな。お前、日本(ひのもと)語をよく勉強してるな。褒めてやるよ。」


混蛋(フンダン)!」


美しい顔を悪鬼のように歪めて針を飛ばす大陸の男。


「鋭っ!」


清お得意の結界を張り、針をことごとく防いでいる。


愚蠢(ユーチュン)!」


埒があかないと見たのか、背中から青龍刀を抜き、斬りかかってくる。黒棒を片手に相対する清。


数合ほどの打ち合い。明らかに清が劣勢だ。


「くくく、あれだけ大口を叩いておきながら弱い弱い。やはり才能がないってのは辛いようだね?」


「だから言ってるだろ! 才能なんぞなくても勝ちゃあいいんだよ! ほぉら足元注意だぜ?」


「その手には乗らなっ何ぃ!?」


男の足元には異形の魑魅魍魎が群がっていた。 いや、群がるだけではない。ぞわぞわと足を登ろうとしている。


『くうぁっ! 伏魔神呪(フーモシェンジョ)……「おっと、させないぜ?」


印を組もうとした男の片手を清が黒棒で強打する。どう見ても指が折れている。清の目の前で隙を晒したばっかりに……


贱货(ジィェンフォ)ォォォ!」


「だめだめ。今度は上を見てみな?」


弾けるように上を見上げた男だが……清は無防備になった喉に容赦なく黒棒を突き入れた。


「ガッフゥオッ……」


終わりだ。


倒れた男に縄をかけた上に何やら呪術を施している。


「あー疲れた……くっそ、何でこいつが邪魔口にいるんだよ……」


どうやら清は男のことを知っているらしい。


ぶつくさ言いながらも清は携帯を取り出して電話をかけ……ようとしてやめた。地面に正座をして足元の魑魅魍魎に話しかけた。


「先程は助かりました。また近いうちにお礼に伺いますので鬼村さんにはよろしくお伝えください。」


「ええぇやろぉぉ……」

「わすれんなぁぁ……」

「はらいやぁぁ……」

「またのぉぉ……」


数々の魑魅魍魎が地面に溶けるように消えていった。彼らは鬼村が清のために遣わせたのだろうか。それとももっと何か別の目的があったのだろうか。

だが、いずれにせよ清が助かったことに変わりはない。彼らの助力がなければ……おそらく勝てなかったはずなのだから。


そして、改めて携帯を取り出して電話をかけた。

相手は……


「もしもし。」


「師匠、大変なことになりましたよ! 今って邪魔口大神宮の近くにいますか?」


「ああ、もう20分もすれば着く。もっと早く行くつもりだったんだが昨夜飲みすぎてなぁ……」


20分と聞いて絶望的な表情を浮かべる清。


「分かりました。とにかく早く来てくださいよ! それまで俺が何とかしますけど! 師匠に仕上げをしてもらわないとマジでヤバいですよ!」


「分かった。それまでどうにかしろ。」


電話を切り、横になっている葉子を横抱きにして、先ほど男が祝詞を唱えていた場所まで近寄った。関係者が目覚める気配はない。


「くそ、なんで俺がこんなことを……」


清は葉子をそこら辺に下ろして祝詞を唱え始めた。


『掛けまくも(かしこ)

伊邪那岐(いざなぎ)大神(おおかみ)

西狂(さいきょう)長門は邪魔口の

渡海の高天原(たかまがはら)

(みそ)(はら)給ひ(たまい)し時に…………』

『テストで90点を取った子供に「100点じゃなきゃダメ!もっと上を目指さなきゃダメ!」と叱りつけるような風潮を感じる、今日この頃』


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもは葉子ちゃんに釘付けになっていますが、早々に寝てしまったので、あらためて清くん、カッコいいと思うのでした。 それにしても、これからどうなるのだろう……!
2021/04/12 02:53 退会済み
管理
[良い点] おおお、さすが清! ピンチにあってもクールな状況判断で逆転! かっちょいいぜ! つーか、どんどんと話がおっきくなってきましたね! 面白いからいいですけどね!
[一言] うげぇ。 もしかして日本を護る結界的なモノに孔をあける呪術的な仕掛けをされたりしたのかな? だんだんキナ臭くなってきましたねー( ̄▽ ̄;)
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