四日目
「ここが図書館。結構な蔵書量でさ、ウチの学校の生徒がいっぱい来るらしいぜ」
そう説明した東シンジ。つぅっと汗を滴らせ、地図と睨めっこしながら説明してくれた。
連は制服のネクタイのノットを弄り、図書館を見上げる。まだ何やらシンジが話していたが、殆ど耳に入ってこなかった。
__俺、何か悪いことしたっけ?
雫下のひん曲がった口に、汚物でも見たかのような目つきの理由を考える。だが、考えても考えても答えは見つからない。
「・・・ってオーイ?連サーン?」
「あ、あぁ悪ィ。聞いてなかった」
素直にそう答えれば、シンジは「やっぱり」と呟いて苦笑した。
「雫下のコト、考えてたろ?」
いきなり核心を突かれ、驚きで目を瞠る。なんで解ったんだ。表情を見たシンジは、手を頭の後ろで組んで答えた。
「さっきの雫下の目付きといい口つき?といい・・・って話だろ?」
コクコクと頷き、「そんで?」と続きを聞く。早く真相を聞きたい。
するとシンジは、声を低くして顔を近づけてきた。口から出た言葉は、真相では無いにしろ、大切な事だったのだ。
「あいつと中学二年間、クラス一緒だったんだ。
そん時もだよ、クラスの中で浮かれてた。人を寄せ付けずさ、むしろ跳ね返すんだ。アイツの事、嫌ってる奴・・・というか皆興味ねえんだよ。いない存在として扱ってた」
言い終わり、顔を遠ざけたシンジの顔を無言で見つめる。
そんなんで、いいのかよ・・・そんなんで、いいのかよ。
ずっとその言葉が頭の中を回っていた。
連は、無意識に下唇を噛む。あまりにも、雫下が不憫だったのだ。
アイツは只たんに、交流が無いだけであって・・・性根はいい奴なのに・・・多分。
雫下に散々嫌がられても、なんとかしてあいつと仲良くなろうと心に決めた連だった。




