6話
爺さんの後に続き、光り輝く時空の亀裂へと足を進める。
ワープとは違う無限の中の刹那、自身の存在を認識し意思を持って一歩踏み出す。
ふわっと、爽やかな風が頬を撫でる、先ほどまでの蒸し暑さが嘘のようだ。
心地よい暖かな日差し、青草の匂い、目の前には広大な草原が広がっていた。
「どこやねん・・・」
ツッコミにもキレはなく、唯一の同行者は上機嫌そうに白鬚を揺らす。
「ほっほっ、無事来れたようじゃな!流石は我が弟子じゃ!!」
「無事じゃねー場合もあるのかよ!てかいつ弟子になったよ!?」
またか!とつい声が大きくなってしまった。
気配察知というより空間把握に近い能力が、急速にこちらに向かってくる何かを察知する。
「おい、爺さん!」
爺さんも当然気付いている、寧ろ俺より早く察知していただろう。
サササ、と草むらを駆けこちらに向かってくる何か。
「ほほっ!念願の獲物じゃのぉ、倒してみせい、我が弟子よ!!」
テンションの高さについていけない・・・、何とかするしかないらしい。
『『ガルルル』』
低い唸り声を漏らし草むらに背を低くして、こちらを見据える2匹の獣。
対するは、サンダルにワゴンセールで買った赤のハーフパンツ、黒のタンクトップと完全に家着な青年。
軽装な俺を倒しやすいと思ったか、若しくは野生動物の本能か、二匹の内の一匹が襲い掛かってきた、もう一匹は爺さんを威嚇するような位置取りをしている。
牙をむき出し釣り上げられた口元、鋭い眼光をこちらに向けるのはオオカミ。
オオカミというと、白や灰色っぽいふさふさなイメージだが、こいつらは黒茶っぽい短毛種だ。
「クイック!」
クイック―自身または指定対象のAgiを上昇させる―により体が軽くなるが、思考速度は変わらないため頭は混乱したままだ。
低すぎる位置から首元を狙った狼の噛みつき、普段なら頭で解っていても反応しきれないが、体を半身で避け空中にいるオオカミの腹に拳を振るう。
振り下ろしの一撃を喰らったオオカミは、受け身をとるこもできず地面に叩きつけられ跳ね飛ばされる。
「おお!?」
予想外の結果に驚き声を漏らす。
爺さんを警戒していたもう一匹も驚いたらしく、一瞬固まるが跳ね飛ばされたもう一匹が動かないのを確認すると、すぐに逃走を開始した。
(オオカミって仲間意識強いんじゃないのか?)
と思ったが、「斥候じゃのぉ、逃がすと仲間をよぶぞい。」あっけらかんと爺さんが宣う。
「スロウ!」
オオカミに手を向け唱える、光の粒子のようなモノがオオカミに吸い込まれていくと、途端に遅くなる。
一気に大地を踏みしめ詰め寄ろうとしたが、サンダルなのを忘れていた。
クソッとサンダルを脱ぎ詰め寄る、今なら100mを10秒きれそうな勢いで草原を駆ける。
逃げ切るのが無理だと悟ったのか、一転し噛みついてきた。
先ほどとは違い、低い位置から足元を狙った一撃、こちらの機動力を削ぐつもりか。
【時空間魔法】は大別すると転移、結界、時間、の3系統あり個人の資質で得手不得手がでてくる。
結界の系統は苦手だった、既存の魔術だと時間が掛かりすぎる。
「アイアス・シールド!」
薄い結界、全方位のものではなく平面的で大きさも1平方メートルほどの菱形、それを何層も重ねて強度を増す。
牙をむき出し突進してきたオオカミは、薄青い電子的な光の壁に阻まれる。
顔から突っ込んだオオカミは、ジジジという音と共に牙は折れ、脳震盪を起こしたのか足取りもふらついてる。
先ほどとは違い、明らかな止めを刺す行為に一瞬躊躇するが、オオカミの顔を蹴り抜く。
襲われたとはいえ二つの命を奪った行為に、喜びや安堵よりも恐怖と罪悪感が沸く。
殺すという行為に慣れていない、覚悟が足りないのだ。
「ほっほっ、儂の知らない術式じゃったのぉ、・・・よくやったの!」
さきほどまで静観していた爺さんも、優しい眼差しで賛辞を言ってきた、多少は気を遣うこともできるのか。
意外そうな顔をしていたのに気付いても、さして気にせずオオカミのほうへと歩いていった。
「グラスウルフじゃのぉ、本来はもっと群れで行動するからこいつらは斥候じゃの。」
そういって倒れたグラスウルフに近づいた爺さんは、首を刎ねて空中に固定した、流れ出る血液も空中で消えていき、訳が分からない。
「お前さんもこれぐらい簡単じゃろうて。」
何が簡単なのか解らないが、血抜きしたグラスウルフの首と胴体を二組渡してくる。
俺の初めての獲物である。
明日は10時間のロング勤務の為、更新できそうにありません。
もう一つの作品は投稿できますので、よろしくお願いしますm(__)m




