葉子絶体絶命
誤字報告ありがとうございます!
ちなみに本作では人間以外に『者』は使いません。
魑魅魍魎には『物』を使っております。
これは孔雀王の影響です。南無。
「せんせぇー、結局何だったんですか? あの人? 全然偏屈じゃないですよね?」
「彼は偏屈さ。自分だって魑魅魍魎なのに、他の下品な魑魅魍魎が嫌いだからって山一つを丸ごと雲井さんから借りてるんだから。」
「あー、やっぱりここは雲井さんの縄張りなんですね。」
「そりゃそうだよ。この辺り一帯はね。でも話が分かる人間は嫌いじゃないらしい。うまくいってよかったよ。」
「よく魑魅魍魎がエゲレスなんて行けましたね。パスポートなんて持ってるんですか?」
「持ってる物は持ってるさ。魔女さんとか雲井さんも持ってるな。鬼村さんは持ってないけど。」
「でも魑魅魍魎ならパスポートがなくても好き勝手に行きそうなものですよね?」
「それをするのは勝手なんだけどな。そうしてしまうとその国の魑魅魍魎ともめてしまうのさ。まあうちの国の魑魅魍魎は強いからな。」
「じゃあいいんじゃないですか?」
「そうでもないさ。いくら強くても弱点はあるものさ。さーて、頑張って降りようか。」
「はーい。今日の夕食はどこに連れてってくれるんですか?」
「同じ道を通ることだし、竜骨鬼ラーメンはどうだ? そろそろ期間も終了しそうだしな。」
「わーい! あれ美味しいんですよね! 行きたいです!」
そして山を降り、車に乗り込みラーメン屋へ。たらふく食べて満足する2人。
「せんせぇご馳走さまでした! 美味しかったです!」
「おう。たくさん食べたな。ラーメンだけじゃなく餃子に唐揚げにチャーハンまで。」
「美味しかったんですもーん。まだ入りますよ! 次はどこに寄りますか?」
「君を家まで送っていくに決まってるだろう。寄り道なんかしないぞ。」
「ええっそんな!? ほらあそこに見える看板『ルアージュ』とか『インサムニア』とか何の建物なんですかぁ? ねぇねぇせんせぇ?」
「あれはな宿泊施設だ。だから寄る必要はないな。」
「ええー? あんなギラギラして派手なのに宿泊施設なんですかぁ? 一体何をする宿泊施設なんですかぁ?」
「さあな? 行ったことがないから分からないよ。」
「えっ!? 先生まさか童貞! やった! 嬉しい! そのまま清らかな体をキープしててください!」
清が行ったことがないと言ったのは先ほど見た2つのホテルについてのみ。当然そこ以外のホテルになら行ったことがあるに決まっている。口が上手いというか、機転が利くというか……清は本当に祓い屋なのか、それとも詐欺師なのだろうか……
「なんだ、童貞が好きなのか。クラスにたくさんいるんじゃないか?」
「知りませんよぉー! クラスの男子ってガキばっかりですもん! あいつらいっつもタネの胸とかウメのお尻ばっかり見てるんですよ!」
「あ、あぁタネちゃんにウメちゃんか。2人とも日本人だっけ?」
「タネは日本人ですけどウメはメキヒコ人ですね。はっ! まさか先生アラウンドザワールドワイドに女の子に手を伸ばすつもりですか!? 私というものがありながら!」
「何だそれは……日本語しか話せないから無理だな。」
「あっ!」
「ん? どうした?」
「せんせぇ……トイレに……行きたいんですけど……」
「知っての通りこの道にそんなものはない。コンビニもない山道だからな。後30分、我慢できるか?」
「さ、30分……頑張ります……」
そしてわずか5分後。
「せんせぇ……無理です……助けてください……」
「仕方ない。紙はあるからそこらの繁みで頑張ってこい。」
「そんなぁー! 私花も恥じらいまくる清らかな乙女ですよ! 先生なら何とかできるでしょ!」
「できるわけないだろ。さすがに人体の神秘は管轄外だ。せめて水場の近くに停めるから。」
「あんなに暗いんですよ! 無理です無理です! 怖いです!」
「じゃあライトで照らしておくか?」
「ぎゃごぉ! ダメに決まってるでしょう! 先生のバカ! アホ! イケメン! ドS!」
「俺としては車で漏らされると困るんだが……」
「あぁもぉ! 誰にも言わないでくださいよ……」
「当たり前だ。誰にでもある事だからな。この先の少し広い所に停める。車から離れるなよ。」
「ふぁい……」
清はラジオのボリュームを上げ、リクライニングを倒す。
8分後、この上なく晴れやかな顔をした葉子が車に戻ってきた。
「助かりました……恥ずかしくて死ぬかと思いましたけど、何とかなるものなんですね。」
「あぁ、そんなもんだ。紙があるだけマシってもんさ。さあ帰ろう。」
その時、清の車を囲むように現れたバイクの集団。一体何者なのだろうか?




