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1話 プロローグ

初投稿作品です、拙作ですが、よろしくお願いします。

 佐藤賢一はモブである。


モブといってもモンスターではなくモブキャラである。



 一冊の古めかしい本、華美な装飾は無いが、人の心を鷲掴み離さない。


魔導書(グリモア)それも写本ではなく原本、それが日本の只の学生の部屋にある。


部屋の主であり、現在の魔導書の所有者でもある佐藤賢一の瞳は、希望と疑心に満ちていた。


「クソっ、本当に!?・・・読めばいいのか?」


部屋には彼一人、答えてくれる者はいない、おずおずと魔導書を手に取り開く。


『ッ・・・!』突如脳裏に無数の情報が雪崩れ込む、声を上げることもできず、意識を手放した。



・・・

・・


 時は少し遡り、彼が週4日働いている深夜コンビニのバイトの帰り道、道路から少し離れた公園に立ち寄った頃。


彼はよくここで廃棄のオニギリを食べている。


朝の6時ということもあるが、この公園はいつも人がいない、賢一のお気に入りだ。


だけど今日は妙な、先客というべきか、行き倒れというべきか。


(あー・・・嫌なもの見ちゃったな・・・、ここは見なかったことにすべ・・)


賢一が臭いものには蓋の精神を発揮しようとするが、どうやらダメらしい。


行き倒れている白髪白鬚の爺、瞳は濁った黄金色、その双瞼は賢一を見つめている、いや賢一というよりオニギリか。


はぁ・・・と、一つ溜息を吐き「大丈夫ですか?」と声をかけた。




 老人が廃棄弁当などを食べつくすまで、賢一は廃棄デザートを食べて一服していた。


(今日は寝ないで大学いかないとだなぁ・・・)


バイトの日は1限目は入れてない、2限目からなら3時間は寝れるのだが、今日はもう6時半を過ぎてる。


弁当だけ与えて行こうとしたのだが、頑なに引き止められてしまった。



 襤褸のマントの下には、あまり見たことのない服装をしてる。


質などは非常に良さそうで、とても腹を空かせて、行き倒れていた人物が着るものではないように思える。


「ふぅぅ・・・食ったのぉ、久々に腹いっぱいじゃ!」


今日の俺の戦利品を食い尽くした爺さんは、満足げな笑みを向けてきた。


(廃棄弁当なんてもう飽き飽きしてたから、いいけどさ。)


コンビニの廃棄弁当を有り難がれるのも、最初のうちだけだろう。


爺さんにタバコを一本さしだしてやった、


「すまんのぉ」と口に咥えたタバコの先に、人差し指と親指で挟むと、パチンとはじく。


「おぉ」火のついたタバコに思わず声をだしてしまった。


手品かなにかだろうか、自分の指でもやってみるが、まぁ何も起きない。



 「世話になったのぉ、何か礼をせんとな!」


タバコを吸い終えた爺さんが、その濁った黄金色の瞳を輝かせ、覗き込んでくる。


「何か欲しいものはあるかの?もしくは悩みとかのぉ」


悩み・・・自分の将来について考えた頃から、いやもっと前か、異性に興味を持ち始めた頃からある。


それは、自分が普通だということだ。


顔普通、身長170cm黒髪黒目、どれだけ筋トレしてもマッチョにもなれない、


得意な科目があるわけでもなく、特殊な趣味もない。


それでも人並みに恋愛をしたこともある、相手は普通の女の子だ、


高望みさえしなければ、結婚だっていつかできるだろう。


まだ大学一年の19歳、将来どうなるかなんて分からないけれど。


「でも、悩んでおるのじゃろう?」


そう・・・、大学入学してすぐ、普通のカテゴリに収まらない子を好きに、いや、心を奪われてしまった。



 理系の大学は女子が少ない、俺の学科は教師系を目指す子もいて、三割ほどはいるのだけど。


そんな中、その子は一際目立っていた、明るすぎないブラウンの髪、


講義中にしか掛けないメガネに、セミロングの髪が少し掛かる、


綺麗な鼻筋に薄いピンク色の唇、ほっそりとした顎、絵画のような黄金比、


そんな姿が見れる斜め横の席が最近のお気に入りだ。


隣の席?イケメン君や自称イケメンの金持ちが、争っているよ。


自分にはその席を争う資格がない、武器がない。


何もかも普通、実家だって普通だ、大学に入れてくれて、月五万の仕送りと、スマホ代を払ってくれてる。


 なんの不満があろうか。


「でも、不満があるんじゃろぅ?」


ドクンと心臓の鳴る音がした、爺の濁った瞳は全てを見透かしているらしい。


「不満なんてない!・・・この世が平等じゃないなんてことぐらい解ってる」


心の底を見透かされたようで、つい大きな声をだしてしまった。


公園にいた鳩も一斉に飛んで行った。



 長い白鬚を揉みながら愉快そうに、爺は語る。


「若いのぉ、違うということが、平等ではないということではないんじゃよ、


決断し、成長し、存在する。それこそが平等というものだのぉ。」


何言ってんだ爺、そんな目をしている俺を気にせず、爺は続ける。


「ほっほっ、まぁ今はわからなくてもいいのぉ、さて、お前さんにする礼はこれがよいじゃろうて!」


そう言ってマントの中に手を突っ込み、一冊の本を取り出した。


 古めかしい本、華美な装飾は無いが、人の心を鷲掴み離さない。


(なんだこれは!?)


その本と爺以外、世界が白黒になっていく、時が止まったかのように全てが静止する。


「ほっほっほっ!いいのぉいいのぉ!魔導書を見て発狂せず、虚数空間にも干渉するか。」


さらりと怖いことを言ったきがするが、これまでにないほど白鬚を揺らし嗤うクソ爺。


「この魔導書の名は、世界ヲ喰ライシ傲慢(マルゴモスメノス)、儂の最高傑作じゃ!」


朗らかに高らかに、魔導書の名を告げ、手渡してくる。


受け取ることを、一瞬躊躇するが、・・・決断する。


そして時は動き出す。




「ほほっ、飯の礼にしてはちと、豪勢かのぉ。」


 満足げに、クイっと指でタバコを催促する。


「爺さん、あんた何者だよ!?」


紫煙をくゆらせ、白鬚をさする、その瞳は妖しく光る。


「ただの行き倒れの爺じゃよ。」


ほっほっほっ、爺の笑い声が、初夏の青空へと消えていった。



・・

・・・


 六畳間の狭い部屋、ベットや机、必要最低限の物に限られた家具のなか、


床で倒れていた部屋の主は、目を覚ました。


「う・・・」


どれほど気を失っていたのか、喉がカラカラだ、初夏とはいえ窓を閉め切って寝ていたので仕方ない。


飲みかけのペットボトルを開け、一気に呷る。


ゴクゴクと喉を鳴らす、その音は新たな人生への産声のように聞こえた。


「クッ、ックク、ハハ、あはははっはっ!!」


ただの学生マンションの一室で、新たな魔導書の主が生まれた。


















読んで頂き有難うございます。

まだ、慣れていないので、何か問題な点があればご連絡ください。

ご感想お待ちしております。

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