墓参り
更新しました。
宜しくお願いいたします。
「行こうぜ」
「うん」
俺と鈴音は父さんと母さんの墓参りに来ていた。
「二人で来るのは初めてだね」
鈴音が嬉しそうに呟く。
「そうだな。去年まで俺は一人で行ってたからな」
俺は言いながらスマホを操作してメッセージを送る。
相手は佑真だ。
「ねぇ?さっきから誰とメールしてるの?」
鈴音はスマホの画面を覗き込みながら聞いてくる。
「佑真だよ。今度皆で旅行に行くから」
俺は文字を打ち込みながら答える。
「へぇ~。・・・・・・でメンバーは?」
鈴音の声音が少し冷たいものに変化する。
「俺、佑真、唯、一城さん」
だが、連絡をとることに夢中な俺は鈴音の変化に気付かずに答えていく。
「一城さんってあの綺麗な人でしょ?」
鈴音は目を細めながら呟く。
「あ、ああ。って、何で知ってるの?」
俺は驚き、鈴音を見る。
そこで、鈴音の機嫌が物凄く悪くなっていることに気付く。
あれ?何かやらかした?
俺は思い当たることがないか探しながら鈴音の様子を見る。
鈴音の後ろに鬼を見た気がした。
「体育祭の時にあったから」
鈴音は笑顔で答える。
うん、怖い。
「へぇ~、そうなんだ」
俺は棒読みなりそうになるのを耐えながら呟く。
「ね、私も旅行について行っていいよね?」
鈴音は立ち止まると一歩近づいてきて言う。
「皆に確認しないとなんとも・・・・・・」
「いいよね、兄さん」
「はい」
俺は鈴音の圧力に屈して頷いてしまう。
「やった!!」
鈴音は嬉しそうにガッツポーズすると機嫌をやっと戻した。
「お父さん、お母さん、やっとおにぃと仲直りできたよ。心配かけちゃったよね。これからは一緒に居るから」
鈴音は両親の墓に語りかけていた。
「おにぃは何か言わなくていいの?」
鈴音はこちらを向き告げる。
「いいよ。折角なんだから鈴音が話してあげな」
俺は鈴音にはそう答えながら心の中で両親に向かって呟く。
「(父さん、母さん、今までごめん。心配だったよな?これからは俺が鈴音を守るから。あのこともいつか話すから。もう少しだけ見守っててよ)」
今まではここに来たらいつも泣いていた。
あの日以降ほとんど涙を流すことはないのだけど、
事故の時のことを思い出してしまって、
後悔、罪悪感、恐怖、色々な感情に押し潰されそうになって。
だが、今年は涙は出なかった。
自分の中の何かが変わったのだろう。
鈴音の存在も大きいのだと思う。
やっと自分の中でケジメを着けることが出来た気がした。
☆☆☆
「はぁ~~」
俺は鈴音を家に送り届けた後、家に帰り大きな溜め息を溢した。
『旅行、連れて行ってよ』
鈴音からメッセージが送られて来ていた。
連れていかなかった時のことを考え震えながら俺はメッセージの送信ボタンを押した。
『鈴音が一緒に旅行に行きたいって言ってるんだけどいいか?』
グループに送られたメッセージに最初の既読がついたのは送信から僅か十秒後のことだった。
次回から旅行編スタートです。
キャラランキング発表回作成中です。
集計は直ぐに終わったんだけどね(笑)
ブックマーク、評価してくださった方々ありがとうございます。
数が増加しているのを見ると嬉しくなります。
次話は明日更新の予定です。
宜しくお願いいたします。




