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出発

旅行編スタート!!


「おにぃ、早く行くよ!!」


 旅行当日、家に鈴音が押し掛けてきていた。

 待ち合わせ時間までまだ余裕がある。

 本当だったらあと十分は寝ていたのたが、鈴音のピンポン連打のせいで起こされた。

 

「わかったよ、今行くから」


 玄関から声をあげる鈴音に言葉を返す。

 戸締まり等を確認して玄関に向かおうとしたその時、誰かがインターホンを鳴らした。


「こんな時に誰だ?」


 俺は呟きながら来訪者を確認する。

 画面に写しだされていたのは私服姿の一城さんだった。


「出るよ~」


 鈴音は告げる。

 ヤバい。

 俺は本能的にそう直感して玄関に向かって駆け出す。


「ちょ、ちょっと待て!!」


 俺の声より先に鈴音は扉を開いていた。


「「え?」」


 一城さんと鈴音が同時に驚きの声をあげる。

 

 先に動いたのは鈴音だった。


「兄のお友達の一城さん、おはようございます。体育祭以降ですね」


 俺は鈴音から発せられる気配に怯えながら見守る。


「妹の鈴音さんでしたね。おはようございます」


 一城さんが笑顔で答える。

 チョー怖い。

 

「で、何をしにきたんですか?」


 鈴音が問う。

 俺はこの場を去ろうと試みる。

 だが、出入り口は一つ。

 終わった・・・・・・


「篠原君が遅刻しないように呼びに来ただけですよ?友達として。妹さんはどうしてここに?今は別に暮らしてますよね?」


 お願い、笑顔で表情を固定しないで・・・・・・


「私も呼びに来ただけですよ。妹として」


 二人は火花を飛び散らせながら見つめ合う。


「あの~、もうそろそろ行かないと遅刻するんだけど」


 俺は恐る恐る声をあげる。


「「うるさい!!」」


「はい!!すみませんでした!!」


 俺は叫び玄関を強行突破した。

 

 鍵は鈴音も持ってるし大丈夫だろう。たぶん。



「おはよう」


 俺は集合場所にいた佑真と唯に声をかけた。

 遠くから見た時、美男美女のお似合いのカップルに見えた。

 

「おはよう。鈴音ちゃんは?」


「も、もう少ししたら来るんじゃないかな?」


 俺は視線を外しながら答えた。

 数分後、二人が一緒に来た。

 二人は先程までの剣呑な雰囲気はなく、俺は安堵の溜め息を溢した。


「じゃあ、行こうか」


 佑真の声を合図に俺らの旅行はスタートした。




「「「じゃんけん、ぽん。あいこでしょ!!」」」


 佑真の言葉を聞かずに女子三人はじゃんけんしてたけど。




「でね~・・・・・・」 


「そうなんですか?でも・・・・・・」


 唯と鈴音が楽しそう会話を交わす。


 電車内、向かい合う形の四人席に俺と鈴音、唯と一城さんという組み合わせで座っていた。

 俺の向かい合う前の席に唯が座っている形になる。

 佑真は離れた席に一人で座っている。

 変わろうかと提案したところ全力で首を振って断られた。


「ねぇ、こっからあと何分ぐらいかかるの?」


 鈴音が俺の服の裾を引っ張ってきて小声で聞いてくる。


「あと二時間ぐらいじゃないか?」


 俺は小声で答える。

 一城さんと唯はいつのまにか寝ていた。

 無理もない、集合したのが朝の六時だったのだから。


「結構かかるね」


 鈴音はあくびを噛み締めながら呟く。


「寝とけよ、まだ着かないから」


 俺は告げる。


「うん。そうさせてもらう」


 鈴音は言いながら俺の肩に自分の頭をのせる。


「おい、寄りかかるなら壁に・・・・・・」


 俺は途中で言葉を止めた。

 鈴音は直ぐに寝息を立てていた。

 彼女の気持ち良さそうな表情を見ると起こすのも悪くなったのでそのままにすることにした。

 俺も、そっと目を閉じる。



 しばらくの後、一人の寝息が追加された。



「僕は寝れないね」


 気持ち良さそうに眠る四人の姿を見ながら佑真は優しげに呟いていた。

 


 


次話は明日更新の予定です。

宜しくお願いいたします。

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