~それぞれの夜~side鈴音
更新しました。
今回は二話更新です。
宜しくお願いします。
「疲れた~~」
俺は女子と入れ替えで風呂に行った後、リビングで明日のことを話してから部屋に戻って来ていた。
「ねぇ、おにぃは何か飲む?」
鈴音は部屋に備え付けられた冷蔵庫を探りながら聞いてくる。
「コーラ」
俺は昼間に買って冷蔵庫に突っ込んでいたコーラを思い出して答える。
「はい」
鈴音は俺にコーラを投げてくる。
「投げるな!!爆発するだろ」
俺は固くなっているペットボトルを見てため息を溢す。
「ごめ~ん」
鈴音は全く反省した様子もなく謝ってきた。
「まったく」
俺は呟きながらペットボトルを指で数度デコピンしたあと蓋をあける。
コーラは吹き出ずにすんだ。
「ねぇ、おにぃ」
「何だ?」
俺は口の中でシュワシュワを楽しみながら言葉を待つ。
「何で唯さんからの告白断ったの?」
その言葉を聞いた瞬間、口の中に含んでいたコーラを盛大に吹き出した。
「だ、誰から聞いた?」
俺は動揺しながら鈴音に問う。
「内緒。で、何で?一城さんにも告白されたから?」
うん。ほとんどバレてる。
もう何を言われても驚かないぞ。
「何でって言われてもな・・・・・・」
両親が死んだ日以降、責任を感じて恋愛なんて出来る気持ちじゃなかった。
と本当の事を言うのは簡単なのだがそれを言ってしまうと鈴音に事故の事を思い出させて傷つける可能性があるので言えず言い淀む。
「だっておにぃ、中学の頃唯さんのこと好きだったでしょ?」
俺はコーラを再び吹き出す。
さらに気管に入ってしまったため噎せてしまう。
苦しい。
「ゲホ、ゲホゲホ。バレてたのか?ゲホ、ゲホゲホ。ヤバい、噎せた」
俺は咳をしながら聞く。
「気づいてないと思ってた?ちょ、ちょっと、お願いだから陸で溺れて死んだなんてことにならないでよ」
咳が止まらない俺の背中を擦ってくれる。
「悪い。ありがとう」
俺は一言感謝を告げてベッドに潜る。
「おやすみ」
俺は一言告げる。
起きてると聞かれ続けるだろうから寝るのが一番だ。
「もう!!」
鈴音は不貞腐れたように呟くがそれっきり何も聞かないでくれた。
しばらくした後、おにぃは寝息を立て始めた。
何故、おにぃに聞いたかというと、確認したかったからだ。
おにぃが唯さんのことが好きなのは知っていたから何故断ったのか今後どうするのかできれば聞きたかった。
まぁ、寝てしまったのなら仕方がない。
「私の気持ちにも気づいて欲しいな~」
私はおにぃの寝顔を見ながらポロリと本音を溢してしまう。
おにぃの寝顔を見ていると兄妹で良かったと思ってしまう。
こんなおにぃの姿を見れるのは妹だけの特権だから。
でも、同時にもし兄妹ではなくただの後輩だったら、同級生だったらと考えてしまう。
おにぃとの関係が違っていたのは分かる。兄妹で無くなるのだから。
友達になれたのだろうか?恋人になれたのだろうか?
頭に色んな考えが浮かんでは消えていく。
「おにぃ、大好きだよ」
私は心に浮かんだ不安を消すように呟き、そっとおにぃの唇に自分の唇を重ねた。
「初めてなんだけどな~」
私はおにぃが寝ていることを残念に思い呟く。
起きていたらこんな大胆なことは出来ないけど。
「もう少しだけ甘えてたいな」
私はおにぃのベッドに潜り込む。
おにぃの匂い、やっぱり安心するな。
心が落ち着いていく。
その気持ち良さに身を任せそっと目を閉じた。
☆☆☆
「何だ?」
朝、目を覚ました時、普段とは違う違和感を感じて呟く。
何か温かい優しい物が俺を包んでいた。
あまりの気持ち良さに再び目を閉じようと思った時、自分が置かれている事情を把握した。
妹に、鈴音に抱きつかれている。
気づいた瞬間、心臓が加速していく。
「は?どうなってるの?何で?ヤバいヤバいヤバい」
俺は寝惚けて妹のベッドに入ってしまったのかと考える。
だが、起きてベッドから出た記憶もない。
妹が眠る筈だったベッドに目を向ける。
それで自分はちゃんと自分のベッドで寝ていたことを確信して少し安心する。
だが、この状況を何とかしないとヤバい。
朝だ。寝起きだ。息子がスタンドアップしているんだ。
男の子の生理現象であって妹に欲情している分けではない。
たぶん。
「んん」
鈴音は色っぽい寝言をあげる。
うん、ヤバい。理性がヤバい。
妹だ。妹なんだけど超絶美少女なんだよ俺の妹は!!
心の中で叫ぶ。
「ふぁ~~」
心の中の叫び声が聞こえてしまったのか起きてしまった。
死んだね。
「あれ?良い匂いがする。おにぃ?何でこんなに近くにいるの?夢?」
鈴音は寝惚けていた。
何か言えば誤魔化せたのかもしれないがパニック状態の俺にそんな余裕は無かった。
「あ」
鈴音が状況を理解する。
一瞬で顔を真っ赤にする。
殴られる。
身構えた直後
「ごめん」
鈴音は謝ってベッドから飛び出ていった。
「あれ?殴られなかった?」
俺は殴られなかったことに安堵と疑問の両方を感じながら部屋から飛び出していく鈴音の背中を見ていた。
後書きは次の話で!!




