試合
遂に試合パートが始まります。
楽しんでもらえればと思います。
俺達はセンターサークルに立っていた。
「ここに立つのも久しぶりだな」
俺はサッカーボールをセンターマークに置きながら呟く。
「よう、よく勝ち上がってこれたなぁ。運がいいじゃねぇか。でもそれもここまでだ。実力の違いってもんを見せてやるよ」
金本がまるで悪役のような顔をしながら告げる。
「うるせぇよ。勝ち上がって来たのは運じゃない、このチームの実力だ」
俺は金本に言い返す。
「まあいい。勝手に吠えてろ」
金本は自分のフィールドへと戻って行く。
「みんな、決勝戦楽しんで勝とう!!」
「「「「おう!!」」」」
佑真の声にチーム全員が答える。
「佑真、話した通りで頼む」
「わかった。ミスらないでよ澪」
「ああ」
俺は佑真と言葉を交わす。
俺は高鳴る胸の音を聞きながら始まりの笛を待つ。
そして、キックオフの笛が鳴った。
「澪」
俺はボールを佑真から受け取り一人で敵陣に切り込む。
反応が遅れた相手フォワードをドリブルで抜く。
次にボールを取りに来た一人をシザーズフェイントで、もう一人を股抜きで抜く。
ドリブルの速度を緩めることなく進むとペナルティーマークが見えてくる。
ペナルティエリアまであと少しと言うところで三人のディフェンダーが一気に距離を詰めブロックに入る。
同時に来た二人をクルッと回って抜く。
マルセイユルーレットという技だ。
遅れてきた一人がスライディングをしてくる。
俺は、ボールを両足のインサイドで挟み、持ち上げジャンプをしてスライディングを避ける。
そのまま距離を詰めシュート。
ボールはゴールの左上の角に吸い込まれるように飛んでいき、ゴールネットに触れた。
「「「「うぉ~~~~~~」」」」
瞬間、校庭を大歓声が包む。
俺はフォローの為に後ろをついて来てくれていた佑真とハイタッチを交わし自分のコートへと戻って行く。
「俺の中学の時のことを調べるなら、もっと詳しく調べとけば良かったな」
俺は途中スレ違った金本に小声で呟く。
「佑真から経験者とは聞いてたけどここまでとは思ってなかったぜ。お前、うちのレギュラーより上手いんじゃないか?」
桜井は俺に抱きつきながら告げる。
男子に抱きつかれても嬉しくないので離れて欲しい・・・・・・
「そんなことはねぇよ。今のは相手が油断してたから上手くいっただけだよ」
俺は桜井の言葉に首を横に振る。
金本達が俺の実力を知らなかったからこそ出来たプレーだった。
彼がサッカーで勝負を挑んで来た時点で俺の不良(?)だった頃の事しか調べていないとわかった。
だから、彼らが油断している試合開始瞬間を狙ったのだ。
正直ここまで上手く行くとは思っていなかったけど
「このまま点を取っていくぞ!!」
俺は引っ付いたままの桜井を引き剥がし全員へと声をかけ、位置に付いた。
「すごい」
私は篠原君の姿に見惚れてしまっていた。
いつもの優しい雰囲気と違う力強い彼に・・・・・・
「だから言ったでしょ、見てれば分かるって」
宮内さんは優しく、少し悲しそうな表情をしていた。
「ちょっと悔しいな~。澪ね、去年も同じようなことがあったんだよ。澪はその時既にサッカー部をやめてたんだよね。で、その時の賭けの対象が私だったんだ・・・・・・」
彼女はどこか懐かしそうに語る。
「その時も私が勝手に勝負を受けちゃったんだ。そして、試合の時、澪は何もしなかったんだよ」
「え?何もしなかった?」
私は宮内さんの言葉の意味が分からず確認のように彼女に問う。
「文字通り何もしなかったよ、ボールをもらった時はさすがに仲間にパスしてたけどさ、ただ、コートの同じところに立ってるだけ。相手が来ても、ボールが来ても動かなかった」
彼女はだからと呟き言葉を続ける。
「彼の気持ちを動かした貴女が少し羨ましいよ」
彼女はそれっきり何も喋らずコートに立つ篠原君を見つめていた。
羨ましいか、私も同じ気持ちを抱いてるんだけどな・・・・・・
私は胸のなかで呟きながら篠原君に視線を向けた。
視線の先では試合が動いていた。
一点決めた後は試合の展開は早かった。
すぐに点を取り返された。
金本達がレギュラー候補と呼ばれる実力を遺憾なく発揮したのだ。
一回目の守備でディフェンダーの桜井達がなんとかボールを奪ったもののパスを繋いでいく際ミッドフィルダーの男子がボールを奪われあっという間に点をとられたのだ。
再開後、俺はすぐに攻めたが一点目のこともありマークが厳しく、佑真との連携によってなんとか二点目を入れた。
