第四話「アニメって何ですか?」
いらっしゃいませ。お楽しみ頂ければ幸いです。
「さて、それでは要望を纏めてまいりましょうか?どんな事をご希望されますか?」
そう言ってメモとペンの用意をする3号さん。
「とりあえず、どこら辺までの要望が通るんですかね?」
「そうですねぇ。肉体的な能力としては現地人よりは多少の向上は認められますが、あまり常軌を逸した能力は通らないと思います。
他にも見た目的な物も同様ですね。腕が4本とか目が4個あるとかは駄目なんじゃないでしょうか?」
「いやそれもう人間じゃ無いから!?」
はっ!?思わず素でツッコミ入れちゃったよ!?
「まぁそう言う事です。およそ『人』として判別できる範囲内でしたら問題は無いのではないでしょうか?」
あぁ、そうですか。ツッコミ部分はスルーですか。いやその方が有難いけども。
「と言う事はチートな能力とかは無理そうって事ですかねー。」
「チートって何ですか?能力と言う事は何がしかの技能や体質なのかと考察しますけども。」
「あぁ、チートって言うのはですね・・・」
一通りのチートな感じの能力的なアレコレを説明し終えた結果。マリアージュ様に確認を取ると言う事で、3号さんは退室して行った。
そうして暫く待つ事、幾星霜。いや、実際にはそんなに待ってはいない訳だけども。
とにもかくにもマリアージュ様を伴って戻ってくる天使ちゃん3号さん。だけど、なんだかマリアージュ様のテンションがオカシイ。
「真一様!真一様の世界ではその様な能力使いが沢山いらっしゃるのですか!?それでは真一様も何らかの能力をお持ちとかっ!?」
「ああ、いや、勘違いさせて申し訳ないんですけど、先程説明した能力は殆どがアニメの設定だったりするものでして・・・。」
「・・・・・・アニメって何ですか?」
あぁ、そうか。そこからか!と言う訳でアニメの説明を色々とした。あわよくばと思って「現物があれば」なんて事も言ってみた。
「これは・・・レブラン様に言って取り寄せて貰わねばっ!?さっそく相談してみます!」
そう言って来た時同様、風の様に去って行きましたとさ、まる。
さて、マリアージュ様も日本が誇るサブカルチャーに嵌り込むのかな?ちょっと顔がにやけてしまうのは仕方が無い事だ。
あーでも・・・突拍子もない事をやられたらどうしよう?TSとかやられたら目も当てられないよね?
あれ?俺もしかしてやっちゃった!?
結果として、本人が望んでいるならともかく、勝手にそう言った事をするつもりは無いそうだ。一安心である。
◇◇◇
あれから3日経った今日、マリアージュ様から呼び出しがあった。
本当なら一昨日の内に要望を纏めて提出する筈だったんだけど、アニメの件で色々と考察する必要があると言われたから結局、今日まで要望は伝えてなかったんだよね。
で、恐らく今日の内に色々と要望を纏める事になるんじゃなかろうか。現物の方もどうやら向こうから仕入れる事に成功してるみたいだしね。俺も視たいなぁ。
そうしてやってきたマリアージュ様の私室。いや執務室になるのかな?とりあえずノックして入室すると・・・。
壁も床も天井もピンクの6畳一間、その部屋には大層な大きさの壁掛けディスプレイが設置されていて、部屋の4隅にはスピーカーが鎮座していた。
あ、あれウーファーじゃね?随分と趣味全開の部屋になってるな・・・。
そしてディスプレイの前にはソファーとテーブル(もちろんピンク)そしてツインテールのピンク頭。あ、今日はドリルヘアーじゃないんだ。
今見てるのは魔法少女達が運命と言うか外宇宙生命体に翻弄される有名なやつだ。丁度、最終回みたいでもう直ぐ終わる所かな。
テーブルの上に置いてあるポテチ(なぜある?)にも手を付けず、食い入る様に視てる。
暫くして最終話が終了した頃を見計らって声を掛けたらびっくりされた。そこまで夢中になってたのか、こっちがびっくりだわ。
と言うか、そっちが呼び出したんだろうに・・・それにちゃんとノックもしましたよ?
