葛原家の両親
『輪廻血戦 Golden Blood』を書いておられるkisaragiさんより2件目のレビューをいただきました!
ありがとうございます!
「こんにちは。精が出ますね。」
清は夕暮れのグラウンドを石像と並走しながら話しかける。
「ねぇ! ねぇほっちゃあ!」
「探しちょって(お探しの)マキってどんなマキなんですか?」
「絵がきれいなほいね(きれいなやつだよ)!」
絵がきれいなマキ? 巻物? 絵巻物?
「どんな絵か分かっちょってですか(お分かりになってますか)?」
「海と山が見えちょった(見えていた)!」
「なるほど。分かりました。じゃあまた来ますいね(来ますね)。」
少しずつ事情が見えてきた清だったが、探偵の真似事などする気はない。やはり校長からの連絡待ちだ。
明日も忙しくなりそうだ。今夜はどこにも寄らず、スーパーでパックの寿司を買って事務所兼自宅で一人のんびり食べるとしよう。そんなことを考えながら学校から帰っていった。
その頃、葉子は自宅で母親に愚痴っていた。
「ママ聞いてよ! カヨとタネがさぁ! 先生を見てさぁ! うちらでもイケるんじゃね? とか言ってんのよ!」
「先生が学校にいらしたの?」
「そうなのよ! 三宮金三郎の像がずーっと走り回ってるからさぁ! 校長先生が呼んだの!」
「ふんふん。」
「そしたらさぁ! 校長室を出た先生を見てみんなキャアキャア言ってんの! 私の先生なのに!」
「よかったじゃない。」
「どこが! せっかく今までバイト先の所長は臭いデブのおっさんって言ってきたのに!」
「その子達の中で先生が顔を抱きしめたい子なんているの?」
「いるわけないわよ! あれをしてもらえるのは私だけだもん!」
「お、おい、顔を抱き締めるって……」
「まあまあパパには後で。でしょ? だったら先生が心を許してるのは葉子だけよ。自信を持ちなさい。ね?」
「そうよね! 私だけよね! ママありがとう! お風呂入ってくる!」
ウキウキと風呂へ向かう葉子。父親は気が気でない。
「お、おい、どういうことだ! あの男、公衆の面前で葉子に何を……」
「うふふ。アイアンクローよ。」
「へ? アイアンクロー? あのフリッツ・フォン・エリックの必殺技アイアンクローなの? あの先生そんなに握力強いの?」
「さ、さあ……まあたぶんアイアンクローね。葉子があの調子で阿倍野先生に迫るものだから、先生はアイアンクローで止めてるみたいよ。体に触れるわけにはいかないって思ってるんでしょうね。」
「あ、ああ、なるほど、あの顔で真面目なんだな……」
「ただのヘタレ野郎よ……ちっ!」
「マ、ママ?」
葉子パパの心配は尽きない。