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体育祭一日目~昼休み&午後の部~

更新しました。

宜しくお願いいたします。


 俺達は、一位で午前の部を終えた後昼食を取ろうとしていた。

 多くの生徒が自分達のクラスの席で食べようとする中、俺は唯と一城さんを連れて屋上へ行こうとしていた。


「たまには、俺達も一緒に一城さんと宮内さんとご飯食べさせろよ」


 男子生徒が言いながら俺の行く手を遮る。


「そうそう。たまにはいいじゃん」


「俺達も混ぜてよ~~」


 他の生徒も声をかけてくる。

 正直、ノリがナンパ男である。

 クラスの女子が若干引いている・・・・・・



「私はいいと思いますよ。篠原さん、いいですよね?みんなで食べましょう」


「私もいいと思うよ。最近は一城さんと澪の三人だけだから」


 二人はそれぞれ応える。


「じゃあみんなで食べるか」


「「「「よっしゃあーーーーー」」」」


 男子達は涙を流しながら喜ぶ。

 恐らく体育祭ということもありテンションが上がっているのだろう。


「私が作ってきた弁当食べる?今日は体育祭用でいつもよりたくさん作ってきたから一人一品位は食べれると思うんだけど」


「ま、マジですか?食べさせていただきます」


「食べます。死んでも食べます」


「というか、篠原のやつ毎日食べてるのか、ズルいぞ、呪い殺してやる」


 男子生徒達がそれぞれの反応をする中、俺は全身から血の気が引くのを感じた。

 

「どうしたんだい澪?」


「佑真、早く逃げろ。ここから出来るだけ遠くに、一城さんの弁当がなくなるまで・・・・・・」


 俺は出来るだ真剣に、だが一城さんに聞こえないよう小さな声で佑真に告げる。


「わ、分かった」


 佑真は俺の言葉に従い男子生徒数名を連れてこの場を去る。


「じゃあ、お弁当取ってくるね」


 一城さんは言うと弁当を取りに自分の席に荷物を取りに行く。


「みんな、今すぐ逃げるんだ。早く逃げないと手遅れになる。頼む、早く逃げてくれ」


 俺は男子生徒達に向かって叫ぶ。

 この場には既に内のクラスの男子の過半数が集まって来ていた。

 

「もしかして、あの日の早退って・・・・・・」


「ああ、あの弁当だ・・・・・・」


 俺の返事に唯が顔を真っ青にする。


「ああ?一人だけで独占しようっていうのか?」


「何を言ってるんだお前?」


 クラスの男子からは怒りの視線と言葉を向けられる。

 だが、俺は諦めず告げる。


「そんなんじゃない。独占なんてしたら死ぬだけだ。本当にヤバいんだ。早く逃げてくれ、お願いだ。早く、早く・・・・・・」


 俺の言葉に聞く耳を持たず男子生徒達は一城さんの弁当(危険物質)を心待ちにしている。


「お待たせ~」


 一城さんが戻ってきて弁当の蓋を開ける。


「「「「うぉ~~~~」」」」


 男子生徒達は(見た目は)完璧な弁当を目にして感動の声を上げる。


「はい、篠原君の分」


 一城さんはみんなに配り分けると最後に俺に他の男子達よりも量の多いお皿を渡してくる。


「あ、ああ。ありがとう」


 俺は皿を受け取る。

 

「「「「いただきま~~~す」」」」


 全員が声を揃えて言うと食べ物(毒物)へと手を伸ばす。


 逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ。


 俺は、使〇へと立ち向かうシ〇ジの気持ちが分かった気がした。

 

「遺言書、書いてなかったな・・・・・・」


 俺は誰にも聞こえない声で呟くと唐揚げを口にした。


 瞬間、俺は今まで感じたことのない味を感じた。

 痛みだ。

 一口目、頬を平手で叩かれるような痛みが、二口目、全力で腹パンされたような痛みが、三口目、股間をサッカー部に全力で蹴られるような痛みが・・・・・・

 俺はそこまで味わった後、耐えることが出来ず飲み込んでしまう。


 とても不思議な気分だった。

 噛んでも何も味がせず、ただ、痛みを感じる。そして、噛めば噛む程痛みのレベルが上がって行くのだ・・・・・・

 これを三十回も噛み続けた暁には、俺はきっと死んでいるだろう。


 気合いで耐えた俺は辺りを見回す。


 口にした全ての者が顔を真っ青にしていた。

 唯は心配そうに皆を見つめる。

 

「どうかな?」


「ああ、うまいぞ」


 俺はなんとか言葉を返す。

 

「良かった~」


 彼女は笑顔で呟く。


「一城さん、ちょっと来てもらえないかな~~」

 

