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文化祭最終日《前》

更新しました。

宜しくお願いいたします。


「文化祭最終日、私達のクラスはまだ四位。一位は狙えるところにある。全クラス抜いて最優秀賞取るぞ!!」


「「「おーー!!」」」


 唯の掛け声が終わるのと同時に文化祭最終日の始まりを告げる鐘が校舎内に響く。

 こうして、俺達の文化祭最終日は幕を開けた。


☆☆☆


「と、言っても直ぐに始まるわけではないんだよな~」


 俺は鈴音と合流するために歩きながら呟く。

 俺達は舞台団体の為、決められた時間しか発表出来ない。

 最終日は二枠取っているが文化祭が10時開始、一回目の出番は11時半からなのである。

 それ故にこうして空き時間が生まれているのだから構わないのだが。


 旅行に行ったあの日以降、鈴音とはメールのやり取りのみで直接顔を合わせることは一度もなかった。

 会ってあれ(キス)のことを何か言わなければとずっと思っていたのだが、また関係が壊れるのが怖くて中々言い出せずにいた。

 今日も佑真を仲介にして何とか約束をすることが出来たのだ。


「あ、おにぃ・・・・・・」


 考えながら歩いているとあっという間に合流場所に来てしまった。

 鈴音は少し気まずそうに俺を見つめる。


「とりあえず、回ろう。俺も11時20分には教室に戻らないといけないから」


「うん」


 それっきり互いに黙ってしまったが俺達は文化祭を楽しむ為に動き始めた。



「これ、可愛いな」


 鈴音がポツリと呟く。

 それは有志団体が販売しているブレスレットだった。

 赤色のリングにハートの何かがついているものだった。

 何かについて問われても俺はこういう女子系いや、ファッション系の物は何一つわからないのでうむ。宜しく頼む。


「これ、一つください」


 俺は鈴音が見つめていた物を購入する。


「ありがとうございます。三百円です」


 俺は言われた値段通りのお金を渡す。


「可愛い彼女さんですね」


 店員さんに話かけられてしまった。

 しかも、今触れられたくない話題で。

 

「妹ですよ」


 俺は苦笑いを浮かべながら答える。


「そうなんですか?失礼しました。仲がよろしいようなので彼女さんかと・・・・・・」


「大丈夫ですよ。あまり似ていないので時々言われますから。それじゃあ失礼しますね」


「ありがとうございました」


 俺は会話を終えお店を離れる。


「はい」


 俺は買ったブレスレットを鈴音に渡す。


「お金払うね」


 鈴音は言いながら財布を開こうとする。

 

「いいよそんぐらい。普段のお礼だよ」


 俺は鈴音に笑顔で告げる。


「ありがとう」


 鈴音は小声でボソリと呟く。


「他にも回ろう」


 俺は鈴音の手を握り再び歩き始めた。



「おにぃ、今日はありがとうね」


 あっという間に時間は過ぎ、クラスに合流しないといけない時間になってしまった。


「あまり時間がなくて悪いな」


 俺は鈴音に謝る。

 

「別に大丈夫だよ。一緒に回れて嬉しかった。来年も一緒に回ってよね」


 鈴音は言い終えると突然表情を真剣なものに変える。


「おにぃ、あの(キスの)事だけど、あれは私の気持ちだから。私は異性として、男性として篠原澪が好きだよ」


「・・・・・・」

 

 俺は鈴音の言葉に何も言えない。


「だけど、私達は兄妹。それは分かってる。だから答えは出さなくていいよ」


 鈴音は苦しそうな表情で呟く。


「お願いだから、ずっとそばにいて。特別な存在(恋人)としてじゃなくていいから。家族()としてでいいから。だから、ずっとおにぃでいてね」

 

 それは鈴音に取っては答えを出すこと以上に残酷で苦しい事なのだろう。

 だけど、鈴音はそれを選んだ。選んでくれた。

 だから、俺もその覚悟(優しさ)答える(甘やかせてもらう)

 男として最低な奴だとしても、鈴音にはずっと傍にいて欲しいから。

 たった一人の家族だから。


「わかった。俺はお前の兄でいるよ」


 俺は告げた。


「ありがとう」


 鈴音は苦しそうな、何処か嬉しそうな表情を見せて告げる。


「悪い、俺もう行かないとヤバそう」


 さっきから途切れることのない着信バイブを足に感じていた。

 音が鈴音にも聞こえていたのだろう。

 鈴音はクスッと笑うといつもの表情になって告げる。


「行ってこい、おにぃ」


「おう」


 俺は鈴音に元気良く答えその場を去った。



「鈴音ちゃんはこれで良かったの?」


 篠原澪が去った後、私は一人の女子生徒に声をかけられていた。


「はい。これが私の答えです」


 私は一ヶ月近くずっと考えていた。

 自分が軽率にしてしまった行動(キス)のことを。

 そして、この答えを出した。

 私はおにぃの家族だから、彼を支えることに決めた。

 自分が特別(恋人)になれなくても。


「なら、私は何も言えないね」


 彼女はそう言うと私の頭を撫でる。


「私には甘えてもいいんだよ」


 彼女の言葉は優しく包み込んでくれるようだった。

 (恋敵)の筈なのに。


「じゃあ、そうさせてもらいます」


 私は彼女の胸に顔を埋める。


「私も変わらないとね」


 私は彼女の胸の中で静かに涙を溢した。

 彼女の呟きはしっかりと耳に届いていた。

 応援すると決めた以上邪魔も敵対もしない。


「私の代わりにおにぃのことお願いしますよ。別に一城さんでもいいですけど」


 私は彼女、宮内唯を見つめながら呟く。


「任されました」


 唯さんは強い意志を秘めた表情で頷いた。

 私は不意にもその表情にドキリとさせられてしまった。


☆☆☆


「ねぇ、澪、一緒に回ろう」


 一回目の劇の終了後、私は、澪に声をかけていた。

 行動を起こすために。変わるために。

 彼女は選んだ。

 だから私も選ぶ。

 もう元には戻れないから

次話は明日更新の予定です。

宜しくお願いいたします。

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