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異世界冒険奇譚 ~勇者の支援致します~  作者: 鉄火巻太郎
第1部「始まりの冒険者」第0章「初まりの始まり」
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第二話「ようこそいらっしゃいました

お待たせ致しました。


 俺は中村真一。しがない日雇い労働の40歳だ。顔も運動も勉強も十人並み、平々凡々を地で行くキャラクターだ。

いや、平々凡々なやつは世界は渡らないか。思わず苦笑が漏れる。

そう、俺は今、異世界へと向かっている。向かっている筈だ。いやこれちゃんと異世界に辿り着くよね?

 と、なんでこんな有体も無い話をしているかって言うとだ。

真っ暗で何も見えないんだよね。全く見えない訳でもないんだけど、でも自分の体の輪郭がぼんやり光ってる位で

周りはどこもかしこも真っ黒なもんだから、実際に壁がちゃんとあるのか、天井もちゃんとあるのか、そして足元の床もちゃんとあるのかどうか分らない。

足に体重を架ける前に、すり足で床がある事を確認しながら歩いてるもんだから遅々として進んでない。

そもそも周りを見渡しても目印になる様な物が無いから、真っ直ぐ歩けているのかすらも疑問だ。

 管理者の部屋からこの暗い空間に入ってから、どれ位時間がたったのかもわからないでいる。

5分位しか経ってない様な感じもするし、もう1時間は歩いてる様にも感じる。今の俺は魂だけの存在らしいから、生きている時とは時間の感じ方も違うのかも知れないね。

そう言えば管理者はこんな事を言っていたな。

「この部屋を出た後は、ただ前に進む事を考えて下さい。真っ直ぐ進もうと思わずとも前に向かってさえいれば、必ず向こう側の世界へ辿り着きますから。御武運をお祈りしてますよ。」

つまり、ただ歩いてるだけで辿り着ける筈な訳だ。ぐるっと回って戻ってたりとかしないのかね?

 と、まぁ時間感覚が可笑しくなってるわ、周りは何も見えないわで、色々と有体も無い事ばかり考えてしまう訳だ。

さっき楽しい事だけ考えようとか言ってたのはどこのどいつだって言う。

思わず苦笑を浮かべるが口元が引きつるのは如何し様も無いよね。


 そうして暫くした頃、ふと気付いた。今迄何も見えなかった筈の暗い空間のずっと先の方に、白い縦線が浮かび上がっていた。

あれが出口なのかな?いや入り口か?まぁどっちでもいいか。漸く目的地に辿り着ける。さて、どんな世界が待っているのかね?


◇◇◇



~~~~???視点~~~~



 今さっきガノス世界の管理者であるレブラン様から、こちらに人を送り出してくれたとの連絡が来た。

なんでも快く救援要請を受け入れてくれたとの事で一安心。だって難癖つけられたりすると後が大変と言うか面倒だもの。

 協力的なのは良い事だ。管理者権限で無理矢理言う事を聞かせる事だって出来ない訳じゃないけど・・・。

それをするとただのお人形さんと同じになっちゃうから応用が利かなくなっちゃうし、何よりずっと監視して無いといけなくなっちゃうから、

元々のお仕事に差し障りがでちゃうしね。だから協力的な人材が見つかったのは本当に僥倖だった。

 別に今すぐ世界がどうこうなる訳じゃないし、最悪の場合は魔王ごとき自分でどうにか出来ない事もないけど、それをするのはちょっと具合が良くない。

環境調整がぐちゃぐちゃになってしまうだろうし、そもそも今回の原因事態がちょっと前に自分で力を使って異物を強制排除しようとしたからだし、

又同じ結果になるのは目に見えてるもの。

折角ここまで何とか調整し直したのに、又最初から調整しなおしとかもう無理。

 まったく、数世代前の文明人は厄介な事をやらかしてくれたものだ。

実は何世代か前の文明人が召還魔法の儀式を行ったんだけれども。その時に呼び出されたのは邪竜種で、私の管理する世界の外から呼び出されたのだけど。

実はこの邪竜種、文明人達の制御が利かなかったのである。馬鹿なの?

そのせいで大陸中に破壊を巻き散らかして、しかも自分の眷属種を生み出し始めて。国と言うか文明と言うか・・・要するに滅んだのである。

で、送還なんてされないから、何時まで経っても居なくならないし、其のうち地形までおかしくなるしでどうにもならなかったので私が滅した。

そんなこんなで実はこの世界と言うかこの星は、1度人類が滅んでいるのだ。本当に馬鹿なの?

あ、でも完全に滅亡してる訳じゃないんだけどね。辺境と言うか騒ぎから遠く離れた土地に居た人達は、数は少ないけど生き延びてたりする。

そう言った騒ぎを免れた人達が頑張って増えて行ってくれたお蔭で、人類種は滅亡していないのだ。

 兎に角。ここからが今回の問題なのだけど。この邪竜種、体内に宝玉を宿していた様で、滅した際にそれが塵となって世界を巡るマナと反応を起こしていたらしい。

事件の時は全くと言って良い程に何も問題を生じなかったのに、今頃になっておかしな現象を生じさせる様になった。

元々この世界には存在しなかった異物が生まれる様になってしまったのだ。

慌てて未来予知を行って幾つかの未来を確認してみた所、どの未来を辿っても世界が完全に滅ぶ結果しか見えなくなってしまった。

この異物を今後『魔獣』と称する事にするが、この魔獣が大量に生まれる様になった後、魔獣の王的な存在が生まれる。

そうして大陸と言わず、この星の全域に魔獣が蔓延る様になって、魔獣以外の生物が駆逐されてしまうのが、大体の未来予知結果になっている。


この案件には流石にちょっと直接は手を出せないから、知り合いの管理者の人達に協力を仰いだ。

その成果と言うかなんと言うかが今日、やっとこちらに来る事になった。イケメンだったら良いな♪


「マリアージュ様、ガノスからの使者の方がご到着なされるようです。」


「あ、はーい、じゃぁお出迎えしましょうか。」



