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澪の過去、鈴音の思い

更新しました!!

 

時系列は少し遡り体育祭後の鈴音の回想シーンです。

回想シーンを書くのは初めてなので至らない点が多いと思いますが宜しくお願いいたします。

 


 勝利で試合を終え、みんなに取り囲まれるおにぃに「おつかれ」と呟き学校を後にした。

 多分おにぃには聞こえていないだろう。

 帰り道を歩く中、少し昔、おにぃが中学の頃の事を思い出していた。


☆☆☆


 中学二年生の夏までおにぃは学校で比較的人気のある人物だった。

 

 当時所属していたサッカー部では一年で既にレギュラーとなっており、チームが初の全国大会に出場するのにも大きく貢献していた。

 

 女子からの人気も高く、おにぃに思いを寄せる生徒は一年の頃から多かったらしい。

 だが、おにぃの側には常に幼なじみで美人の唯さんがいたため全員が告白する前に諦めていたみたいだ。 

 私が中学に入ってからも同級生がおにぃに好意を寄せていたが直ぐに諦めていた。

 唯さんの存在が大きかったのだろう。


 まぁ、事情を知る筈もないおにぃは自分はモテないと思っていたみたいだけど・・・・・・


 だがある日、とある出来事によっておにぃは変わった。

 いや、変えられてしまったというべきかもしれない。


 その日を境におにぃは全然笑わなくなってしまった。

 私だって同じような気持ちだった。

 だけど、おにぃが受けた傷は私よりも深かった。

 暫くの間、サッカーを続けていたもののしている最中も笑わなくなり、それから暫くしてサッカーを止めた。

 

 この時、私はなんとも言えない気持ちを抱いた。

 私は、おにぃがサッカーをしている姿が大好きだった。

 おにぃがサッカーをしている事が誇りだった。

 だけど、おにぃが苦しそうにサッカーをするのは見ていて辛かった。

 結局、私はおにぃに何も言うことが出来なかった。


 そして、その年の十月のある日、私達兄妹の関係を完全に変える(壊す)出来事が起きた。


「鈴音ちゃんは私達と暮らすわよ」


 祖母が何の前触れもなく告げた。


「え?」


 最初、言われたことの意味が分からず驚きの声をあげてしまった。

 今までおにぃと一緒に暮らして来たのだ。

 それなのに突然そんなことを言われて私が戸惑っていると、


「俺はどうすればいい?」


 おにぃは確認のように祖母に告げた。


「あなたは一人で暮らしなさい。家は使っていいわ」


 私は祖母の言葉を予想していた。

 だが、予想出来ていたとは言え実際に言うとは思っていなかったが。


「わかった」


 おにぃは静かに呟く。


「やだ。私おにぃと一緒がいい」


 私は祖母に告げる。

 その言葉はまるで幼稚園児の駄々っ子のようだった。


「ダメよ」


 祖母はキツく言い放ち私の腕を掴み無理矢理連れていこうとする。


「おにぃ、お願い。一緒にいさせて」


 私は涙を流しながらおにぃに向かって叫ぶ。

 だが、おにぃは背中を向けてさって行ってしまう。

 私の言葉は届いていないようだった。

 私は祖母に連れられ一緒に暮らすことになった。

 祖母に連れていかれた日、一晩中声を上げて泣いたのを覚えている。


 その後、転校させようとする祖母を何とか説得し何とかおにぃと同じ学校に行くことができた。


「おにぃ、おはよう」


 私は連れられた日の事を思い出し、無視される恐怖に耐えながら声をかけた。


「・・・・・・」


 だが、おにぃは私の事を見もせずにその場を立ち去った。

 おにぃが変わってしまったあの日から何とか兄妹としての関係は続いていた。

 しかし、この日、完全に壊れてしまったのを感じてまた泣いた。


 この日から私はおにぃのことを兄さんと呼ぶようになった。


「佑真先輩、兄さんはどんな様子ですか?」


 私が兄さんと呼ぶようになった日から私とおにぃの会話は完全になくなった。

 疎遠状態となった。

 だが、どうしてもおにぃのことが気になり、同じ部活の先輩でありおにぃの親友である佑真先輩にちょくちょくおにぃの事を聞いていた。 


「まぁ、いつも通りといえばいつも通りじゃないかな?」


 佑真先輩の言ういつも通りが変わってしまった後のいつも通りだということ分かっていた。

 私が離れることで前のおにぃに戻ってくれるならそれでもいいと思っていた。

 だが、戻る筈も無く、おにぃはさらに壊れていった。


「ねぇ、鈴音ちゃんのお兄さんが他校の不良と乱闘騒ぎを起こしたって本当なの?」


 ある日、突然問われた友人の言葉に私は驚いていた。


「え?どういうこと?」


「朝、澪先輩が生徒指導室に入っていくの見たの。怪我をしてたから友達達に確認したらその中にこの動画をネットで見つけてた子がいたの・・・・・・ここ数ヶ月様子がおかしかったけど優しい先輩だったから信じられなくって」


