演劇《対応》
更新遅くなりました。
申し訳ございません。
「加藤の具合は!?」
舞台裏に着くと佑真に声をかけていた。
「歩けなくはないけど劇に出るのは・・・・・・」
佑真は首を横に振る。
クラスメイト達は口々に不安を溢していた。
「唯、お前に怪我は?」
俺は隅っこで踞っている唯に声をかける。
「ないよ。だけど、私のせいで劇が・・・・・・」
唯は深く自分を責めていた。
全員が唯の今までの頑張りを見ていたので責めるようなことは言っていないのだが本人は罪悪感で潰れそうになっていた。
「時間はもう過ぎてる。佑真、会場に十分遅れて行うってアナウンスしてくれ!!」
俺は佑真に指示をおくる。
「わかった」
佑真は体育館の放送設備のあるところに向かう。
「おい、篠原、どうするんだよ?加藤が主役がいないんだぞ。代役なんているわけが・・・・・・」
桜井が声をかけてくる。
「俺がやる」
俺は宣言するように告げる。
「俺が王子役をやる」
俺がはっきり口にすると全員が視線を向けてくる。
「やるって言ったって台詞は覚えてるのか?立ち回りは?」
「無理に決ってるだろ。ボロボロの劇をやるぐらいなら中止にしよう」
男子生徒達が俺に向かって告げてくる。
そんな中、
「篠原君、僕の代わりにやってくれ。頼む」
足を引き摺って歩いてきた加藤が俺に頭を下げてくる。
「頼まれなくても勝手にやるよ」
俺は少しカッコつけて言うと皆の方へと振り向く。
「頼む。力を貸してくれ。台詞だって全然覚えてないし動きもわからない。だけど、ここまで頑張ってきたことを無駄にしたくないんだ。お願いだ。手伝ってくれ」
俺は全員に頭を下げながら叫ぶ。
「澪・・・・・・」
唯がポツリと俺の名を呼ぶ。
正直な気持ちは、唯が悲しんでいる姿が見たくなかった。
一城さんの努力を無駄にしたくなかった。
それだけだ。
「よし、篠原君、こっちに来て。メイクするから」
吉田さんが俺に向かって言う。
「俺達は校舎に宣伝しに行こうぜ」
「僕達は今来ている人達に謝罪しに行こう」
皆がそれぞれ考えて動き始める。
先程までの諦めムードは無くなっていた。
「ありがとう」
俺は泣きそうになるのを堪えながら呟き吉田さんの元へと向かった。
五分後・・・
鏡に自分ではない誰かが写っていた。
まあ、自分なんだけど。
「ま、こんなもんでしょ。これなら学校の中でも結構カッコいい方に入れるんじゃない?」
吉田さんはドヤ顔をしながら告げる。
吉田さんのメイクは一流であった。
冴えない男子君の俺を一瞬でイケメンへとジョブチェンジしてくれた。
全国の男子が吉田さんにメイクして貰えればイケメンになれるのではないか。
そんな考えが頭を過る。
「篠原君は元がいいから少し整えてあげるだけで雰囲気変わるんだよね」
吉田さんの言葉に少し照れそうになるが、彼女はBL好きだ。
後で何かあると怖いのでポーカーフェイスを貫く。
「どうよ、一城さん?」
俺の椅子をクルリと回して入り口に体を向かせられる。
そこには入ってきたばかりの一城さんがいた。
一城さんもメイクを終えており、いつもより何倍も綺麗になっていた。
化粧は女性を変える。
あれは嘘ではなかった。
「カッコいいですよ澪君。お願いしますね、私の王子様♥️」
一城さんは演技掛かった仕草でウインクしながら告げる。
「任せとけ」
俺はサムズアップしながら答え化粧室(仮)を出る。
「凄い。超カッコいい」
出た瞬間、女子陣に囲まれる。
こんな経験がある訳がなく照れてしまう。
「篠原君、打ち合わせですよね」
俺がデレデレする中、一城さんの怖くて寒い声が聞こえてくる。
「「「「はい」」」」
あまりの怖さに俺だけでなく全員が答える。
女子達は俺の回りから撤退していく。
俺のモテ期は一瞬で終わったらしい。
人生には二度か三度モテ期がくるらしいので残りに期待だ。
「澪君、行こう」
打ち合わせが終わった後、美姫に手を引かれ舞台へと向かった。
本当は劇の終了まで書きたかったのですが長くなった為始まる前までを投稿させてもらいました。
演劇を楽しみに待ってくださっていた皆様申し訳ございません。
次話は明日、投稿予定です。
宜しくお願いいたします。




