配役
更新しました。
宜しくお願いいたします。
「えーと、やりたい役がある人は挙手をお願いしまーす」
唯が全員に向かって告げる。
だが、遠慮しているのか誰も手をあげない。
「あの~、推薦ってありですか?」
「うん。いいよ」
唯が答える。
「じゃあ、私、一城さんをお姫様役に推薦したいです」
一人の生徒が一城さんに期待の視線を向ける。
「私も一城さんがやるのに賛成。一城さん綺麗だからお姫様役にぴったりじゃん」
他の女子生徒達も暫く考えた後、それぞれの考えを口にする。
そして、その考えは全て一城さんを推薦するという内容だった。
「えーと、一城さん、どうする?お姫様役やる?」
唯が遠慮がちに唯に声をかける。
「あ、えーと、私でいいなら・・・・・・」
そして、一城さんはお姫様役に決定した。
「じゃあ、一城さん宜しくお願いします」
クラス全員が拍手を送る。
だが、俺は拍手をすることは出来なかった。
一城さんがほんの少し苦しそうな表情をしたのが見えたから。
「次は王子様役決めたいと思います。やりたい人いますか?」
また誰も手をあげない。
相手役が一城さんになったこともありハードルが高くなってしまったのだろう。
「男子の皆さん。・・・・・・キスシーンがありますよ」
吉田さんがボソッと呟いた瞬間クラスの男子のほぼ全員が挙手をした。
手をあげた男子達は羞恥心など既に忘れていた。
ちなみに、俺、佑真、加藤駿介(クラスで二番目のイケメン)は手をあげていない。
「男子は単純ですね。キスシーンのことを聞いて手をあげた邪な人達に王子役をさせると思いますか?」
吉田さんが苦笑しながら告げる。
彼女の宣告に手をあげた男子が口をポカリと開いた間抜け面を作る。
そして、手をあげていなかった俺達は顔を青ざめさせていた。
彼女の言葉は手を挙げなかった人達にやらせるという意味も含んでいたからだ。
「俺は佑真が王子役にピッタリだと思うなー」
俺は棒読みで告げる。
人前に立って演技するなんて恥ずか死にしてしまう。
死にたくはないので親友を売る。
「僕は澪が王子役にピッタリだと思うよ。中学の文化祭で演劇をやった時主人公してたし・・・・・・」
佑真はお返しとばかりに俺の黒歴史をバラす。
唯は必死に笑いをこらえている。
恐らく中学の文化祭のことを思い出したのだろう。
俺達三人以外同じ中学の人がいないからまだいいもののいたら不登校になってた自信がある。
それを分かってやっているのだろう佑真は・・・・・・
「わかった、僕は魔王役をやろう。澪か加藤君のどっちかが王子役お願い」
言いながら黒板に自分の名前を書いてしまう。
「「あ」」
俺と加藤の間の抜けた声が教室に響く。
「加藤、お前王子役やれよ」
「いやいや篠原がやれよ」
二人で言い合いを続け・・・・・・
「「じゃんけんぽん!!あいこでしょ!!」」
じゃんけんの結果、
「よっしゃあーーー」
無事に負け俺は見事王子役を免れた。
一城さんが少し悲しそうな表情をしていたがたぶん王子役を三人とも嫌がったからだろう。
たぶん。
この後、他の役は無事に決まっていき夏休み前最後のホームルームは終わった。
次回から夏休み編スタートします。
更新は明日の予定です。
宜しくお願いいたします。