 俺以外の全員が具材(爆弾)余韻(爆風)に耐えているが何人かは意識を手放す寸前であった。

 そんな中、他のクラスの女子生徒が声をかけてきてくれた。


「ごめん、ちょっと行ってくるね」


 彼女は立ち上がり走っていく。


 一城さんが去った直後全員がそれぞれの行動を起こした。


 ある者は口を押さえトイレに駆け込み、またある者はその場で虹色の滝を流し、ある者は口から泡を吐き倒れた。


「ほ、保健室の先生を呼んでくるね」


「待て、そんなことをしたら一城さんが気付きかねない。今呼んではダメだ」


 俺は彼女の腕を掴み止めて告げる。


「ああ、俺達は大丈夫だ。なぁ、みんな?」


「「「「ああ」」」」

 

 既に意識を失っているもの達以外が答える。


「だけど、残りはどうするの?」


 唯は残った具材に目を向けながら呟く。


「俺が食べる。一城さんが悲しむ姿は見たくないからな・・・・・・」


 俺は呟きながら具材へと手を伸ばし一気に口に放り込む。


「うっ」


 先程とは比べものにならない(痛み)を感じながらも耐え、口を動かし続ける。

 口を動かすこと五分、俺は全てを完食していた。


「すまない、お前の言うことを聞いていれば・・・・・・」


「お前は俺達の恩人だ、絶対に忘れたりしないぞ」


「唯、後を託した・・・・・・」


 俺は、多くの男子生徒達に声をかけられながら唯に一言残し、意識を手放した。


☆☆☆

 

 

 俺が目を覚ますと体育祭の既に午後の部が始まっていた。

 俺は二時間近く意識を失っていたらしい。

 ちなみに、一城さんには俺を含む倒れた生徒達は熱中症ということで唯が誤魔化してくれた。

 俺だけは重症ということで保健室に連れてこられたらしい。


  

 校庭へと視線を向けると騎馬戦の団体戦が行われていた。


「やっと目を覚ましたんだね。大丈夫かい?」


 佑真が保健室に入ってきた。


「なんとか生きてるよ」


 正直、寝てる最中になんどかデカイ川が見えてたんだが・・・・・・


「それは良かった」


 その後、佑真は現在クラスが置かれている状況を説明してくれた。

 昼休み後行われた種目は全て最下位(ビリ)、総合順位は全クラス中8位となっていた。

 理由はもちろん弁当テロ(食物兵器)によって・・・・・・

 男子全員がまともに動ける状況ではなかった。

 総合優勝を狙うには次の騎馬戦バトルロワイアルで一位を取るしかないということらしい。


「俺も復活したことだし頑張りますか」


 俺は気合いを入れて騎馬戦へと望んだ。



 その結果、序盤で戦死していた。


 自分のクラスのほぼ全ての仲間を犠牲にしたにも関わらず。

 俺の騎馬は他のクラスの男子生徒から集中放火を喰らった。

 そんな俺を守るようにクラスの仲間が戦死していき、俺は敵の騎馬を10騎倒したところで騎馬を潰され戦死した。

 クラスの仲間曰く、一城さんの弁当を食べきった俺に何かお礼をしたかったらしい。

 


 いつの間にか戦いは終盤となり、舞台の真ん中で二つの騎馬が熱い攻防を繰り広げていた。


 一つの騎馬は内のクラスで唯一まともに動くことができ、生き残った佑真の騎馬、そして、もう一つの騎馬は昨年優勝した(らしい)三年生の騎馬だ。


「一年が生き残るとは思ってもいなかったぜ。でもここまでだ。優勝は俺達の物だ。」


「いえ先輩。優勝は僕たちのものです。絶対に譲りません」


 佑真は丁寧な言葉使いながらも力強く先輩に言い返す。


 次の瞬間、佑真の騎馬が動いた。

 佑真は先輩の両手を掴み引くと、バランスを崩した隙に帽子を狙いに行く。

 しかし、先輩はその手を避け、下からアッパーのように帽子へと手を伸ばす。

 今度は佑真があえてバランスを崩し攻撃を避けたその直後、なんとテンプシーロールを使い攻めて行く。

 先輩は左右に素早く動く佑真に防戦一方となる。

 そして、佑真が先輩の帽子に手を伸ばし取った直後、佑真の帽子も他の者に取られていた。


 佑真の帽子を取っていたのは我がクラスのオタク四人衆だった。

 俺達ですら存在を忘れていた彼らは熱い戦いなどせず静かに勝利を勝ち取ったのだ。


「「「「え~~~~~」」」」


 俺達のクラスを含むこの学校の全生徒がそんな感想をこぼし戦いは終わりを告げた。

 


 こうして、俺達は一日目の総合順位は5位となり、なんとか優勝圏内で一日目を終えたのだった。


 さて、日に日に一話当たりが長くなってますがもう少ししたら前の文量に戻るも思います・・・・・・


 さて、体育祭は一日目を終えました。

長引いてしまい結局二日目には入らずですが・・・


楽しんでいただければと思います。

さて、


次回予告

 主人公の隠された異能が遂に目覚める。


 すいません、嘘です。調子乗ってすいません。


次話は明日投稿予定です。

宜しくお願いいたします。

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