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友人、大介

「おお、先輩。またやられに来たんか?」


友人、大介は即答するが……


「大介、黙ってろ。お前は手を出すな。口も開くな。」


「なんじゃ清? お前が……」


「じゃねーとこの後のバー、お前の奢りにするぞ。」


「ち、任せるわ。」


目の前で隙だらけの姿を見せているのに元番長達は殴りかかってこない。つまりその程度の奴らなのだ。


「てめー阿倍野かよぉ。調子コイたスーツ着やがってよぉ?」

「強い強い大介ちゃん無しでどうするんでちゅかぁ?」

「ははぁ〜ん、そういやお前羽振りがええらしいのぉ? ええでぇ? 金で解決といくかぁ?」


「え? 先輩ら金が欲しいの? いくら? 貸そうか? 貧乏って辛いよな。いくら欲しい? 100円? 200円?」


「お、おい清……」


清はかなり怒っていた。久々の友との再会で楽しく盛り上がっていたところに水を差されたからだ。今からバーで語り合う予定だったのに。


「てめぇ! 舐めんじゃねぇぞ!」

「遷都で泡銭掴んだんはてめぇだけじゃねぇんじゃ!」

「ニコニコ商会舐めてっとブチ殺しゃげたるぞ?」


「え? 先輩らニコニコ商会? つくづく今日は縁がある日だな。大介には会えるし。」


「おい清……キモいぞ……」


確かに気持ち悪い。


「ニコニコ商会知ってんならよぉ財布ごと置いてけや?」

「本当は知らねーんじゃねぇんか? 怖ぁいお兄さんが来るぜぇ?」

「ギャハハぁ! ついでにそのスーツも脱いでいけや? そしたら勘弁してやるぜ?」


いきなり携帯を取り出し電話をかける清。相手はもちろん……


「夜分に恐れ入ります。阿倍野です。ええ、実はですね、ニコニコ商会を名乗る不審者に絡まれておりまして、ええ、そうです。助けていただけないものかと。ええ、そうなんです。えっと、名前は……確か……安西、本多、丹野だったかと……」


電話を3人組に手渡す清。何ハッタリかましてんだと言いたそうな表情で電話を受け取る真ん中の男、本多。


「あー? カラスマ? 誰よテメー? ニコニコ商会騙ってんじゃねぇ……ぞ……」


威勢良く電話に出たはいいが、瞬く間に意気消沈している。植物の成長フィルムを高速で逆再生しているかのようだ。


「シ、シンさんっすか!? お、俺です本多です! いや、違います違います! 俺がシンさんにそんな口きくわけ……ハモン……」


ガックリと地面に崩れ落ちた本多。携帯を拾い上げる清。


「あー、どうもどうも。わざわざありがとうございました。破門の件は私が口出すことではありませんが、どうしたものかと。いえいえ、はい。ええ、分かりました。それでは失礼いたします。」


「おい清……今の電話は……」


「まあ待てよ。さて、先輩。朝までこの辺のゴミ拾いをしたら破門の件を考えてくれるそうだぜ? 大介、行こうぜ。」


それでも納得のいかない安西は……


「ハッタリこいてんじゃねー! おらぁ!」


清に殴りかかってきたが……


『鋭ッ!』


清が指を向け気合いを入れると、その場に崩れ落ちた。


丹野は……


「わ、わかったぁ! ゴミ拾いでも何でもやるから! シンさんにとりなしてくれよぉ!」


それには目もくれず2人は歩いていった。




「やるじゃねーか。スカッとしたぜ!」


「お前に手を出させるわけにはいかんかったからな。」


大津大介は空手の有段者だからだ。こんな時こそ出番のはずなのに現実は無情だな、なんて清は考えていた。


「それよりお前、大丈夫なんか? ニコニコ商会なんかに借りを作ったんじゃ……」


「いや、むしろ貸しを作ったぞ。俺としては奴らにボコボコに殴られた上で財布を渡してもよかったんだがな。その上で話をデカくする。そうすると億単位の話になったろうよ。その場合、お前にも分け前が1000万は渡せた。でも、お前そんなの嫌いだろ?」


「へっ、当たり前じゃあ。男が拳で語らんでどうするんじゃ。」


「だから丸く収めたんだよ。あいつらも、まあ倒れてる奴以外はどうにか破門されずに済むんじゃないか?」


「やるじゃねーか。それより黙ってたんじゃけぇバーは清の奢りやけぇの?」


「おう。行くぜ!」


清は再び上機嫌になった。どうやらそれ程に大事な友人であるようだ。


この夜清は正体をなくすほどに酔い、目が覚めた時は駅裏の駐輪場だった。器用にも放置された自転車に座ったまま寝ていたようだ。

なお、友人はちゃっかりバーで知り合った女の子の部屋に転がり込んだらしい。妻子ある身なのに。

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