え?返事も無いのに勝手に入るな?それはご尤も。ここは素直に謝罪しときますか。
「それにしても真一様の暮らしていた世界にはこんなにも素晴らしい文化が存在しているんですね。とてもとても。とーっても羨ましいです。」
「そんなに気に入って頂けて、自分も嬉しいですよ。ところで・・・全部で100本以上ある様に見えるんですが・・・これ、全部見たんですか?」
「あ、はい、種類も多いですし数が数なので分体を生成して人海戦術で挑んでます。今も別の私が『ラノベ』なる物を検分中です!」
検分と来ましたかそうですか。随分とド嵌りしてますなぁ・・・やっぱり管理者さんの居る場所って娯楽が少ないんだろうか?
「えぇ、そうですね。娯楽らしい娯楽と言うのは存在しません。地上を覗いて景色を見たり人々の生活模様を見たり・・・
そう言った物が娯楽と言って良いのか分りませんが、一応の楽しみと言うか息抜きですね。」
「わりとヌルっと心を読んできますね・・・それはさて置き、そうですか。それじゃ日本のサブカルチャーは随分と衝撃的だったでしょうね。」
「はい!とても心を揺さぶられる物語でした!本当に良くこれだけの物語が創られているものです。素直に感心致します。
あ、それでですね。以前に真一様がおっしゃっていた『チート』なる物ですが・・・。」
結論から言うとチートと呼ばれる程の能力は残念ながら持ち得ないそうだ。やっぱり一般人を逸脱しすぎるのは許可出来無いらしい。
ただまぁ逸脱って言っても常人の3倍の筋力とかはギリギリで許可出来るそうで、色々と小技を使ってなんとかやりくりして欲しいとの事だった。
「そう言えばまだ聞いてなかったんですけど、地上には自分1人で行くんですか?誰か仲間と言うか供と言うか、そう言う人が居ないのは心細いと言うか
色々と手が足りなくなるって言うか。要するに寂しいです!」
そう言って頭を下げる俺。いやだってなぁ・・・良くわからん世界に俺1人で行くってのも結構辛いよ。実際、ずっと旅を続ける事になるんだろうけど
色々と秘密にしなきゃいけない部分がいっぱいあるから現地人と旅するにしても限度があるしなぁ。
「それもそうですね。現地では今、拠点となる施設の調整で天使ちゃん5号が降りてますけど調整が終わったら戻ってくる予定ですし・・・。」
そう言って暫し考え込むマリアージュ様。凄い眉間に皺が寄ってます。
「分りました!そうですね、3体まで同行者を認めましょう。これも真一様のお体と一緒に創造しますので仕様を纏めて提出して下さい。」
おお!言ってみるもんだ。3人も仲間が認められるなんて有難い事だね。・・・ん?『3体』?どう言う事?
