11話
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手首の痛みで顔が引きつる、呪文を唱えるため集中したいが、なかなかできない。
「・・・タイム・リバース!」
残念ながら時空間魔法には回復魔法がない、この魔法はある時間の状態まで戻すというもので、魔法が切れればまた状態は戻る。
魔法の効果時間内に蓄積したダメージもきちんと発生し、効果が切れた後はその時点より前に戻すことができない。
(どれくらいもつ?病院・・・万一入院とかなったらやばいよな。)
「ねぇ、大丈夫?」
背を向けた状態でウンウン唸っていたのだが、その間に残りの鬼を倒したようだ。
「はい、これあなたの取り分ね。」
そういって赤黒い小さな石を渡してきた。
「まぁそんなんじゃ大した値段にもならないか。」
そう言いながら、地面に散らばっている石を拾っている。
「さっきは助かったわ、私は瀬川 舞歌、無所属よ。」
特に握手は求められず、どこか悔しそうな顔で言ってきた。
「俺は佐藤賢一、フリーかな?」
解ってないわね、と言いたげな呆れた表情で見つめられる。
「一般人でしょ、佐藤。」
何処か愉快気に「バットで鬼と戦うなんて聞いたことないわよ。」とクスクス笑っている。
最初に受けた印象よりも明るい、何かに焦っていたようだが。
だがそんなことより、痛めた手首をどうするかだ。
「なぁなんか回復アイテムもってない?」
「はぁ?」
あんたバカ?みたいな顔された。
「やっぱどっかケガしてるの?頭以外なら巫女がなおしてくれるかなぁ・・・」
「高いけどね」とニヤつきながら付け加えられた。
(巫女ねぇ・・・前までなら絶対信じなかったが・・・)
辺りに危険が無いと判断したのか、『紅蓮』『甲鬼』を送還し、コートから何かを取り出し撒いている。
「何してるんだ?」
「・・・ホントに一般人ね、これは清結粉といって鬼の発生を遅らせるものね。」
そう言いながら広間全体に撒いていく。
「数日でこんなに広がるなんて、・・・やっぱり何かおかしい。」
ブツブツ呟き、スマホでどこかに連絡している。
(ここ、スマホ使えるんだ・・・)
舞歌はどこかに連絡し終わったのか、こちらへやってきた。
「さて、ちょっと事務所きてもらおうかしら、一般人さん?」
フード越しでも眼光が鋭くなったのが解った。
「わかったよ」と返事をする、最悪の場合ワープを見せることになるかと思いつつ。
・・・
・・
・
先程の場所を後にし、案内されたのは駅の反対側。
大学のある側は、学生マンションや高層マンションなど、それにお店なども沢山あって賑やかなのだが。
「駅のこっち側は初めてくるな」
こちら側に住んでいる友人もおらず、特に用もなかった。
民家が多く、縄を結び護符をはった、魔除けみたいのをしている家が多く見れた。
「こっちよ!」
そういって案内されたのは、ラーメン屋だった。
いや、ラーメン屋が一階にあるマンションだった。
なんか古ぼけた、反社会勢力の根城的な、入りたくないタイプのマンション。
階段を上り2階へと進む、その一番手前の部屋のインターホンを鳴らす。
特にやり取りもなく、ガチャと扉が開く。
「やぁ瀬川君、無事なようでなにより!さっそく話も聞きたいし入って入って!」
「失礼します、支部長」
支部長と呼ばれた男は、黒のズボンにワイシャツ、ちょっと目の隈が気になるが至って普通のサラリーマンだった。
部屋へと入っていくと、そこは異世界・・・なんてことはなく、至って普通。
職員らしき女性が机で書類仕事をこなし、支部長と呼ばれた男はキッチンのほうへいった。
「そこ適当に座っていいよ。」
そう舞歌に促され、それなりに座り心地の良いソファに腰掛けた。
これまでずっと被っていたフードを外し、コートを脱いでいく。
首元ぐらいまでのミディアムヘア、乱れた髪をてぐしで直し耳に懸ける。
ボフっと隣に腰を掛ける、女性特有のいい匂いがし、タイト気味なシャツで胸が強調されドキっとする。
「どこみてんの?」
言動や態度と違い、カワイイ顔をしている、ひょっとして年下か?
「どこみてんのよ!!」
「ぐほっ」
座った体勢からだというのに、見事なボディブローだ。
「やぁ待たせたね!」
そう言いながら、お茶とお菓子を持ってきた支部長。
「そういえば、怪我をしてしまったらしいね、大丈夫かい?」
脇腹を抑えていたら勘違いされたらしい。
「ええさっきまでは・・・」
「ふんっ」
出されたお茶とお菓子を頬張る舞歌に、苦笑する支部長。
「それで、君が佐藤君だね!私は佐々木 次郎、いやぁ小次郎じゃなくてよかったよ、ハハ!!」
なんかダメそうな人だ。
「支部長は忙しくて最近変なのよ。」
「いやぁホント、最近忙しくてね・・・封印が急に壊れたり、次元の狭間が増えたり、異様な魔術の波動が検知されたりとかねぇ・・・」
それまでの飄々とした態度を一変させ、
「何かしらないかな?」
冷たくそう言い放たれる。
「いえ、まったく。」
そう答えれば、また先ほどまでの陽気さを取り戻した。
「そっか!ならよかったよ〜。」
ただその隈の酷い目の奥では、こちらを疑う視線が変わることはなかった。
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