演劇《後編》
更新しました。
宜しくお願いいたします。
「はあっ!!」
俺は剣を振り抜きモブに止めを刺す。
魔王城の通路で戦闘するシーンを演じていた。
「(ヤバい、思ったより疲れが)」
緊張や普段使わない筋肉を使ったりした為全身を疲労感が支配していた。
「待て!!ここから先は行かせない!!」
台詞を告げながら一人の男子生徒が登場してきた。
「お兄様!?何故貴方が・・・・・・」
俺は台本通りに台詞を述べていく。
「それは、貴様を殺す為だ!!」
そして、こいつも台詞と違うことを言い出しやがった。
もう元の劇は形を成していなかった。
元とは違う劇をして成功させているこの流れ、どこかで見たことがある。
そう、原作最終回付近で人気の高いヒロインが振られネットが炎上した作品。ニセ〇イだ!!
「死ね!!」
お兄様は拳銃をこちらに向け、引き金を引く。
俺は剣で弾丸を防ぐ振りをする。
今回は弾は発射されない。
代わりに効果音が鳴り響く。音響係は大変だな。
「何故ですかお兄様?貴方の様な人間が何故に魔王に手を貸すのですか?」
俺は弾を避ける動きをしながら台詞を続ける。
「貴様を倒し妹を我が物にするためだ!!」
お兄様役の生徒はもうノリノリである。
達が悪い。
「私は貴方に剣を向けたくない。お願いです。手を引いてください」
「ならば、俺を殺して妹を救え!!」
そこにキキィーという効果音と共に車の形をした段ボールが現れる。
そして、車から現れアサルトライフルを持った男達(元スライム1、2、3)が銃弾を放ってきた。
「うわ!!」
俺はお兄様に庇われる形で倒される。
そして、銃弾の嵐が俺達を襲った。
「お兄様?何やってるんですかお兄様!!」
俺は叫ぶ。
「う、う、うあぁ!!」
お兄様は叫び声と共に振り向き拳銃を放つ。
弾は一人に当たり倒す。
残りの二人が車に戻り逃げていく。
「はぁはぁはぁ」
俺は唖然としながらお兄様を見つめる。
「なんだよ。結構当たるじゃねぇか」
「おにい・・・さま・・・」
お兄様の体から大量の血が流れる。
「あ、あぁ・・・・・・」
言葉に鳴らず音が溢れる。
「なんて声、出してやがる。王子」
「だって、だって」
俺はとあるシーンを思い出しながら涙を溢す。
「俺は次期王子。姫のお兄様だぞ!!はぁはぁ、こんぐらいなんともねぇ」
「そんな、俺何かの為に・・・・・・」
「未来の弟を守るのは俺の仕事だ」
「でも!!」
俺は彼の背中を見ながら叫ぶ。
「いいか行くぞ!!姫が待ってるんだ」
『ただ~よう空は~』
そこで名曲、フリージアが流れ始める。
クラスの女子のコーラス付きだ。
「それに妹よ、やっと分かったんだ」
お兄様は前に向かい歩きだす。
「お前を救うのはあいつだ。アイツが救ってくれる。止まらない限り道は俺が作る」
お兄様の声でナレーションとして入る。
「俺が道を開くからよ。お前が止まらない限り、俺が先に道を開いて待ってるぞ!!」
そこまで告げ、お兄様は倒れる。
左手の人差し指を魔王がいる方向に指しながら。
『希望の花~』
音楽はサビに入る。
「だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・・・・」
「お兄様・・・・・・」
俺は涙をそっと拭いながら先へ進んだ。
※フリージアはお兄様が回収されるまで流れました。
☆☆☆
「人間風情でよく、ここまでたどり着いたな。どうだ?我の仲間になるか?」
王の間で魔王は待ち構えていた。
「断る!!」
俺は告げる。