 彼女は呟きながら自分のスマホを差し出す。


 動画を目にして私は息を飲んだ。

 おにぃと思われる人物が他校の生徒五人を相手に殴りあいをしていた。

 約十分にも及ぶ殴り合いの後、五人が地面に倒れこみおにぃと思われる人物がただ一人立っていた。


「ちょっ、ちょっと鈴音ちゃん?」


 私は動画を見終わるとすぐに駆け出していた。

 向かう先はおにぃのいるクラスだった。


「おにぃ!!」


 私は教室におにぃの姿を見かけると叫んでいた。


「なんだ、鈴音」


 おにぃが私の名前を呼ぶ。

 それは今までのように愛称での呼び方ではなかった。


「ねえ、ケンカしたって本当?」


 私は込み上げる怒りに任せて問う。

 教室にいる生徒達がおにぃを見つめる。


「ああ」


 おにぃは答える。

 私は衝撃でその場に崩れてしまいそうになる。

 必死に足に力をいれて耐える。


「どうして?」


 私はおにぃに問う。


「うるせぇよ。去れ」


「なんでって言ってんのよ!!」


 私はおにぃの言葉に我慢出来ず叫ぶ。


「うるせぇって言ってんだろ!!」


 おにぃは叫びながら私の事を押し飛ばす。


「痛!!」


 私は壁に背中を思いっきりぶつける。

 背中に伝わる痛みとおにぃに飛ばされた子とへの衝撃で思わず涙をこぼしてしまう。


「澪!!」


 今まで見守っていた佑真先輩だが、彼は私が飛ばされるとすぐにおにぃの事を殴った。

 優しい佑真先輩にしてはとても珍しいことだった。


「チッ・・・・・・」


 おにぃは舌打ちをして教室を去っていた。


 この日以降、ケンカの話は広がり、その後も度々あがるケンカの噂によって今までなんとか交友を続けていた友人達はおにぃと距離を置くようになり、仲直りした佑真先輩と唯さんを除きクラスで浮いていった。


 そして、三年生になった直後、おにぃは不登校気味となった。

 体育祭を最後に私はおにぃの姿を見ることはなかった。


 佑真先輩との会話でおにぃが唯さんと先輩の二人から家で勉強を教えてもらっていることを聞いた。

 おにぃが徐々にではあるが前のおにぃに戻って来ていることも。


 そして、おにぃは現在通っている高校に無事合格した。

 受験する際に先生達と色々あったらしいが・・・・・・


 

 おにぃが高校に入ってからも佑真先輩に色々とおにぃの事を聞いていた。

 高校では、中学の頃より明るくなり、友達も数人作り楽しんでいることを聞いてホッとした。


そんな中、数日前、突然唯さんからメールが来た。

 内容は、体育祭でサッカーに出るというものだった。

 中学最後の体育祭で一切動かなかったおにぃがサッカーをする。

 それはとても衝撃で、恐らくおにぃの心を動かしたであろう唯さんや佑真さんが羨ましかった。


 佑真先輩から決勝戦しか出ないことを聞いていたので遅めに高校へと向かった。

 二日目ということもあり、生徒以外の人はあまりいなかった。

 

 試合が始まり、おにぃのプレーを見て、私は思わず涙をこぼしてしまった。

 おにぃが笑顔でサッカーをしていた。

 真剣な表情ながらも楽しんでいるのがわかった。

 その事が自分のことのように嬉しくて嬉し涙を流していた。


 だが、試合の最中である異変に気づいた。

 相手選手がおにぃの右足を審判にバレないように踏んだり、酷いときではスライディングで足を狙いに来ていた。


 試合終了間近シュートを外したのを見た後、唯さん達に挨拶をして去っていったおにぃを追いかけた。


 おにぃは恐らく足を冷やそうと水道に向かっていた。


「あんた、そんなところで何をしてるの?」


 少しキツく声をかけてしまった。

 その後、おにぃと少し会話(?)をして足を冷やした。


 足を冷やし終えた後、私はおにぃに何故こんな思いをしてまで試合を続けるのか聞いた。


 分からない、そう答えたおにぃの顔は変わる前のおにぃのようだった。


「そう。私ね、おにぃが楽しそうに笑ってるの久しぶりに見たよ」


 私はそれだけ告げた。

 おにぃと呼んでしまった恥ずかしさのも相まって、走って逃げてしまった。


 

 試合を終えた後、おにぃは唯さんにおにぃの友人と紹介された人がおにぃに抱きついていた。

 少し、ヤキモチを妬いてしまったが、心の中でおにぃを変えてくれた彼女にお礼を言いながら学校を後にした。



☆☆☆


「一城さんって人物凄く美人さんだったなぁ~」


 私は、おにぃに抱きついた人の事を思い出しながら呟いた。


「でも、負けない」


 私は自然と呟いていた。


 私はおにぃのことが好きだから。

 兄として、家族としではなく一人の男性として。

 兄妹で好きになるなど物語(空想)上での話だろう。

 他人に自分の気持ちを知られたら何を言われるか分からない。

 だけど、私はおにぃが好きだ、大好きだ。

 誰に否定されようともこの気持ちを騙すことは出来ない。

 妹ではない一城さんや唯さんに比べたら不利だろう。

 だけど、なんとしてでも二人に負けたくないそう強く思った。

 

「ただいま~」

 

 私は新たな決意を抱きながら家の扉を開いた。

 


 

 

 読んでいただきありがとうございます。

 さて、妹ヒロイン鈴音視点のお話でした。

 今までの中で最も長いお話となってしまいました。

 鈴音の回想シーンと気持ちは一気に書こうと思った結果ですご了承ください(笑)。

一応まとめると

 鈴音、佑真、澪は中学時サッカー部に所属。

 唯は帰宅部でした。

 


ブックマーク、評価ポイントの方いただければ嬉しいです。

次話は明日更新の予定です。

宜しくお願い致します。

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