五十九話
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宜しくお願いします。
「起きてください。篠原君、朝ですよ。起きてください」
体が揺さぶられる。
意識が現実へと強制的に戻された。
「ふぁ~、もう朝か。うん?」
後頭部に何か柔らかい物が触れていた。
「おはようございます」
目を開いた時、最初に目に入ったのは天井ではなく一城さんの顔だった。
「え~と、もしかして膝枕?」
俺は微かな希望を抱きながら尋ねる。
「はい」
一城さんは眩しい程の笑顔で告げる。
直後、全身を恥ずかしさが駆け回る。
「わ、悪い」
俺は慌てて起き上がる。
「大丈夫ですよ」
一城さんも腰をあげる。
「これ、篠原君がやったんですよね?」
一城さんはお城の絵に視線を向ける。
昨日女子生徒が壊した物はクラスの端に置かれているままだ。
こっちの絵は俺が書いていたものだ。
「結局、一人でやっちゃたんですね」
一城さんは俺の言葉を待たず呟く。
「別にいいだろ?これで今日からまた準備を再開できる」
俺の言葉に一城さんは少しムッとした様子になる。
「自分を悪役にしてまで何で頑張れるんですか?」
一城さんは静かに呟く。
「それは・・・・・・」
夏休み期間中も俺と演技の練習を続けていた一城さんの努力を台無しにされたくなかった。
頑張って皆をまとめていた唯の力になりたかった。
だが、そんなことを口には出来ない。
「周りの人のことを考えてください」
一城さんは一言告げて去っていってしまった。
後ろ姿を見つめていた時、ほんの少し自分が取った行動を後悔してしまった。
☆☆☆
「嘘だろ・・・・・・」
男子生徒の一人が教室に来た直後、声を溢していた。
壊された筈の物が壊れる以前の姿で立っていたら誰でも驚く。
他の生徒も次々と入って来て絵を前に足を止める。
そして、直ぐに全員が気づく、この絵は篠原澪が書いたのだと。
昨日、教室を去ったあと、冷静になった生徒達は何故篠原澪があんな行動を取ったのか理解していた。
自分に敵意を向けさせクラスの崩壊を防ぐ。
彼は自分を犠牲にした。
多くの生徒は自分達の行動を悔いていた、ら
そして、生徒達の意志は一つになった。
必ず演劇を成功させる。篠原澪に認めてもらうために。
こうして、一年A組は篠原澪の思惑とは少し違った形で一つに纏まった。
篠原澪の思惑と変わってしまった理由は一年A組の生徒は篠原澪という男を信頼していたことに他ならないだろう。
敵意を向けさせるだけのつもりが信頼されている為に少し意志が変わってしまったのだ。
「お疲れ様。あと二日間準備頑張って行こー!!」
「「「「おーーー!!」」」」
今日は無事下校時間を迎えることが出来た。
準備中、キャスト側、道具係側が互いに冷静になっていたため大きな衝突は起きなかった。
だが、昨日の行動のせいで俺は確実に浮いていた。
体育祭のサッカーで同じチームだった生徒と唯達以外誰も目を合わせようともしなかった。
「よし、今日も練習始めようぜ」
一城さんと向き合い告げる。
演技の練習を始める前に昨日の行動については謝罪した。
一城さんは無言で首を縦に振った後、練習とだけ告げたのでそれに従い練習を行っていた。
日にちが変わり準備最終日、キャストは一日中リハーサル、道具係は道具の点検から衣装合わせ、一日が忙しく過ぎていき、気づいたら下校時間が来ていた。
「文化祭三日間頑張って行こう!!」
準備最終日、唯の声が教室に響く。
そして俺達は文化祭一日目の朝を迎えた。
駆け足で展開していってしまい申し訳ございません。
今回は物語としての展開が無く説明文みたいになっちゃいました。
本当に申し訳ございません。
次話は文化祭初日、二日目を書いていく予定です。
宜しくお願いします。




