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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生  作者: 暮伊豆


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体育教師 石神京子

『辰巳先生の国語科授業』を書いておられる瀬川 雅峰さんより6件目のレビューをいただきました!

ありがとうございます!

その日、清は朝から附属渡海中学校に来ていた。校長から連絡があったためにやって来たのだ。


「おはようございます。例の巻物が手に入ったそうですね。」


「朝からご足労ありがとうございます。こちらです。」


『耕して天に至る』

そう書かれた絵巻物は日本海から天に昇るように棚田が描かれていた。


「なるほど、かすかな霊気を感じます。こちらで間違いないのでしょう。では行ってきます。」


「よろしくお願いします。」




グラウンドに出た清。石像は今日も元気に走り回っている。中学生達と一緒に……


「こ、これは一体……近付かないようにとお伝えしていたはずでは……」


清はその場にいた体育教師に話しかけた。

若く快活そうな教師、ショートカットで色黒な女性は答えた。


「いやぁそれがですね。あの石像がいいペースメーカーなんですよ。あのペースでグラウンドを10周するのが、合格ラインなんですよ。」


立ってる者は親でも使う。走ってる物は石像でも使うと言わんばかりだ。


「ではやめさせてもらえますか? グラウンドから出ておいていただきましょう。」


「あの……やはり除霊されてしまうのでしょうか……?」


いきなり表情を曇らせている。どうしたのだろうか。


「除霊とは違いますがね。あるべき処へ帰してあげるというのが近いでしょうね。」


「それって中止にできませんか? お金なら払いますから……」


「できますよ? お金はいりませんが、校長先生次第です。頼んでみられてはどうですか?」


「そうなんですか! 行ってきます! 待っててくださいね!」


体育教師は胸を揺らしながらグラウンドから走って行ってしまった。生徒達はそろそろ走り終わるようだ。なぜか清の周りに集まってきた。


「あの石像って壊しちゃうんですか?」

「金ちゃんを壊さないでください!」

「金ちゃんは私たちの仲間なんです!

「先生! 私に会いに来てくれたんですね!」

「ずっとこのまま一緒にいたいんです!」


中学生達は口々に要望を伝えてくる。一人違う子もいるようだが。


「たった今、体育の先生が校長室に行ったよ。決めるのは校長先生だからね。私としてはどちらでもいいよ。」


「彼女はいるんですか?」

「車は何を乗ってるんですか!」

「休日は何をされてるんですか!?」

「彼女は私! 車はティムニー! 休日なんかないの! 先生は忙しいの!」

「そのスーツ素敵です! シャルルサーチですね!」


群がる中学生達を適当に相手しつつ体育教師を待つ清。見知った顔がいくつか、飛び付いてくる女の子が1人。慣れた手付きでアイアンクローで迎撃。同級生達の前で恍惚の表情を浮かべる葉子。そんな顔を見せて大丈夫なのか?


「祓い屋さん……何をされてるんですか……」


体育教師が戻ってきた。


「ここの生徒さんは男に飢えているようですね。ところで先生、今夜の予定はもう埋まっておりますか?」


「埋まってます! 石神先生は暇なんかありません! 恋人がいなくて寂しい日々を送ってますけど夜な夜な一人で何かやってるから暇なんかないんです!」


「葛原さん……後で体育教官室に来なさい。お話があります……」


「ぐぉがーん!」


「それより祓い屋さん、今夜は空いておりま、いやいや! 校長先生から許可をいただきました! このままでお願いします!」


「分かりました。後1年もすれば居なくなるとは思いますが、仲良くしてやってください。では放課後、お迎えにあがります。」


体育教師、石神京子は顔を赤くしてコクコクと顔を上下させている。清は何を考えているのだろうか。ただのナンパなのか? 色黒の肌が好みだったのだろうか?


「先生のバカー! バカバカバカー! うわーん!」


葉子はどこかに走っていってしまった。清は校長室へと向かっていった。




「校長先生、ではこの件は終わりでいいですね? この件のアフターフォローは受け付けません。巻物はお返しします。」


「ご迷惑をおかけしました。暴走する危険もなさそうですので、陸上競技の練習に活躍してもらいます。」


清はうんざりした表情で次の現場に向かうために車に乗り込もうとした。そこに現れたのは葉子。授業はどうした。


「せんせぇー、石神先生とデートするんですか……」


「しないが? あの石像を放置するんだ。危なくて仕方ない。せめて簡単な対処法ぐらい教えておかないとな。」


「せんせぇー! 信じてましたよ! 私以外の女に手なんか出さないって! なら私も覚えます! 私の学校は私が守ります!」


「子供が覚えるものじゃないさ。君はあの石像と楽しく接するのが一番さ。さあもう戻りな。今週は土曜の昼に来るんだったな。毎日の稽古も手を抜くなよ?」


「はーい! でも学校には来ないでくださいよ? 変な虫が付きますから!」


まとわり付くのは君だろ? と言うことなく、清は帰っていった。葉子は清の思慮深さに改めてメロメロになった。体育教師の石神は放課後までにどうやって汗を拭き取りメイクをしようか頭を悩ませている。服装だって今日はジャージしかない、しかし断るという選択肢はない。

それを見た同僚の男性教師は清への敵意を新たにした。

挿絵(By みてみん)

©︎ 砂臥 環氏

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