しかし、その後桜井がペナルティーエリア内でファウルを取ってしまいPKによって点を取られた。
そして、現在一進一退の攻防が行われている。
「澪!!」
俺は佑真からパスを受け取り一気に切り込む。
一人目をフェイントで二人目を股抜きで抜き三人目が来たところで・・・・・・ファウルをもらった。
「チッ」
相手選手は謝りもせず舌打ちをして去っていく。
「大丈夫かい?」
佑真は俺へと声をかける。
「大丈夫だ。残り時間は?」
俺は佑真の手を取り立ち上がりながら時間を問う。
この試合は三十分マッチで行われている。
同点だった場合PKによって勝敗が決められるのだが、うちのクラスがPKでやりあった場合勝てる確率が少ない為かなり焦っていた。
「あと十分だ。このフリーキックを決めれれば・・・・・・」
俺の考えに気づいている佑真は時間を告げながら自身の考えを呟く。
「よし、俺が蹴るか。桜井、ボール取られた時の守備は頼む」
桜井に指示を送りながらボールを置く。
俺はフィールドを見回す。
どこにどう蹴るかを決めると助走を付けてボールを蹴った。
選手の壁を超え、ボールはゴールへと向かう。
キーパーがボールへと手を伸ばしたその時、ボールが不規則な変化を起こしキーパーの予想より若干ズレてゴールへと収まった。
「「「「キャーーーー」」」」
と女子の黄色い歓声があがる。
二人のこともあり、基本殺意に近いものを向けられている俺からするとそんな声が上がったことがかなり嬉しい。
「おい、今の無回転シュートじゃないか?」
女子が騒ぐなか一人の男子生徒が声をあげる。
それに続くようにサッカー部の男子を中心として盛り上がっていく。
「お前、本当にスゲーな」
自陣に戻ると桜井が唖然としていた。
「無回転だとコントロールがかなり落ちるから賭けだったんだけどな。いい具合に変化してくれて助かったよ」
俺は思っていたことを呟く。
「よしみんな、残り八分守り抜くよ」
「「「「おう」」」」
佑真がみんなをまとめる。
彼の言葉に全員が答え、その後ポジションに戻って行く。
そして三分後、俺達は再び同点へと追い付かれた。
些細なミスからあっという間に取られてしまったのだ。
「みんな、本当にすまん」
ミスをした男子生徒、野球部の斎藤は全員へと謝っていた。
「気にしなくていい。もう一点取ればいいだけだ」
桜井は彼の肩をポンと叩き、ポジションへと戻って行く。
「まだ、挽回できるよ。頑張ろうぜ」
一人一人がそれぞれ彼へと声をかけて戻っていく。
斎藤は今にも泣きそうになっていた。
「篠原・・・・・・」
彼は俺へと視線を向ける。
「気にすんなよ。お前らは普通に体育祭を楽しんでくれればいいんだよ」
俺は彼へ告げ、背中を押してやると自分のポジションへと戻る。
「あと5分で一点、行ける?」
佑真は何故かニヤニヤしながら俺に問う。
「当然」
そして、そこから試合は硬直状態となった。
「クソ」
俺は言葉を吐きすてる。
同点になった時点で彼らは守りを固めていた。
PKに持ち込む気満々であった。
守りが固すぎて攻めることが出来ない。
「残り一分」
佑真が呟く。その声には焦りが表れていた。
「佑真!!」
俺は佑真へとボールを渡す。
佑真はボールを受け取った瞬間、一気に攻め込む。
「あと少し」
彼は苛立ちを含んだ声で呟く。
そして、スライディングをもらいボールがサイドラインへと飛んで行く。
ボールをサイドラインを跨ごうとしたその時、斎藤がヘッドスライディングをしてボールを桜井へと転がす。
「頼む」
彼は額に擦り傷を作りながら叫ぶ。
桜井はボールを上手くコントロールし相手選手を抜く。
「佑真!!」
そして、ボールは佑真へと回る。
二人の選手にコースを塞がれるもマルセイユルーレットで二人を抜きさる。
「澪!!」
そして、俺へとボールが渡った。
「決める!!」
俺は呟き、シュートを放つ。
そして、ボールはゴールの方向へと向かっていった。
ゴールの完全な枠外へ・・・・・・
俺は、最後の最後でシュートをふかしていた。
ボールは勢いを弱めず飛んでいき、校舎の窓ガラスにぶつかった瞬間、終了を告げる笛が鳴り響いた。
さて、ラノベの主人公らしい無双回(?)でしたが最後でやらかす澪君でした。
さて、もう少し体育祭は続きます。
楽しんでいただければなによりです。
次回予告!!
次回三人目のヒロイン現れる。
次回予告を信じるか信じないかはあなた次第!!
次話は明日投稿する予定です。
⚠️あくまで予定ですので更新されなかった場合はお察しください(笑)。
宜しくお願いいたします。




