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~~afterstory《後》~~


 美姫と別れてから月日は経ち、高校三年生となった。

 別れた後は全てを勉強に費やしていた。


「で、美姫はどんな感じなんだ?」


 俺は佑真に訊ねる。

 別れた後、時折佑真から美姫の成績などを伺っていた。


「上がってるよ、A大とB大はA判定、他のに関してはS判定だったよ」


 A大学B大学は日本で最難関と呼ばれる大学である。


「S判定なんてあったんだな」


 俺は苦笑しながら呟く。


「僕も初めて見たよ。で、澪の方はどうなんだい?」


「えっと俺は・・・・・・」


 こうして、美姫の成績はかつてのように否、以前より上がっていた。


「本当にいいのかい?」


 佑真は一言だけ訊ねてくる。

 

「いいよ。これが俺が決めた道だ」


「なら、僕は何も言わないでおこう。でも、ムリだけはしないでね」


「ムリしないと現実にならないから断るよ」


 こうして、勉強と報告だけの日々は過ぎ、大学受験を迎えた。


「で、美姫の方はどうだった?」


 俺は学校で唯に訊ねていた。


「無事にA大学に受かったみたいだよ。他の滑り止めも全て受かってたけどやっぱりA大に行くって」


「そうか。ありがとう」


「でも、澪がこんな事をするとは思ってなかったよ」


 唯は呟く。


「前までなら俺もやってなかったよ。でもさ、俺はやっぱり美姫のことが好きだから」


 唯は少しだけ苦しそうな表情を浮かべた後、いつもの笑顔に戻る。


「一城さんにはいつ伝えるの?」


「いや、伝えないよ」


「いいの?」


「ああ」


 俺達はそんな会話をして別れる。

 この数日後、俺達は卒業式を終え、気付けば大学の入学式の日を迎えていた。


☆☆☆


「今日から大学生なんだね」


 私は机の上に飾られた写真を見ながら呟く。

 写真に写っているのは私と澪君。

 付き合ってから初めてデートした時に撮った写真だ。

 無事第一希望だったA大に受かり私は今日から晴れて大学生だ。


「早く、前を向かないと」


 今でも彼のことを忘れられない。

 好きな気持ちは消えていない、むしろ膨れ上がっている。

 だが、彼とは違う道を歩んでしまっていた。


「行ってきます!!」


 多くの気持ちを抱えたまま大学へと向かった。




『これより、A大学の入学式を始めます』


 教授の声によって入学式は始まった。

 それからはひたすら長い話が始まった。

 多くの人が喋っては消えていく。


『・・・・・・入生代表、篠原澪』


「はい」


 突如、想い人の名前が呼ばれ心臓が跳ね上がる。


「同姓同名なだけよね」


 私は独り言を溢す。


「え、ウソ?」


 だが、壇上に現れた人物に良い意味で裏切られた。

 立っていたのは篠原澪、自分の想い人だった。


『新入生代表の挨拶を務めさせていただきます。篠原澪と申します』


 彼は勉強をしていないだけで頭が悪い訳ではないと考えていた。

 だが、高い偏差値を誇るA大学に来れる程の学力はなかった筈だ。

 そんな彼が首席として合格してこの大学に立っていた。

 彼の努力を想像しただけで視界が濡れ始める。


 彼の姿に目を奪われ、気付いた時には入学式は終わっていた。




「澪君、澪君」


 入学式終了後、私は彼の名前を溢しながら辺りを見回す。

 彼の姿を探していた。

 多くの学生からのサークルの勧誘を断りながら彼を探し続けていた時、声を掛けられた。


「美姫、美姫!!」


 私はそちらを振り向く。


「澪・・・君・・・」


 彼の姿を再び見た時、涙が頬を流れる。


「やっと見つけた」


 彼は肩を上下させながら呟く。


「何でこの大学に?」


 私の声は震えていた。


「それは、美姫がこの大学に行くって知ってたから追いかけてきたからだよ。美姫の隣に立つには同じ高さに登らないとって思ってたら何か首席になってた」


 彼は苦笑しながら答えてくれた。

 彼の途方もない努力が伺えた。

 卒業式の日、新藤君に言われた言葉を思い出す。


『一城さん、彼を信じてあげて』


 その時は何の事だか分からなかったがやっと理解できた。 



「なぁ、美姫」


 彼は真剣な表情でこちらを見つめる。


「もう一度、俺と付き合ってもらえないか?」


 その言葉は私がずっと待ち、願っていたものだった。


「はい!!」


 私達は再び同じ道を歩み始める。

 もう二度と彼の手を離さない。

 彼は私の隣に来てくれた。

 途方もない努力の上に。

 今度は私の番だ。


「澪君、宜しくお願いします」


 私の多くの想いを込めて彼に告げた。



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