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二日目夜

更新しました。

宜しくお願いします。


「明日で終わりなんですね」

 

 夕食までの短い時間、一城さんと二人で砂浜を歩いていた。

 先程まで演劇の練習をしていたのだが、息抜きということで歩いていた。


「昨日来たのにな」


 俺も苦笑しながら同意する。


「ごめんなさい」


「え?」


 突然の一城さんの言葉に疑問符を浮かべてしまう。


「新藤君にご両親の事聞いたんです」


 一城さんは申し訳なさそうに告げる。


「佑真が・・・・・・」


 知られたという事より佑真が知っていたことに驚いていた。


「別にいいよ」


 俺は一言告げる。


「いつか話そうと思ってたから」


 言葉を続ける。


「一城さんの妹を助けた時、あの時、俺は助けたいとかそんなこと考えてなかったんだよ」


「え?」


 俺の言葉に理解が出来ていない表情で呟く。


「あの時、父さんと同じ死に方がしたいって思ってたんだ。まだ気持ちの整理が出来てなくて自暴自棄になってた時なんだよ」


 一城さんは黙ってしまう。


「父さんは車に轢かれそうになった俺を助けて死んだ。だから俺も同じように誰かを助けて死にたい、楽になりたいって考えてたんだよ」


 俺は自分の醜い、汚く弱い部分を言葉にしていく。


「父さんと母さんを殺したのは俺だ。俺が居なかったら二人は生きてたかもしれない。償うには俺も同じように誰かを助けて死ぬしかないって考えてたんだよ。妹さんを助けた時かなりギリギリだっただろ?なのに迷いなく行けたのはそんなことを考えてたから。これが俺だよ」


「違う!!」


 俺が言い終えた時一城さんは俺を睨みながら叫んでいた。


「篠原君は誰も殺してない」


 一城さんの声は優しさを秘めていた。


「今日もそう。今までだって。篠原君は理由がなくても妹を皆を助けてたよ」


 一城さんは今にも泣きそうな表情で告げてくる。


「私、先に戻ってるね」


 彼女は告げて走って行ってしまう。


「ありがとう」


 俺は彼女の背中に一言呟いていた。


☆☆☆


「バーベキューだ!!みんな食べるぞ!!」


 佑真の一言によって夕食はスタートした。


「う~ん。美味しい~」


 唯は幸せそうにお肉を食べる。


「唯さん、ちゃんと野菜も食べないと駄目ですよ」


 鈴音は唯のお皿にぽいっとピーマンを入れる。

 ・・・それ、お前が嫌いだからだろ?


「鈴音ちゃんひどい!!野菜なんて食べてるから大きくならないんだよ」


 唯は鈴音に反抗する。

 というか全国の野菜好きと農家に謝れ!!

 

「り、両方ちゃんと食べた方が大きくなるじゃないですか!!」


 鈴音は唯のある一点を見つめながら叫ぶ。

 うん。気持ちは分かるよ。


「これ、美味しいですね」


 一城さんは佑真と会話をしながら何かを食べていた。

 あれ、何だよ・・・・・・


「はぁ~」


 色々とツッコミを入れるのに疲れた俺は焼かれている野菜を取る。

 うん、美味しい。

 焼き加減が完璧だ。

 さすが超人佑真。


「おにぃ、これ食べて~」


 鈴音は俺のお皿にピーマンだけを何個も入れてくる。

 俺もピーマンは好きではない。お願いやめてくれ。


「駄目?」


 上目遣い。

 ずるい。


「わかったよ」


 俺は渋々ピーマンを処理していく。

 そんな俺の姿を見ていた佑真が笑い、唯と一城さんもそれにつられて笑い声をあげる。


 あっという間に楽しい食事に時間は終わりを告げた。



「燃えた、燃えた!!もっと燃えろ!!」


 唯が声をあげる。

 そこだけ聞いていると悪役だが現在俺達は花火をやっているから何の問題もないだろう。


「きれ~い」


 鈴音は線香花火を見ながら呟く。


「喜んで貰えてよかったですね」


 一城さんは隣に並んで立ちながら告げてくる。

 さっきのことは互いに触れないようにしていた。


「ああ、持ってきた甲斐があったよ」


 この花火を持ってきたのは俺だ。

 家にあったからというのを理由にしているが実際には大幅に買って追加している。

 唯と鈴音の笑顔が見れたんだから安いものだ。


「よし、行くよ!!」


 佑真が打ち上げ花火に火を着ける。


「「た~まや~」」


 唯と鈴音は花火が空に咲くと同時に叫ぶ。

 二人はかなり上機嫌だ。


「本当に良かったよ」


 俺はみんなの姿を見ながらそっと呟いていた。


 


 

次話で旅行編は終了して文化祭編へと入る予定となっています。

次話は明日更新予定です。

宜しくお願いいたします。

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