総会は爽快そうかい?
妖怪墓場に何か用かい?
by コナミワイワイワールド2
昼の歓談が終わり、午後の部が始まる。
「さあ楽しい昼休みも終わってしまったのぉ。実のある話はできたかぇ? それでは午後の部を始めるぇ。今年の競技は棒倒しじゃ!」
今年の競技とは?
毎年この会合では各自の能力向上を目的として様々な対戦競技が催されている。優勝した者や健闘した者には賞金が出たりする。では棒倒しで対戦とは一体?
並び立つ二人の対戦者。その中間には直径1m、高さ10mほどの木製円柱が立っている。固定はされておらず、強く押せば倒れることだろう。これをお互いが離れたところから相手に向かって倒す競技なのだ。ただし肉体は使ってはならない。自らの異能を使う勝負なのだ。
トーナメント形式で競技は進んでいく。ちなみに清は2回戦で負けた。各県1名が代表となるため唐沢は出場していないのだ。
優勝者は狂都代表、土御門家の若者である。敢闘賞は加護島代表、シャーマンの若者だった。
「おう、残念だったな。金儲けばっかしてないで修行もしとけよ。」
「はい。でも1回戦でいきなり六道ですよ!? よく勝てたと思いませんか? 何ですかあの大鬼は!? 飛騨の大鬼ですか!?」
「そんなわけないだろ。お前を舐めてたからあれで済んだんだよ。両面宿儺なんか出すかよ。それで負けたあいつは大恥だけどな。」
「舐められててあれですか。2回戦も高野山の退魔師が相手だし勝てるわけないでしょ! あいつ準優勝ですよ!? そもそも俺は1回戦で霊力使い果たしたんですよ!?」
清の実力は同年代なら日の本でギリギリ10本の指に入るだろう。しかし5本の指には到底入れない。その程度なのだ。
「そのうち鍛え直してやるよ。」
「お手柔らかに……」
そして盛大な表彰式が終わり閉会の運びとなった。
「これにてお終いじゃ。また来年まで壮健での。さらばじゃ!」
そう言って葛葉会長は壇上から霞のように消えた。
かすかな余韻を残したまま参加者は会場から一人、また一人と帰っていった。
「おう。ぼーっとしてねーで帰るぞ。」
「はい。いつ見ても会長は綺麗ですよね。独身なんですよね?」
「なんだお前、あれを狙ってんのか? やめとけよ。俺のオヤジが子供の頃からあの容姿って聞いてるぞ?」
「ええ、知ってます。正体は九尾って説が濃厚なんですよね。」
「八尾比丘尼って説もあるけどな。まああれは危なすぎるぜ。」
「師匠は夜這いとかしなかったんですか? 住み込みで修行してたんでしょ?」
「するわけねーだろ。そんな元気もなかったわ! 住み込みで修行したいんなら頼んでやるぞ?」
「いえ、遠慮しておきます。バブルが落ち着いたら考えますよ。」
会合が終わっても二人の周りは騒がしかった。
「飲みに行きましょう」
「日本海の海の幸が……」
「お姉ちゃんのいる店が……」
「事務所の開設ですが……」
「今夜の宿はどちらで?」
「まだでしたらぜひお任せを……」
「珍しい酒を置いてある店が……」
清だってゴチになれるものならなりたかった。前日入りして酒でも飲んでいたかった。今夜も泊まってお姉ちゃんのいる店に行きたかった。しかし自分も唐沢も明日からの予定がぎっしり詰まっているのだ。生返事をしつつ泣く泣く死津喪市を発つ清だった。
なお本日は清の事務所がある渡海市ではなく、清の実家や師匠の寺がある山奥郡威中町を経由しなくてはならない。途中から高速のルートを外れるため清の帰りが遅くなることは確定していた。
そして唐沢は助手席に座るやいなや即ビールである。運転を代わる気など毛頭ないらしい。唐沢だって酔わずに酒を飲む業を持っているくせに。
中国自動車道ほどではないが、高速道路と呼ぶには起伏に富み左右にうねる道をひたすら帰る。近いうちに自動運転の車を買おう。清は運転しながらそう決意したのだった。まだまだヘリコプターを買ってなおかつ維持できるほどの稼ぎはない。
ちなみに山陰新幹線はまだ開通していない。計画はとっくに出来上がっているが、魑魅魍魎の領域を通らざるを得ないため一向に進んでいないのだ。清の仕事はまだまだ繁盛することだろう。
全然爽快ではありませんでした。残念!




