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文化祭最終日《中》

更新しました。

宜しくお願いします。


「ねぇ、澪、一緒に回ろう」


 文化祭最終日、一回目の劇が終わった後、俺は唯に声をかけられていた。


「別にいいけど」


 俺は唯の言葉に答える。


「やった!!」


 彼女は俺の言葉を聞き、本当に嬉しそうにガッツポーズをする。


「早く回ろう」


 唯は俺の腕を引っ張り急ぐような足取りで校舎に向かう。


「ねぇねぇ、これどう?似合う?」


 校舎内、先程鈴音にブレスレットを買ってあげた団体に来ていた。

 いや、連れてこられていた。

 唯はお店の人に許可を貰いシュシュを付けていた。

 普段のポニテ姿では無く、うなじの途中から髪を止めて肩からは流していた。

 髪型の名前はわからない。


「どうかな?」


 彼女は一度クルッと回りながら尋ねてくる。


「似合ってるんじゃねえの?」


 いつもより可愛く見える彼女の姿を直視出来ず、視線を背けながら告げる。


「じゃあ、これにしよう。いくらですか?」


 唯はそう言うと店員にお金を払おうとする。


「400円です」


「俺が払うよ」


 俺は言ってお金を払う。

 鈴音の時も払ったんだし普段のお礼だ。

 たいした価格でもない。


「ありがとう」


 唯はポツリと呟く。


「優しい彼氏さんですね」


 店員さん(鈴音と来たときにも声をかけてきた人)がニヤニヤしながら言ってくる。


「はい。自慢の彼氏です」


 唯は満面の笑顔で答える。

 その笑顔を見てると否定するのもめんどくさくなってきた。


「最高の幼なじみですよ」


 俺はあくまで事実の感想を述べる。


「え・・・・・・」


 唯は言葉を洩らして顔を真っ赤にする。  


「他にも回りたいので失礼します」


 俺は唯の手を引きその場を去る。


「彼氏ではないけどな」


 俺は小声で一応訂正しておく。


「ごめん」


 唯に聞こえないように呟いたつもりなのだが、聞こえてしまったようだ。

 

「勘違いされるのが嫌だっただけだよ」


 俺は言い訳を溢す。


「でも、私は嬉しかったな」


 唯が小声で呟く。

 俺は一瞬唯のことを見つめてしまう。

 だが、すぐに聞こえなかった振りをする。


「次、次行こうぜ!!」


 俺は繋いでいた手を離して告げる。


「うん」


 唯は小声で言いながら、俺の腕に自分の腕をしっかり絡ませてくる。

 彼女の柔らかい部分が俺の腕に押し付けられる。

 気持ちいい・・・・・・


「屋上に行こう」


 唯は告げて歩き出す。

 彼女の言葉には何故かわからないがとても強い意志のようなものを感じた。




「ねぇ、澪」


 屋上に着いた途端、彼女は俺の腕を離して屋上の中心部に走っていく。


「澪は、私と一城さんどっちを選ぶの?」


 そして、こちらに振り向きながら告げてきた。


「それは・・・・・・」


 俺は言葉に詰まる。

 俺の中で答えはまだ出ていなかった。

 自分の中で覚悟が決まっていなかった。

 どちらか一人を選ぶこと。

 片方は傷つけること。

 もう、元の関係には戻れないこと。

 関係が壊れることを怖れて決めれずにいた。

 要するに俺は彼女達の優しさに甘えていた。


「まだ、決まってないんだね」


 唯は言いながら距離を詰めてくる。


「私はね、私は、澪に私だけを見てほしい」


 彼女は俺の目を見つめながら告げる。


「澪の特別な人(恋人)になりたい。選ばれたい。澪に選んで欲しい。私は幼なじみを止めたい。あなたの特別(大切な人)になりたい。」


 唯は言いきった時、瞳に涙を溜めていた。

 俺は、今まで彼女の気持ちに向き合ってきたつもりでいた。

 だが、無意識に一人の女子としてでなく幼なじみとしての(フィルター)を通して見ていた。

 今日、初めて彼女の気持ちを聞いてそれに気づいた。


「だから・・・・・・」


 そして、唯は一気に距離を詰めてきて、


「私を選んで澪」


 唇を重ねてきた。

 時間にして一瞬、僅か一秒にも満たないだろう。

 だが、その何倍にも、何十倍にも感じた。


「澪、私は貴方を愛しています」


 彼女は唇を離すとそう告げ走り去って行った。


「俺は・・・・・・」


 俺の声は誰もいない屋上に消える。

 逃げれない、逃げてはいけない。


「何だよ」


 唯が去ってからどれくらいかわからない時間が過ぎた時、唐突にスマホが鳴った。

 時間はもうすぐ二時を指そうとしていた。

 あと少しで内のクラスの最後の発表が始まるだろう。


「澪、来てくれ。加藤が宮内さんを庇って足を捻挫した」


 表情された画面にはそう書かれていた。


「どういうことだよ!!クソ!!」


 俺は吐き捨てながら立ち上がり舞台のある体育館へと向かう。

 走りながら電話をかける。

 相手はメールの送り主の佑真だ。


「どういうことだ、佑真!!」


「それが・・・・・・」


 佑真が何があったのか説明してくる。

 

「どうする。どうすれば」


 頭に浮かんでくるのは懸命に劇の練習をしていた一城さんの姿。

 文化祭を成功させようと誰よりも動いていた唯の姿。

 二人の表情が頭を流れていく。


 俺が体育館の舞台裏に着いた時、時計の針がちょうど二時を指していた。

文化祭編もラストスパート!!

この回でヒロイン三人全員が主人公の澪と文化祭デートしたことになりました。


非リア男子軍団、君達は何をしているんだ!!

(現在彼等は外部の生徒達に突撃ナンパをしております。成功者はZEROの模様。)


 因みに佑真は逆ナンの数が三日間で百回を越えました。


現実は残酷だ。


次話は明日更新の予定です。

宜しくお願いいたします。

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