~~~~真一視点~~~~



 結構歩いた気がする。でもそうでもない様な気もする。ほんと変な感覚だな?これ・・・。

まぁいいや、途中いきなり落とし穴に落ちるとか見えない壁にぶつかるとか、そんな愉快な事件が起こる事も無く。

今俺の目の前には真っ白な穴?いやもう出入り口でいいや、出入り口が開いている。後はここを潜るだけなんだけど・・・。

どうしよう?いや、潜るのは決定事項なんだけどさ。それしか選択肢無いし。

どうしようってのは、このまま潜って良いの?って事だ。

ドアノッカー(よく映画とかでみるライオンの飾りにわっかが付いたアレ)も呼び鈴っぽいのも無いし、そもそもドアが無いからノックも出来ないし。

とりあえず声掛けながら入れば良いか?うん、そうしよう。


「ごめんくださー」


「「ようこそいらっしゃいました!」」


うおわっびっくりしたー!何この歓迎ムード、何か横断幕?みたいのまで飾ってあるし。

 地球の管理者の部屋は何も置いてなかったし部屋そのものが6畳位でそんなに広くなかったんだけど・・・。

こっちの部屋は全体的に広く、商業ビルのワンフロア位あるのかな?壁といい床といい天井といい・・・薄ピンクで統一されている。これって管理者の趣味?

天井からはシャンデリアが下がってるし壁にも色々な花が飾られている。奥にはタペストリーみたいのもかかってるな。床は絨毯見たいのは無い。ただの床だ。ピンクだけど(苦笑)

その部屋で両脇に天使様!が十人位づつ並んでて、俺の目の前にはピンク色の髪したドリルヘアー(なんか少女漫画のお嬢様的なアレ)をしたゴスロリ少女が満面の笑みで歓迎してくれてる。

いやほんと何なの?この歓迎ムード(苦笑)


「ガノスよりの使者、中村真一様ですね?」


そう言って目の前のピンクドリルゴスロリ・・・いやもうピンクロリでいいや、それが声を掛けてくる。って言うかガノスって何だ?


「いえ、あの・・・ピンクロリはちょっと・・・私の管理者名はマリアージュと申します。そう呼んで頂けると嬉しいです。」


「あ、考えてる事が分っちゃうんですね・・・あは、あははは」


「そうですね、この空間内では意識が繋がっておりますので。それと、ガノスと言うのは中村真一様がすごしていらっしゃった世界の管理名です。レブラン様からはお聞きになられてませんでした?」


どうやら俺が居た世界の管理名は『ガノス』と言うそうだ。そりゃそうだよな、あの世とかこの世じゃ区別付かないだろうし。あれこれそれって何だよって話だ。


「えーと、はい。ガノス?から来た、中村真一です。普通に真一って呼んで下さい。」


「畏まりました。では改めて。私は管理者名マリアージュ。管理世界名プリメラを管理しております。どうぞよろしくお願い致しますわ、真一様。」


「あ、いや、様はちょっと・・・呼び捨てで良いですよ?どう考えても自分の方が立場は下ですしね。」


 嘘では無い。いやだって管理者とか自己紹介してるけどそれって要は神様って事じゃんね?どう考えたって指先一つで木っ端微塵です。ありがとう御座いました。

って言うか幼女に様付けで呼ばれるとかそんな趣味は無いし、どう考えたってアレである。事案発生。


だと言うのに。


「いえ、私を信仰している人なんていませんよ?信仰されたからと言って何も無いですし。それに、こちらが呼んで来て頂いているのですからそれなりの対応は致しますよ?」


これである。って言うか「木っ端微塵」は否定されなかった・・・。うん、気をつけよう。


「では真一様、こちらへどうぞ。今日は来たばかりですし、まずはごゆっくりと寛いでくださいな。」



と、言う訳で。

 うん、ゆっくりしてる。って言うかどこからかソファが持ってこられてそれに座らされてるんだが・・・。

両脇で天使のおねーさんがでっかい団扇?で仰いでくれてる。でもって後ろにいる天使のおねーさんが肩を揉んでくれたり

両脇にいる天使のおねーさんが足を揉んでくれてたりする・・・いやどこの王侯貴族だよ!?望んでないから!こんな歓迎疲れるだけだから!?

