特別骨董天然記念物
現れた集団はいわゆる暴走族。22世紀になっても彼らは絶滅していなかったのだ。
100年以上前のバイク、150年以上前のパーツをレストアにレストアを重ね健気に乗り続けているらしい。
「おーらおらおら、こんな時間にオッさんが女連れで何やってんだぁ?」
「えれぇーマブい女積んでんじゃんよぉ?」
「エンコーじゃねぇ? 悪いことしてやがんぜなぁ?」
「ひゃっはー! 女ぁ置いてけやぁ! 俺らぁ無敵の霊震愚魔神だぜ!?」
「金も置いてけぇやぁ? ダセー車ん乗りやがってよぉー」
人類が宇宙に出てすでに150年以上、火星移住計画も順調に進み、火星の人口が1000人を超えた22世紀の日本、それも首都における若者のセリフである。
「せ、せんせぇ……私が寄り道させたせいで……」
「いや、別に関係ないな。ちょっと待ってな。」
そう言って清は車を降りた。もちろんすぐ様ロックしている。
「車を見れば分かると思うが金はない。そこでどうだろう。金目の物で勘弁してくれないか?」
「ぎゃはははぁ! 貧乏人かよ!」
「貧乏人が生意気にハクい女連れてんじゃねーぞ!」
「それよか見してみろや! 物によっちゃあ見逃してやんぜ?」
「ああ、これだ。この首飾り、見ての通りダイヤモンドだ。『希望のアダマス』って名前がついてる。人によっては500万は下らない。」
「えれーデケェじゃねーか!」
「いーじゃねーか! 俺にくれよ! ジョアンナの誕生日にピッタリだぜ!」
「待てや、慌てんじゃねーよ。おう、オッさんよぉ。こりゃ盗品だろ? だから簡単に渡すんだろ?」
「何? 盗品だと!? さすがヘッドだぜ! 冴えてんなぁ!」
「オッさんどーゆーつもりよ? お!?」
「俺らをハメよーってのか? タダじゃおかねーぞ?」
「え? 君たちそんな格好して盗品を捌くルート持ってないの? もしかしてチンピラ以下なの?」
「バ、バカ言ってんじゃねーよ!」
「盗品ぐれーさばけるし!」
「これで勘弁してやるよ! さっさと行けや!」
「じゃあ気を付けてね。そのサイズのダイヤは扱いにくいとは思うけど。」
そして清は何事もなかったかのように車を走らせる。
「せんせぇ……あれって本物なんですか?」
「本物のダイヤモンドだよ。30カラットはあるかな。値段は億単位だよ。」
「え!? なんであげちゃったんですか!? まさか私を守るためにそこまでして!?」
「手放したかったからさ。あれって呪われてるからさ。」
「ええー!? 呪われてるんですか!? じゃああの人達どうなっちゃうんですか!?」
「さあ? ロクな死に方しないんじゃないかな? そうなったらまた俺のとこに帰って来てしまうのが残念だがね。」
「え!? ダイヤが帰って来るんですか!? どうやって!?」
「謎だね。あのダイヤに取り憑いている霊に好かれてしまったらしくてね。俺に害はないからいいんだけど。業界じゃあもう知られてしまってるから誰も買ってくれないお荷物ダイヤなのさ。」
「じゃあもしかしたら、あの人達の誰かがダイヤに好かれることもあるかも知れないんですか!?」
「そうだな。そうなったら助かるな。いくら俺に害がなくても、いつまでも持っていたいものじゃないからな。」
「へぇー、ふぅーん、ほおー。」
そんなダイヤモンドを清はどこで手に入れたのだろうか。葉子が聞かなかったので清も答えなかった。
一方、暴走族達は。
「あのナンバー覚えとけよ。あいつまだ持ってるだろうぜ」
「おお、住所押さえて搾り取ってやろうぜ」
「とりあえずこいつぁ俺が預かるぜ?」
「さすがヘッド、捌けるんかよ! やるなぁ!」
「おお、まあニコニコ商会のシンさんに聞いてみるわ。」
「ゲッ、マジで!? 大丈夫なんか?」
「シンさん知ってるんか! さすがヘッドだぜ!」
「俺らにも山分け頼むぜ!」
暴走族、霊震愚魔神の命運はいかに……




