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花火大会

唯のターンスタート!!

8月17日少し改稿しました。


「悪い、遅くなった」


 俺は唯との待ち合わせ場所に息を切らせながら来ていた。

 準備に思ったより時間がかかったため走って来たのだが待ち合わせ時間に少し遅れてしまったのだ。


「大丈夫だよ。まぁ、遅れた分何か奢ってよね」


 唯は悪戯っぽく微笑みながら俺のことを許してくれた。


 唯は赤い浴衣に身を包んでいた。

 俺は、浴衣は可愛いより綺麗という印象を抱かせるものだと思っていたが、唯の浴衣姿は明るい茶色の髪と少し幼さの顔も相まって可愛いと感じさせられた。


「どう?見惚れた?」


 唯は俺が唯のことを見つめてしまっていたことに気づいたのか少し顔を赤らめながらも悪戯っぽい顔を浮かべたまま呟く。


「ああ。可愛いから見惚れてた。浴衣、似合ってる」


 俺はバレていた恥ずかしさのため早口で告げる。


「え、あ、うん。ありがとう」


 唯は顔を林檎のように真っ赤に染める。


「行こうぜ」


 俺は唯の手を引いて歩き始めた。



「う~ん、おいしい~」


 唯はリンゴ飴を幸せそうに食べる。


「よく食べるな」


 俺は驚き半分呆れ半分で呟く。


「そんなに食べてないよ~」


 唯は言いながら飴を口にするが俺は今まで唯が食べた物を思い出して溜め息をこぼす。

 たこ焼き

 かき氷(苺味)

 イカ焼き

 焼きそば

 焼き鳥

 チョコバナナ

 フランクフルト

 今川焼き

 ベビーカステラ

 リンゴ飴


 計5000円分。

 一部食べ物に関しては二人前以上食べている。

 全て俺が奢った。

 

 さすがに、唯がフランクフルトとチョコバナナを食べていた時には少し卑猥な事を想像してしまった。

 だが、それは男子高校生の性だ。ご容赦願いたい。


「やっぱり屋台の食べ物はおいしいな~」


 呟きながらリンゴ飴を舐める腹ペコ魔神唯様の幸せそうな表情を見ると5000円が安く見えてくるから不思議だった。


「もうそろそろ花火始まるだろ?行こう」


 俺は唯と共に小学生の頃良く一緒に見ていた場所(特等席)へと移動する。


 三年以上たった今もその場所は何も変わらないままだった。


「ここは変わらないね。私達はこんなに大きくなったのに」


 唯も同じことを考えていたのか何かを思い出すような表情で呟く。


 大きな岩の上に二人並んで腰をかける。

 腕時計で時間を確認すると花火の開始時刻まで三十分近く時間があった。


「俺さ、鈴音にあの日のこと、父さんと母さんが死んだ日のことを話したんだ」


 俺は覚悟を決めて口を開いた。

 覚悟と裏腹に言葉は震えていた。


「え?」


 唯は驚きながらこちらを見つめる。


「唯にも話すよ。約束だから」


 俺は静かに語り始めた。


「これがお前に隠していたことだよ」


 俺は全てを喋り終え締めくくった。

 鈴音に話したことと同じことを唯に話した。


「話してくれてありがとうね」


 唯は呟き、それっきり黙ってしまう。


 何か喋るべきか彼女の表情を見ながら考えていると、何かの爆発音(?)が鳴り始めた。


 直後、空に大きな花火が咲いた。

 遠くで歓声が上がる。


「綺麗だね」


 唯は花火を見ながら呟く。


「ああ。綺麗、だな」


 俺は、空を見上げる唯の横顔を見ながら呟いていた。


「ふぇ?」


 俺は奇妙な声をあげてしまう。

 唯が俺の肩に頭を乗せ、手を繋いで来たのだ。


「今日は、今日だけはこのままで居させてよ。お願い」


 声は不安で震えていた。


「ああ」


 俺はそんな一言しか返せなかった。


「ありがとう」


 唯は嬉しそうに答え、それっきり口を閉ざす。

 先程とは違う静けさが生まれる。

 辺りに響く音は花火と虫の鳴き声。

 そんな静けさが心地良くて、何も語らず空を見上げる。



 俺は、触れあった部分から伝わる彼女の熱を感じながら花火を見続けた。

今回は花火大会というベタな夏イベントを書かせていただきました。

投票締め切らせていただきました。

結果は後日発表させていただきます。


ブックマーク、評価していただくと数字として表れ松輝のモチベーションに繋がるのでしていただけると嬉しいです(笑)


次話は明日更新の予定です。

宜しくお願いいたします。

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