私が彼を好きになった理由
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宜しくお願いいたします。
「篠原君良い子じゃない。人の為に行動することも出来るし、美姫も篠原君みたいな子を彼氏にしないと」
篠原君が帰った後、母がニヤニヤしながら告げてきた。
「うるさいなー」
私は母に言葉を返す。
「父さんも篠原君なら良いと思うぞ。彼なら美姫を幸せにしてくれそうだしな」
父までノッテしまう。
普通、父親は娘の彼氏にとってラスボス的な存在だと思うのだけれど・・・・・・
「父さんまで悪ノリしないで」
私は、父の事を睨みそのまま部屋へと戻る。
「はぁ~~~~」
ベッドに飛び込み溜め息を溢す。
本当は篠原君に妹を雪を助けてもらったことは分かっていた。
篠原君には確証がなかったなどと言ったが正直な所、雪を助けてもらった時しっかりと顔を見ていた。
それだけじゃない。
その後も街などで度々彼の姿を見つけていた。
「二人っきりだったから手を出されるかと思ったんだけど何もされなかったし、私、意識されてないのかな?」
今日は彼女的には積極的にアピールしたつもりだったのだが篠原の葛藤を知るよしもない彼女は何も意識されていないと思ってしまった。
「はぁ~~~」
また溜め息を溢しながら、雪が篠原君に助けてもらった日、私が彼と出会った日のことを思い出していた。
☆☆☆
その日は、寒い日だった。
晴れてはいるものの寒さは健在で昨日が雨だったこともあり、地面の一部は凍結していた。
「ねぇ、ママ、今日はどこに行くの?」
妹の雪が凍結した地面の上に片足を置き、ツルツルと滑らせて遊びながら問う。
「スーパーよ」
母は優しく答える。
「お菓子買っていい?」
雪は母に上目遣いで尋ねる。
今からこの様子だと将来悪女になりそうである。
その後、買い物を終えて家へと向かっている時、それは起こった。
「あー、春ちゃんだー」
雪が、車線を跨いで反対側の道に友達を見つけた。
雪は春ちゃんの元に行こうと勝手に横断歩道を走って行く。
信号は点滅していた。
「あ、こら、雪!!」
私は雪の行動に気付き声をあげる。
私の声を聞き父と電話していた母も雪の行動に気づく。
だが、私達は気づくまでに時間がかかってしまっており、違う横断歩道を渡ってしまっていた。
こちらの信号は車線側が青になっており向かうことが出来ない。
雪が渡っている横断歩道が青だということに若干の安堵を感じている中、
妹は転んだ。
恐らく地面が凍結して滑りやすくなっていたのだろう。
妹はその場で立ち上がれず泣いてしまう。
横断歩道の信号が赤に変わる。
車線側も黄色信号になったその時、信号が変わらない内に通りたかった車が曲がる。
曲がる直前に車の運転手は雪の存在に気づくが遅かった。
急ブレーキを踏みながらも車は雪へと向かう。
見ていた誰もが雪が車に轢かれてしまうシーンを幻視してしまったその時、一つの人影が雪の前を通った気がした。
直後、車が雪のいた場所を通る。
「雪ーーーー!!」
私は恐怖のあまり動くことも出来ず妹の名を叫ぶことしか出来なかった。
「お、おねぇちゃん・・・・・・」
私の耳に妹の声が届く。
「ゆ、ゆき?」
私が恐る恐る振り向くと、そこには一人の男子に抱き抱えられた妹がいた。
「大丈夫か?怪我はないか?」
雪を助けてくれた男子は雪のことを離して優しい声で問う。
「う、うん」
雪は今にも泣きそうになるのを耐えながら答える。
「良かった」
彼は雪の頭をポンポンと撫でながら答える。
「あ、ママ、お姉ちゃん」
彼女は駆け寄って来た私達に気付き走りよってくる。
「これからは気をつけるんだぞ」
彼の言葉が聞こえる。
「あ、あの娘を・・・・・・」
母が彼に言葉を掛けようした時には既に彼の姿はなかった。
それが、私が彼に初めて出会った日の出来事である。
それから数日後、私は偶々街で彼を見つけた。
声を掛ける勇気がなく彼の姿を目で追っていると彼は重い荷物を運ぶお婆さんに声をかけた。
彼は何か話した後、お婆さんから荷物を受け取った。
そして、一緒に並んで歩き始めた。
私は気になってしまい後を追うと、彼はお婆さんの家まで荷物を運んだ。
「悪いわねー。助かったよ」
「いえいえ。お役に立てて何よりです。それでは」
「ありがとうね」
彼は会話を終え、来た道を戻って行く。
その時、私は彼の優しさに惚れてしまった。
見返りを求めているわけではない。
人の為に行動出来る彼に心を奪われた。
自分は今まで人を好きになることはなかった。
自慢ではないが、容姿の為か中学で告白されることは何回もあった。
だが、人を好きになるということがわからなかった私はその告白の全てを理由もなく断っていた。
そんな私に男子が優しくしてくれるのは見返りを求めてだった。
だから、私は彼を好きになったのだろう。
その後も度々街で彼を見かけた。
そして、ほぼ必ずと言っていいほど彼は人助けをしていた。
そんな姿を見るたびに惹かれていった。
自分の気持ちに気づいたせいで声をかけられなくなってしまったのだが・・・・・・
高校生になり、彼と同じ学校しかも同じクラスとなった。
私は入学式の日、家に帰った後一日中はしゃぎ喜んでしまったのだが、それはみんなには内緒だ。
そして、入学から一ヶ以内に彼に声を掛けようと決意した。
のだが、一ヶ月が経ち、その間に何人もの男子に告白され断り、『白雪姫』なんて呼ばれ始めた私は彼に声をかけることが出来ずにいた。
彼には可愛いく男子からも人気のある幼なじみの唯さんまでいて私はかなり焦った。
それから二週間後、思いを告げることを決意した。
振られるのは承知の上で彼に私を意識させるために告白しようと決意した。
そして、あの告白の日へと至った。
初めての告白でドキドキしたし、振られたのはやはりショックだったが彼に断られた理由を聞いて安心したのもまた事実だ。
唯さんと同時に告白してしまったこと、彼への第一声が敬語だったためその後も敬語になってしまったのはまぁ、何と言うかであるが・・・・・・
そして、普通に話せるようになった現在、彼に雪の事を話していなかったのは自分の弱い心のせいである。
彼にその事を知られ、私が告白した理由が好意ではなく、妹を助けてもらった恩故にと思われるのが怖かったからである。
妹が助けてもらった時のことはキッカケであって理由ではない。
こんな臆病な気持ち故に彼に雪の事を話すことができず、礼を言うことしか出来なかった。
そして、今日へと至った。
「はぁ~~~」
私は今日何度目かになる溜め息を溢す。
そして、彼のことを考えながら眠りについた。
今回は一城さんの回想回でした。
さて、キャラランキングの方ですが投票してくださった方々ありがとうございます。ですがこのままだとランキングにならないと言う悲しさ・・・・・・
多くの投票お待ちしております。
ジャンル別日間ランキングの方は20位代まで戻って来ていました。
ブックマーク、評価をくださった皆様ありがとうございます。
活動報告の方でも投稿させていただいたのですがこの度Twitterアカウント作成させていただきました。
感想、キャラ投票そちらでも受け付けております。宜しくお願いいたします。
IDは @rwybmDEanlXNvabです。
次話は明日投稿の予定です。
宜しくお願いいたします。