そういえば、ドラ〇エか何かで魔王に従う的な選択肢を選ぶと何かあったよな。そう何か・・・・・・
「そうか、ならば貴様を殺すまでよ」
魔王こと佑真が剣を構える。
「貴様だけは倒す!!」
そして、王子と魔王の闘いは幕を開けた。
「はぁ!!」
魔王は勢い良く剣を振り下ろす。
形は基本、それ故に強い。
「せぁ!!」
俺は刀身に左手を添え耐える。
「ここまで来ただけのことはあるな」
「ここに来るまでの中で一番強い一撃だ。でも、お前には勝つ!!」
二人とも台詞は忘れない。
そこからは本気での勝負が始まった。
完全にチャンバラごっこだ。
観客席は盛り上がっており応援の声が掛けられる。
「次で!!」
「最後だ!!」
五分程激しい打ち合いをした後、決着は着いた。
俺の剣が魔王を貫いていた。
「ごはっ。見事。だが、姫は貴様に渡さん」
魔王は最後の台詞を告げ倒れていた。
「いや、返させてもらう。たとえこの命に代えてもな」
俺は本来の台詞を告げ、姫の元に向かう。
姫は眠っていた。
謎の魔方陣が書かれた棺桶の中で眠っていた。
「姫、助けに参りました。遅くなってしまい申し訳ございません」
俺は姫の顔を見ながら呟く。
「姫!!」
俺は声を上げる。
『姫は魔王の呪いによって目覚めることが出来なくなっていた』
ナレーションが解説を入れる。
「姫、貴女は助けます」
俺は言葉を続ける。
「できれば美しい貴女と結ばれ共に時を過ごしたかった。私は貴女の事を愛していますから」
俺は告げ終えると姫に口づけをする振りをした。
「でも、貴女を助ける為に私は死ぬ。どうか貴女だけは幸せに生きてください」
俺はその場で倒れ、そっと目を閉じた。
「ここは?」
私は起き上がり台詞を呟く。
辺りを見回すと姫を助け命を落とした王子が棺桶の外で眠っていた。
「王子様!?」
私は彼を抱き上げる。
「貴方は死なせません。貴方と共に生きるから幸せなのですから」
そして、台本と違う行動にでた。
ねぇ、澪君、貴女はきっと彼女を選ぶ。だけど、一度だけでいいから私を受け入れて。
劇の最中なのに関わらず私情が入ってしまうことはいけないことなのは分かっている。
けれど、私は唯さんと澪君のキスを見てしまった。
限界だった。
澪君の唇にそっと自分の唇を重ねた。
瞬間、観客席から歓声が上がる。
「ツッ!!」
澪君は驚き、体を起こす。
「王子様、良かった。貴方が生き返ってくれて本当に良かった」
私はアドリブで喋りながら彼に抱きつく。
『何ということでしょう。魔王の呪いを代わりに受け永遠の眠りについた筈の王子が姫の愛によって呪いから解放されたではないですか!!』
佑真さんが劇的beforeア〇ターのナレーションの様な口調で告げる。リフォームが終わった時のあの感じだ。
「姫、貴女の思いが届きました」
澪君は必死に考えながら言葉を口にしていく。
「悲しませてしまい申し訳ない。私が必ず貴女を幸せにします。だから、私と結婚してください」
「はい!!」
王子と姫がステージの中央で抱き合う。
そして、垂れ幕が下がる。
観客席からは大きな拍手が上がった。
そして、私たちの劇は終わりを告げた。
劇のラストが上手く書けなかった・・・
ということで無事、劇自体は終了しました。
文化祭編はもう少し続きます。
宜しくお願いいたします。
「止まるんじゃねぇぞ!!」
個人的にあのシーンはネタとしてでなくても好きなのですがやはりネタになっちゃいますね。
というかネタとして書いちゃった・・・・・・
※元ネタが分からなかった人はオルガ・イツカとググってくだされば書いたシーンが分かると思います。