「えっと、マリアー「それはですね、何もヒトガタに拘らずとも良い、と言う意味で『体』と言ったのです。」・・・なるほど。」
そうして俺は2日かけて同行者となる3体の仲間と自分の能力について要望を仕様書に纏めてマリアージュ様に提出した。
後はマリアージュ様が判断して可能不可能を割り振ってくれるだろうさ。
◇◇◇
明けて翌日。あ、説明し忘れてたけど俺が居る間だけ、ちゃんと昼と夜の移り変わりを再現してくれてるんだ。お陰様で食事とかと同様に
ちゃんと寝る事も出来てる。だから寝て起きたら翌日だね。閑話休題。
で、明けて翌日。再度マリアージュ様からの呼び出しに執務室に行って見た。今度はノックした時にちゃんと返事が貰えたから事故は起きなかったよ。
「真一様、お疲れ様でした。先日頂いた要望書ですがほぼ要望通りに出来ると判断しました。駄目だったのはこの『アイテムボックス』だけですね。」
「あぁ、やっぱりそれ駄目でしたか。駄目元で記入しただけなんで問題は無いです。ちなみに理由をお伺いしても?」
「勿論大丈夫ですよ。この世界では今現在、魔法と言うものが廃れています。そんな中で空中から色々と物を出し入れするのは非常に目立ちますし
場合によっては人ではないナニか、と見られる可能性があるので不可とさせて頂きました。後は要望通りで大丈夫ですよ。」
あれ?でも仲間に希望した能力って人を逸脱してると思うんだが・・・それ、通っちゃったの?そう疑問に思っていたら答えが帰って来た。
「ただし、お仲間さんに希望した能力についてですが。一部の能力は使用に許可を必要とさせて頂きます。この許可と言うのは私の許可ですね。」
「あれ?でもどうやって許可を取り付けるんです?マリアージュ様は地上には降りて来ないですよね?」
「はい、ですので『神託』と言う方法を取らせて頂きます。
使用の許可を祈ると言う方法で私に求めて頂いて、それに対して私が神託によって許可、不許可を伝える形になりますね。」
「なるほど。ちなみに許可云々って言う事は、そうそう簡単には許可は下りないんでしょうね?」
「そうなりますね。まぁその時の状況次第なのではっきりとはお返事できませんが。」
これは使い処、いや頼み処?をちゃんと考えないと駄目だな。まぁいいか、却下されなかったって事は状況次第では能力を発揮してもらえるんだろうし。
差し当たって殆どの要望が通ったんならそれほど問題は無いと考えても良いかな?
後は俺自身が油断無く、慎重に事を進めていけば良いだけだろうしね。
「ではこの要望書に従って地上にて新しい体を創造しますね。およそ2~3日で出来上がると思いますのでそれまでは引き続き部屋でお待ち下さい。」
そうして3号ちゃんの異世界談義・・・もといプリメラ世界講座を受けながら、時にはのんびり過ごし、時にはマリアージュ様の私室で一緒にアニメをみつつ。
3日後には俺が旅立つ日がやって来たのであった。なんだか長い様で短い日々だったなぁ。
こうして振り返ってみると此処にも愛着が湧いて来てたんだなーって実感するな。ピンクだらけだけれども。
「それでは真一様。御武運をお祈りしております。大変な役割を押し付けてしまい、申し訳無く思っております・・・。
が、私としてもこれが最善であると判断しております。どうか、この世界の人々を宜しくお願い致します!」
そう言って頭を下げるマリアージュ様。今日の髪型はお団子ヘアーなのね。
「マリアージュ様?頭を上げて下さい。正直、元の世界には殆ど未練はありませんし、何よりこんな俺でも必要としてくれてるのが嬉しいんですよ。
だから、そんな申し訳無さそうに眉根を寄せないで下さい、折角の可愛い顔が台無しですよ?俺は俺で楽しんで来ます。勿論、使命もちゃんと頑張って来ますよ。」
「やはりここに来たのが真一様で良かったです。」
そう言ってマリアージュ様が微笑む。
「それでは道を開きます。行ってらっしゃいませ、真一様!」
「「行ってらっしゃいませ!」」
天使ちゃん部隊の総勢20名からも声援を受け取る。やがて壁に以前見た事のある切れ目が入り・・・それはやはり以前視た黒い穴へと広がって行く。
さぁ、ここからが本当に俺の旅の始まりだ!どんな出来事が俺を待っているのかな?楽しみだ!
俺は希望と勇気と期待を胸に、歩き始めるのであった、まる。
最後までお読み下さいまして有難う御座います。
次話も宜しくお願いします。
※誠に勝手ながら、次回は来週の月曜日に投稿予定とさせて頂きます。