って事でとりあえずマッサージとか団扇とかやめて貰った。主に俺の心の安寧の為に。いやマジで。そんな扱い慣れてねーし。

 なんでもこの天使のおねーさん達、名前とかは無いそうで皆さん「天使ちゃん14号」とか「天使ちゃん16号」とか呼ばれてるらしい。

って人造人間かよ!完全体とか出てくるんじゃないだろうな・・・勘弁してくれよ?いやマジで・・・・・・。

マリアージュ様ってまさか日本のサブカルチャーとか知ってるんじゃ無かろうか。


そんな話はさておき。


 とりあえず今日はこの管理空間の空気?に慣らすのが目的との事であまり動き回るのは良くないらしい。

だからこそ、あの歓待だったのか・・・それでも御免被るけども。

天使ちゃん1号さんのお話によると、今日はこのまま休んで明日から本格的に勉強をするそうだ。

正直メンドイ・・・でもまぁ言語読解とかは直接脳みそに焼き付けてくれるらしい。ただ多言語に渡るから他の知識まで焼き付けるとちょっと良くないらしい。

他にも、記憶はそのままで引き継ぐからあまり沢山焼き付けると脳みそが焼けちゃうらしい。

うん、どうせ頭良くないですしね・・・。


そしてここで残念なお知らせ。

 今の世界に分布している文明では魔法の技術は、ほぼ廃れているらしい。魔法使えねぇのかよー!

と、思っていたら、古い文明時代には魔法技術が発達していたそうで、そう言った技術を遺跡から発掘して世界に広めるのも俺のお仕事なんだそうだ。

遺跡発掘かぁ・・・なんだかロマンがあるよな!いいねぇそう言うの。


 そんな感じで話をしつつ、俺専用の部屋に案内されたんだけど。いや、ここの壁もピンクなのか(笑)

まぁピンクっぽい白だからそこまで気にはならないけど・・・。

え?自分で色とか変えられるの?あ、そう。あ、壁に手を着いて考えれば良いだけ?へー、ほー。

うん。と言う訳で床と壁はベージュに変えた。天井は・・・届かねぇよ(苦笑)


「それでは真一様。私は天使ちゃん3号。何か御用が御座いましたら、遠慮無く私をお呼び下さい。それではお休みなさいませ。」


「あ、はい。ありがとう御座います。お休みなさい。」


 自分の事「ちゃん」付けで名乗るのか・・・大丈夫かここの天使さん達(苦笑)

さて、この8畳一間・・・って広いな。ここがとりあえずの俺の活動拠点か。ベッド以外何も無いんだけどさ。

ま、明日から色々と頑張りますかねー。



◇◇◇



~~~~マリアージュ視点~~~~



 うん、中々チョロ・・・げふんげふん、人の良さそうな方で良かった。顔はまぁ可も無く不可も無くだったけど。まぁ直接やり取りする訳でもないし、

基本的には部下に丸投げになるから気にする事でもないか。

でも本当に人が良さそうって言うか大丈夫かな?変な人に騙されたりしないよね?ちょっと不安だ・・・まぁその辺も部下に気をつける様に指示しておこう。

とりあえず異界間通信でレブラン様に真一様ご到着の連絡を入れておこう。結果がどうなるかはまだ分らないけど、貴重な人材を送って頂いただけでも感謝だ。今度何かお礼をしなければ。

ひとまず今日はゆっくりして貰って明日からはプリメラの概略と基礎知識、それと目的をお話して・・・あ、部下の紹介とかもしておいた方がいいかな?

後は降りる時の肉体も造って置かないとか。どこか適当な遺跡を占拠してそこに用意すれば良いかな?拠点も必要だろうしね。

後は何かあるかなー?あぁ、そうか、肉体に関して要望があるかも知れないからそれも聞いて置かないとか。

差し当たって部下に適当な拠点を作る様に指示しておこうっと。これは天使ちゃん5号が適任かな?5号ちゃ~ん・・・ちょっと良い~?



いつもお読み頂き有難う御座います。


6/4追記 一部、主人公を呼ぶ際の敬称が間違っていたので「さん」から「様」へ修正致しました。

申し訳御座いませんでした。

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