体育館裏にて
7月13日、ジャンル別日間ランキングで16位にランクインしました。
多くの方に読んでいただき自分の作品を評価していただきとても嬉しいです。
体育館裏に来た俺を待っていたのは、比較的顔立ちの整っている男子生徒だった。
「なんのようだ?一々手紙なんかで呼び出しやがって・・・・・・」
俺は、今朝下駄箱に入っていた手紙を見せながら男子生徒の様子を観察する。
「担当直入に言う。一城さんと関わるな!!お前のようなやつは彼女にふさわしくない」
予想していた言葉が飛んできたが俺は驚いてしまっていた。
現実でそんなことを言うやつがいるなんて正直思っていなかったのだ。
「関わるなと言われてもな・・・・・・。正直、なんで一城さんが俺に関わってくるのか理由がわかってないんだがな」
告白されたというのは理由になるのかも知れないが、俺は彼女に好かれるようなことはしていない。
話したのだって高校に入ってから事務的な会話を数回。
彼女は高校に入る直前にこの町に引っ越してきたらしいので中学時代に関わってもいない。
「まあいい。どんな手を使ったかは知らんが、俺はお前の中学時代の出来事を知っている。それを広めればお前から彼女は離れていくだろうな」
彼は言いながらニヤリと微笑む。
なんか、悪役が板についてるな・・・・・・
「勝手にしろよ。ただ、一城さんとのことはどうなるかは知らないけどな」
ま、俺が中学の時に少し悪さをしていたのは事実だし、それを聞き一城さんが離れていくならそれでもよいと思った。
彼女の笑顔が見れないのは残念だと思ったけど・・・・・・
「私のいないところで勝手に話を進めないでくれないかな?」
物陰から出てきたのは先に帰った筈の一城さんであった。
「なんでいるの?」
「あんな不自然に帰らされれば分かります」
一城さんはどこか悲しげな表情をしていた。
「私の好きな人のことを悪く言われるのはさすがに許せないんだよね。中学時代のことが何?今の彼には関係ないでしょ?」
いや、完全にキレていらっしゃいます。彼に・・・・・・
はい。
「クソ、この男のどこがいいんだ・・・・・・」
彼は吐き捨てるように叫ぶ。
その感想、俺も思ってるよ・・・・・・
「おい、お前、一城さんを賭けて勝負しろ。俺が勝ったら一城さんに二度と近づくな、もし負けたら二度とお前らに口をださねぇ」
「はぁ?」
彼の言葉にすっとんきょうな声をあげてしまう。
元々、お前にどうこう言われる筋合いないだろ・・・・・・
「勝負内容は体育祭でのクラス対抗のサッカートーナメント」
「一城さんいいよね?」
「はい!!」
「分かったわ、その勝負受けて立つわ」
「おい、何勝手に決めてるの?」
いきなり登場した唯が一城さんに確認してから勝負を受けてしまう。
「お、おう。勝利条件は互いに当たった場合は直接の試合結果、当たる前にどちらかが負けた場合はより多く勝ち進んでいた方の勝ち」
彼も思わぬ人物の登場に驚いたが、気を取り直し内容を話す。
「それで構いません。ただ、一つ訂正を、あなたが負けたら私の前に二度と顔をださないでください」
「わ、分かった、お前らこそ約束を守れよ」
「はぁ?ちょ、待てよ、何勝手に決めてるの?」
俺の言葉など聞かず男子生徒は去っていく。
「あの、本当に良かったんですか?」
俺は一城さんに問う。
「ま、負けても約束を破ればいいだけのことですから」
一城さんはニコリと笑いながら告げる。
「ま、澪なら負けるはずないでしょ、佑真もいるんだし」
唯は、負けるはずがないと断言していらっしゃる。
それ、負けフラグじゃ・・・・・・
「それじゃあ、私達も帰りましょう」
唯と一城さんは帰って行ってしまう。
俺は、彼女達を追いながらあの男子生徒のことを考えていた。
先に行っとくが変な意味ではないぞ。
「どうやって勝つかな~?」
彼は性格はあの通り残念なのだが、サッカーの実力はピカ一で一年にしてサッカー部のエースストライカーなのだ。
それに彼のクラスには次期レギュラー候補の男子生徒が多数いる。
俺は、頭を抱えながら一城さんのことを見ていた。
何故、彼女に好かれているのかは分からないが、彼女が自分のために怒ってくれたこと、中学のことなど関係ないと言ってくれたことは嬉しかった。
内心、中学のことがバレたら距離を置かれるのではないかと思ってしまったから。
「あんなやつには負けたくないな・・・・・・」
俺は小声で呟きながら覚悟を決めた。
負けたら約束を破るとしてもあの男には負けたくないと思ってしまった。
自分のために怒ってくれた彼女の為にも・・・・・・
やっと物語が動き出します。
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また、昨日PV数も投稿以降最多となりました。
読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。




